貴方を独り占め 巴日和 今日は私の彼氏である巴日和くんの誕生日だ。いつも私の誕生日には喜ぶことをしてくれる。サプライズをしたくて、一日開けてもらえることになった。
もちろん誕生日当日でも、アイドルのお仕事は入っているし私とだけ過ごすことは難しい。そうやって私が遠慮をしていたことを勘づいた彼は「一緒に過ごそうね?」と優しい顔で言ってくれた。
二人だけの誕生日パーティーは終わり、二人でソファに座ってテレビを見ていた。
「独り占めしちゃって申し訳ないなぁ。ごめんねみんなと過ごしたかっただろうに」
「……何か勘違いしてるね? ぼくはきみと過ごす時間が大切だし、きみはぼくにとっては必要で、彼女はきみ。だから、来年も、再来年もきみに祝ってほしいね」
「日和くん……」
「もう、泣かないでほしいね! どうしてきみはすぐそうやってぼくに気をつかうの? もっと甘えてほしいし、頼ってほしいね」
そう言って私の頬を優しく撫で、額に優しくキスを落とした。
「日和くん」
「ん?」
「大好き」
「ふふっ、当然だね。きみがぼくのことを大好きだなんてずっと前から知っていたね」
「日和くんは自信ありすぎだよ」
自慢げに言う彼に思わず吹き出すと、少し真剣な目をしてこちらをじっと見つめた。
「違うの?」
優しく目を細めるのはずるい。そんな顔されたら、素直に従うしかないじゃないか。
「……ないよ」
「聞こえないね?」
顔を近づけて私の顔を覗き込む。
「ち、違わないよ」
勘弁してほしい。ただでさえ綺麗な顔の彼を近くにすることに慣れていないのに。
「相変わらずきみは恥ずかしがり屋さんだね? もっとぼくのことを見てほしいのに」
シュンと見えないはずの犬耳が垂れるように落ち込む様子が可愛くて、申し訳ない気持ちになる。
「だって。日和くんの顔、近くで見るとドキドキが収まらなくなるから」
「ぼくに魅力がありすぎるせいだね? ごめんね?」
悪いと思ってもいないのに謝って。いつも取り乱すのは私だけ。
「でも、ぼくもきみといていつも通りなわけないね」
「え」
「ほら」
私の手を取って胸へと当てる。彼の大きい心音を感じて思わず顔を見上げると、愛おしそうな目で私を見ていた。
「日和くんもドキドキするんだね?」
「もちろん。きみのことが好きだからね」
真剣な表情でそう告げられて、くすぐったいような、恥ずかしいような感覚に陥る。誤魔化すように彼の肩に頭を寄せた。
「日和くん」
「ん?」
「お誕生日、おめでとう」
「うん。ありがとう」
「日和くんに出会えて良かった」
「これからもずっと、ぼくだけを見ていてね」
「もちろんだよ」