カフェでお茶する太中 フラペチーノ編 太宰と中也はショッピングモールで買い物をしていた。疲れてきたので休憩しようと思い、カフェに入る。割と常に混んでいる店内で注文の番を待っている時、太宰が中也に話しかけた。
「ねぇ、これ飲みたいのだけれど」
太宰が店員に渡されたメニュー表を指差す。それは、メロン味のフラペチーノだった。噂では、果肉感が強く、メロンの甘さが引き立っていて美味しいらしい。人気商品であり、売り切れてしまう時もあるようだ。
「手前、これ飲みきれるのか」
中也が心配するのも無理はない。太宰は冷たいものに滅法弱い。すぐにお腹を壊してしまうのだ。カフェで注文する時は、夏場でさえ注文するのは殆どホットドリンクである。
「だって、みんなこれ美味しいって云ってるじゃない。気になるじゃん」
「やめとけ。また腹壊すだろ」
「大丈夫だよ。ここ近くにトイレあるし」「そういう問題じゃねぇ」
「俺がぁ?」
「だったら、飲むの手伝ってよ」
中也に即却下された太宰は不満げにこう云った。
「中也も本当は気になってるでしょ? 私に気を遣って飲まないだけでさ」
中也も実は気になっていたものの、太宰の体質からフラペチーノのような冷たい飲み物は注文を避けるのが常だった。一人で店に行って飲むこともできるが、何となく太宰が頭に浮かんでしまい、結局飲めずにいる。
「分かった、しょうがねぇ。半分、飲んでやるよ」
***
「これが噂の……」
売り切れることもなく無事にフラペチーノを注文した二人は、空いていた席に座った。
「やっぱり美味そうだな」
「先に飲んでいい?」
「いいぜ」
少し太めのストローに吸い付く太宰。
「冷たいけど美味しい……! 何このメロン感」
「おい、俺にも早く飲ませろ!」
中也は太宰からカップを奪ってフラペチーノを一口飲んだ。
「……美味いな」
美味しくてそのまま飲んでいると、太宰が飲みたそうな視線を送ってきた。
「中也、私まだ飲めるんだけど??」
「わかった、わかったから」
もう一口だけ飲んで、中也は太宰にカップを渡した。
「売り切れちゃうのも納得だね、これは」
太宰はゆっくりと液体を吸っていく。
「腹壊さない程度にしとけよ」
中也は別に注文していたホットコーヒーを飲み始めた。
「なぁ、まだ飲んで大丈夫なのか?」
「だってこれ、美味しいんだもん。あ、中也も欲しい? 欲しいよね」
「別にいい。俺はただ、手前が心配なだけで……」
中也は自分が云ったことに気付いて「しまった」という顔をした。
「ふぅん? 私が心配なんだ、中也は。ふふ、それなら残りは飲みなよ」
太宰は飲むのをやめて、中也にカップを渡した。
「なっ、別に全部飲めそうなら飲めよ。折角なんだし」
「君の困った顔を見れたからいいよ。それで十分さ。あ、そのコーヒー頂戴」
「悪趣味野郎が」
悪態をつきながらも中也は大人しくフラペチーノのカップを太宰から受け取り、コーヒーを太宰に渡した。
「ねぇ、また二人で飲もうね」
太宰に微笑みながらこう云われてしまえば、中也に選択肢は残されていなかった。
「あぁ。また飲もうな」
甘いメロンとクリームが喉を流れていく。フラペチーノは甘いなと思いながら、次のフレーバーは何だろうと中也は考えた。