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    chicocco2222

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    ライ〇スの毛布みたいなものがある勇者様。朝チュン。エロくない。無念。カミュ主ですが半分くらいカミュは出てきません。

    タオル 小さい時から僕には生きていく上で譲れないものがあった。母さんが僕の名前を刺繍してくれた以外、何の変哲もない水色のタオル。これがあれば僕の世界は安定した。寝る時には必ず握りしめて寝ていた。エマと遊びに行く時にも持って外に出ていたし、ルキに眉毛を描いて怒られた時もこのタオルさえあれば涙を堪えることが出来た。
     エマにもあった。彼女は犬のぬいぐるみをいつも持ち歩いていた。しかし、ある日彼女は持ち歩かなくなってしまった。あんなにいつも一緒にいたのに。どうしてか尋ねると「汚れたらいやだから」と言われた。確かに外に持ち出して汚して帰るとそのまま洗濯され、寝る時にはまだ乾いていない事もしばしばあった。母さんは代わりのタオルを出してくれたけど、僕の心を安定させてくれるのはあのタオルだけだった。そんな日は少しばかり寝つきが悪くなった。

     エマがぬいぐるみを家に置いてきた次の日、僕もタオルはベットの上に置いて外へ出た。少し大人に近づいたような、今までとは違う僕になった気持ちになった。
     でも寝る時にタオルは欠かせない。母さんとテオじいちゃんにおやすみのキスをしてもらい、ベットに入り、タオルを左の手のひらで握りしめる。朝には手元に無いことの方が多かったけど、寝る時には必要なのだ。
     次の日も外には持っていかず、その次の日もベットに置いたまま、テオじいちゃんと魚を釣りに出かけた。
     それでも度々タオルは洗われ、時には乾いていない時もあった。
     「どうして洗っちゃうの!?」
     と半ば八つ当たりのような質問を母さんにぶつけると
     「イレブン、昨日は美味しいものでも食べた夢でも見たのかい?ヨダレがでてたからね、綺麗にしたのさ」
     と明るくあしらわれた。

     僕のヨダレや汗、テオじいちゃんが亡くなった時にはたくさんの涙も吸って、何度も何度も洗濯されたタオルは家のどのタオルよりもボロボロになった。母さんが掃除をする時に使う雑巾よりも。水色だったはずの色はすっかり褪せていたし、糸が解れている部分もある。名前の刺繍も読みにくくなった。母さんがよく似たタオルを買ってきてもう一度刺繍までしてくれたけど、頑なに僕は代替わりさせることは無かった。
     「エマはもうぬいぐるみと寝てないんだって」
     ある日知った事実。少し置いてけぼりの気持ちになった。僕ばかり子供みたいだ、とボヤくと母さんは
    「イレブンはイレブンのしたいようにしたらいいさ。タオルと寝たって誰にも迷惑はかけないんだから」
     といつもの様に笑っていた。
     僕は毎晩、タオルを握りしめて眠った。
     成人の儀式の当日も、勇者として旅立ってからも。悪魔の子と追われていた日々も、世界を1度壊してしまった時も、大樹が再び空へ登ったあとも、時を渡った今でも。



     ふと目が覚め、横を見る。昨晩俺がつけたであろう痕が残ったイレブンの首筋に一気に目が覚めた。
     2人で寝ているベットからそっと足を下ろし、箪笥から取り出した服を着て、床に散乱する洗濯物を集める。イレブンの口元近くにあった彼のお気に入りのタオルも。
    「んー・・・」
     そのタオルは入眠の際には必要とされても、一度夢の中に入ってしまえば取られたことも気づかない。2人旅の時の時からニズゼルファを討ち果たすまで、俺たちのベットには常に存在した。
     あいにく外からは雨音がした。服は外に干せる日に洗うとして、タオルだけは丁寧に手桶で洗い、イレブンの目がつくところへと干した。
     朝食を作り時間を潰す。毎朝のことだった。同居をしてしばらく、無理をさせてしまった自覚のある日は、イレブンの好物を並べる自分に苦笑をしたものだが、今ではお決まりのパターンと化していた。
     今朝は厚切りのベーコンをいつもより多めに入れたポトフ。鼻のきく元勇者様がそろそろ起きてくるか、という予想は見事に的中した。
    「かみゅ、おはよ・・・」
    「おはよ、イレブン。朝ごはん出来てるぞ」
    「ありがと・・・あ、カミュ!また僕のタオル洗ったの!?外、雨なのに・・・」
     心配そうにタオルに手を伸ばすイレブンを横目に料理を皿へと盛り付ける。
    「昨日、ずっと口に入れてただろ?」
    「あれは、カミュが!えっと、あの・・・」
    「窓もきっちり閉めてるし、少々声出したって大丈夫だって」
    「そうじゃなくて!」
     顔を赤らめ、昨晩の俺の行いを咎めようと奮起するイレブンすら愛おしいのだから我ながら重症だ。
     体を重ねる際、イレブンは声を抑えようとお気に入りのタオルを口に持っていく。そんなものにイレブンの声を吸収されるのが悔しくて、ますますイレブンを攻めたててしまう。結果イレブンはタオルを食むようになり、行為の翌朝はまず洗濯から始まる。

     なんとか食卓に座らせ、ポトフとパン、サラダを並べる。イレブンの口元が少し緩み、きちっと手を合わせ、小さく「いただきます」と言ってパンをちぎる。怒っていても食事の挨拶は忘れない。彼のそういうところがとても好ましい。だが、俺への八つ当たりはまだ終わっていなかった。
    「あまり洗濯したらますますボロボロになっちゃうでしょ」
    「それは声を抑えようとするからだって。それに噛んでばっかいるとそれこそボロボロになるぞ」
    「た、確かに・・・」
     散々イレブンに痕をつけた口で何を言うのか、自嘲しながらポトフを口へ運ぶ。
    「タオル、乾くかな・・・」
    「そんなに寒い時期でもないし、夜には乾いてるよ。洗われるのがそんなに嫌なら噛む専用のタオルでも探しにいくか。ダーハルーネかソルティコならいい品が集まってるだろ」
    「カミュ・・・!君はやっぱり最高の相棒だ!」
     そう言いながら先ほどまでとは一転してニコニコと朝食を食べるイレブンに安堵する。
    ──しかし、こいつ、セックス専用のタオルを用意して、俺が今まで通りことに及ぼうとしてること、気付いてんのか?
    「そうと決まれば早く行こう!どっちがいいかな?ソルティコの方がいいものがあるかな?でもダーハルーネの品数の多さは捨て難い・・・」
     俺の心配を他所に、俺の新たなベットの上のライバルを探すことに思考が向いたイレブンのほっぺについたパンを取りながら、俺は苦笑を漏らすしかなかった。
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