草木の焼けた臭いが鼻を刺す。俺は元々里があった場所に来ていた。理由は一つ、両親の墓参り。それだけだ。両親を失ってから麻里と二人で暮らしてきた、何事もなく暮らせると思っていたが。
「チッ」
思い出すだけで反吐が出そうになる。あの事件、あの男、あの儀式。俺はそれを防ぐために自分の手を血で染めた。そして一つも残さず焼き払った。何もかもを。墓は綺麗に掃除して花を添えてある。ここに来る前に買ってきたものだ。この花には意味があるらしいがそんなことどうでもよかった。ただなんとなく買っただけだしな。手を合わせて目を閉じて黙祷する。少しの間そうしてから目を開く。
「・・・ごめんなさい」
小さく呟く。許して欲しいなんて思っていないけど言わずにはいられなかった。そのまま踵を返して帰ろうとすると後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには見覚えのある顔がいた。というか今一番会いたくないやつだった。
「どうしてここが分かった?」
「絵梨佳に教えてもらったんだよ」
「そうかい」
「この広さ、一人では壊滅できねぇと思うけどな」
「へぇー、そう?」
「じゃあどうしたんだよ?」
俺は指折りしながらどうやって里を壊滅させたのか話した。
「追撃砲、地雷、機関銃、手榴弾、火炎放射器、C4爆薬、重火器、毒ガス・・・
まぁざっとこんなもんかな?」
「お前一人でやったのか?」
「うん。だって邪魔されたら嫌だし」
「ゴリゴリの現代兵器だなおい、それと金の出所は?」
「反社」
「あ~やっぱり。納得だよ」
「一応証拠隠滅してるし」
隠滅というよりは事故死させているだけだけど
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あいつがどうやって里を壊滅させたかを聞いたがまさかここまでとは思ってなかった。 正直言って頭がおかしいとしか言えない。それにしてもこいつはいったい何を考えているんだろう。確かにこいつの両親は死んでしまったかもしれない。でもそれはあいつが殺したわけじゃないはずだ。なのにこいつは自分の故郷を跡形も無く消し去ってしまった。まるでそこにあった何かを恐れているように。
「お前さ」
「ん?何?」
「親のこと嫌いなのか?」
「えっ?」
驚いたような表情をしてこちらを見てくる。そりゃそうだろいきなりそんなことを言われたら誰だって驚くだろうよ。
「別に嫌いじゃないよ、ただ好きって訳でもないし」
するとあいつは何かのカードを取り出してきた。描かれているのは星。ただし逆さに出していた。
「これ知ってるか?」
「いや知らんけど」
「そっか、ならいいや」
そう言うとカードを懐に戻した。なんなんだ今のカードは。
「妹に会いに行く予定はあるのか?」
「・・・ない。もう用がすんだらとっとと帰りな!ちんたらしてるとケツに弾丸ぶちこむぞ!」
「はいはい分かりました」
その後俺は何故か同僚が運転する車に跳ねられ病院に運ばれた。