「お、いたいた、俺の話聞いてくれるか?」
煙草を吸いながら隣に来た中年男は自分に目もくれず話し始めた。
聞いてくれるか?と言っているが実際返事を聞く前に語り始めているのを見ると聞かないという選択肢はないようで男をジッと見つめる。
「俺の恋人兼相棒がそこにいるんだが、あいつはやたらと犬や猫に好かれやがる。あの日も…おっと、あの日って言ってもわからんだろうが、簡単に言えば命懸けの共同作業をしたんだよ。で、あの日もあいつは犬を見たらドッグフードを与え猫を見たら撫でたり声をかけたりと俺が引くぐらいさ。つまり恋人さまは根が優しくてなぁ…そこにマレビトも妖怪も寄っちまう程で俺ぁ心配でたまんねぇ。今もマレビトに怯えて逃げてた犬やら猫がマレビトを祓ったお陰なのか戻って来て恋人さまを奪いやがる。正直面白くねぇな。あいつの良さと言えば聞こえはいいが、俺だって…あ、いや、なんでもねぇ。……話を戻すが、俺は犬や猫に好かれねぇ質でな、こっちには来やがらねぇ。俺にとっちゃ良いことだがな。おい、今苦手なんだろとか思っただろ?苦手じゃねぇよ、あいつらが俺を苦手なんだ。そんなに好きなら自分家で飼えばいいだろって言ってみたがたまに触るから良いんだとよ。本当に人並みの好きなのか?まぁ、そこはいい。別に議論するつもりもねぇしな。っと、俺は餌なんて持ってねぇよあっちいけ」
話の途中に犬が中年男の側に歩いて来たのを男は数歩後退り青年の方へ指を差した。
犬は大人しくその指示に従い青年の方へ向かう。
男は煙草を携帯灰皿に入れると新しい物を咥え火をつけた。
「ふー…あんなに優しい野郎なんてどこ探してもあいつしかいねぇよな、そう思わねぇか?…てかよ、犬の数多すぎねぇか?さっきはこんなにいなかったよな…?…あ、おい!犬っころ!舐めてんじゃねぇ!!暁人も許してんじゃねぇよ!満足しただろ!もう帰んぞ!」
「わっ!KK?!」
話に夢中になってたのか犬が増えているのに気付いたのは青年、暁人がドックフードを切らして謝ってる所を見たからだろう。
暁人は謝りながら犬を撫でてると犬は暁人の頬を舐めそれをくすぐったそうにしながら自由にさせていた。
男、KKが暁人と犬に怒りをあらわにすると荒々しく足音を立てながら暁人に近づきその腕を掴み犬達から遠ざかろうとするのをふと何かを思い出したかのように振り向き
「おっと、忘れてた。これが最後の仕事だ。」
そう言うとさっきまで話していた相手に対して印を結ぶ。
KKが話していた相手は恋バナが好きなマレビトだったのだ。
マレビトは消え去る間際「お幸せに…」と幸せそうに笑いながら祓われた。
そして満足したかのようにKKは暁人を引っ張りながら街中に消えるのを犬達は見守っていた。
補足
恋バナ好きなマレビトはK暁好きな私達の心をマレビト化させてみました。
全然闘うとかもしないで恋バナさえ聞けば満足するタイプです。
壁になって推しを見守りたいってノリのあれです