Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    いろは🍼

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍼 🍫 🍵 💎
    POIPOI 87

    いろは🍼

    ☆quiet follow

    リハビリも兼ねて気になっていた小説β版のテスト投稿です。後々百合になるはずですがただの説明回なので何も起こりません。誤字脱字はご愛嬌。

    ##一次創作
    #デリにゃん
    delicatessen
    #百合
    Lesbian
    #SS
    #Re_incarnation

    にゃんにゃんデリバリーのお仕事。【デリにゃん】 彼女は仕事が大好きだった。昔から夢見て必死の努力の甲斐あって掴み取った、幸福であり、生活。仕事のためならばなんだって切り捨ててきた。娯楽も、恋愛も、友情さえ彼女にとっては枷としか捉えることができなかった。
     そんな彼女は仕事においては斯くも右に出る者はおらず、同期に留まらず先に入社していた社員さえ追い越して異例の速度で昇進していった。もちろん女性であることや無愛想な性格であることも加えて顰蹙を買うこともしばしばだったが、彼女はまったく意にも介さないため問題になることはなかった。
     クライアントへ送信する資料を再確認して、彼女は送信ボタンを押して眉間を押さえる。作業をしている時は楽しく夢中で疲れを認識しないが、それが終わると途端に疲労感が襲ってきたからだ。無理もなかった、時刻はそろそろ今日が終わろうとしていて、室内では彼女と、彼女の相棒であるパソコンしか熱を発していなかった。
     『彼女はこのオフィスに住んでいるのではないか』と揶揄い半分の噂が流されるほど、ほとんどの時間をここで過ごし、本当の住まいはただ睡眠を取るだけのための場所と化していたのであながち間違いではなかった。
     そろそろ寝床へ帰るための最終電車の時刻だ。相棒を先に眠らせて一日の疲れを労るようにやわらかな布で磨く。それから机の上に散らばった書類をまとめてゆっくりと椅子から立ち上がる。座りっぱなしで強張った筋肉を痛めないように伸ばして緊張を解き、鞄を手にして施錠をしっかりと施して『住まい』を後にした。

     この時間帯の歓楽街はアルコールの匂いときつい香水の匂いで侵されている。生きているのか死んでいるのか不明な酔っ払いが路上に転がっていたりと混沌としていたが日常茶飯事で彼女は眼もくれずに駅へ向かってするすると人混みの間を縫うように歩いていた。
    「……さん!」
     喧騒に紛れてこの場に似つかわしくない幼さを感じる、砂糖菓子のような甘えた声が口ではなく耳に入ってきた。普段の彼女は『アンドロイドではないのか』という噂も存在するほど他者に無関心であった。たとえ子どもがこの汚い欲望に満ちた街でどうなろうとそんなことはどうでもいい。
     そう、思うのに。なぜか疲れた脳が糖分を求めるように足を止めて、思わず振り返っていた。半分想像通り、半分予想外の人物がそこには立っていた。
    「こんばんは、お姉さん。なんだかずいぶんお疲れのように見えたので思わず声かけちゃいました」
     予想通りの小作りでこぼれ落ちそうなほどに大きな瞳に餅のようにまろい頬。小さな唇はほんのりと、しかし新雪のように白い肌に生気を与えている。全体的に整っているものの幼さを感じさせるる顔立ち。しかし相反するように成熟しきったたわわな肉体を惜しげもなく、食べてくれと云わんばかりの出立ちだった。さらに獣人とのハーフらしい。総合的にはほぼ予想外と云えるのかもしれないとぼんやりと考える。
    「あ、私はにゃんにゃんデリバリーのみるくといいます」
     大きな瞳を限界まで見開いて、みるくと名乗った少女は布地の面積が少ないどこに隠していたのか一枚の紙切れを取り出した。普通の名刺と違って派手なデザインはお堅い職に就いているのではないとわかりやすく、ユーザビリティに配慮されていると評価できる。
    「…………」
     内容に眼を通すとおおよそ見知らぬ、縁遠く感じる世界を彼女に想像させた。今時同性愛んsんて珍しいものではないと、色恋沙汰に疎い彼女でさえ知っている。彼女が生まれた頃には既に同性同士でも子を成せる技術も存在している。今は人間と異種族間での子どもをどちら寄りにするのか決めることを可能にする研究が進められていると、どこかの飲食店のテレビで報道されていたのを何となく覚えている。
    「あ、ちなみにこんな格好だけど、家事の方が得意なので安心してくださいね」
     さらに少女は聞いてもいないのに話を続ける。チョーカーを身につけている場合は性的なサービスも対応可能。右脚にガーターリングがある場合はタチ、左脚はネコとのことだった。つまり眼前の少女は猫でありネコである。指摘された通り疲れているのかもしれない。思わず笑いが込み上げてくる。そんな彼女をみるくは不思議そうに見上げていた。
    「……今声かけてきたってことは、今から来てもらえたりするの」
    「はい! 私なら空いてますし、好みを教えてもらえたらお店に聞いて空いてたら呼ぶこともできます」
    「あなたでいい」
     普段ならこんなキャッチなんて断るが、特有のぎらついた雰囲気を感じさせず本当にただ心配して声をかけてきた様子のみるくに特別嫌な印象は懐かなかった。
    「ところで……あなた、首輪してるってことは未成年じゃないのよね?」
    「えっ、そ、そうですけど……、お姉さんはそれよりも、ゆっくり休んだ方が……」
     ごにょごにょと云いづらそうに口籠もりながら、やはりいつも問われるのか。またどこからともなく顔写真と生年月日以外を隠した身分証を差し出しておどおどしていた。ずいぶんと成熟した身体つきをしている割にはどうやら初心らしい。
    「冗談よ。そんな気ないから」
     性的な嗜好を抱くほど彼女は蜜事に興味はなかったが、みるくは顔つきと身体がアンバランスすぎる。それがいいという層も一定数いそうだが、彼女はそもそも人間にも獣人にも然して興味がない。ただ今はだけは何となく、『糖分』が欲しかったのだ。
    「タクシー呼んだ方がいい? まだ電車はあるけど」
    「お気遣いありがとうございますです。一緒に向かうと本当はデートコースになっちゃうので秘密にしてくださいね」
     悪戯っぽく笑うみるくはさらっと自分が損をする提案をしてきたがまったく気にしている様子はない。生活に困って、というよりは純粋にこの仕事を楽しんでいるように思える。それだけは唯一彼女と似通った要素であった。
    「お姉さん、でもいいんですけど……よかったら何かお名前考えてもらえませんか?」
    「……思いつかないから藍香でいい」
    「あいかさん、じゃあ早くお休みできるように急ぎましょう」
     やたらと大きな鞄が足元に置いてあると思ったが、中からとやわらかそうな肌と獣人であることを隠せるフードつきのパーカーワンピースをすっぽりと着込んで、駅へ向かって歩き出した。昔ほど差別や偏見は少なくなったと聞くが、それでも完全に分け隔てなく、と云えるほど平和ではない。様々な思想や主張が存在する限り人間同士、獣人同士ですら争うのだからどうしようもないことなのだろう。完全に他者に関心のない彼女、藍香にとっては至極どうでもいい問題だった。
     それでもやはりたわわに育ったまろい膨らみは歩くたびにやわらかく弾み、藍香の視線は嫌でも吸い寄せられてしまうのだった。

     これが少女、みるくとの出会いだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🐈💗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    いろは🍼

    DONEリンカネの主軸カプの二人のお話。
    聖夜に祝福を。 Re:plicareのゲリラライヴの発表は12月25日、クリスマスイブからクリスマスへと移り変わった瞬間、唐突に発表された。会場情報は告知映像内で法則性もなく記される文字列や記号。それらの暗号を解読できた者のみが会場を特定できて訪れることが可能となっており、参加費用は発生しないフリーライヴである。前々からもっと近距離でファンと共に過ごしてみたい、と。ぽつりとこぼしたイヴの願いを歌姫に対しては底なしに甘いアダムが叶えたという形である。とは云えども暗号の難易度は会場の収容定員を越えないために敢えて高難易度に設定されており、謎を解いて加えて現地まで赴こうと行動する人物は如何程であろうか。否、そんな心配は不要である。いつもより遥かに小さな会場、教会にて開催されるゲリラライヴとなれば謎を解いた者は好奇心を擽られて必ずやってくると確信があった。アダムは元々吸血鬼であると素性が明かされているものの、イヴは正体所か名前と姿のみの情報以外はすべて非公開ではあるけれど、その実は淫魔である。魔の者たちが聖夜に教会にて神の子の聖誕を祝福するということも一興であろう。仮想配信は勿論のこと、映像としても残されない夢幻のような一夜の限定ライヴ故にできる試みとして、兼ねてよりアダムの指導を受けてピアノの鍛錬を重ねていたイヴによる弾き語りという貴重な要素も含まれていた。
    4141

    related works