私に似合うかな 瀬名泉「ちょっと待って。それ」
突然話しかけてくる彼にハテナを浮かべるが、私が手に持つものを指差すのを見てすぐに理解する。
「あぁ、これ! コラボのアイライナーだよ」
「そうじゃなくて、その色」
「え? あぁ、この色使いやすくて良いんだよね」
「それくまくんのカラーだよねぇ?」
「そうだね」
「ちょっとぉ〜! 『そうだね』じゃないでしょぉ! 普通彼女なら俺のカラー選ぶでしょ」
「だって、私にはハードル高いよ。泉の色」
「まあいいけどねぇ。……あんたに絶対似合うと思って、使って欲しかったからこのカラー選んだのにさぁ」
そう小さく溢した言葉をしっかりと私の耳は拾い、歯痒い気持ちになる。
「え、そうなの?」
「……そうだよ」
「本当?」
「そうだって言ってるでしょ。……何ニヤニヤしてるわけぇ?」
「そんなこと思ってたなんて、言ってなかったから」
そう言って見つめると、彼は顔を赤らめながら目を逸らす。
「い、いやならべつに良いんだけどねぇ!」
「いや、それなら買おうかな。私に使って欲しいんでしょう?」
「……うん」
「じゃあ買う! 泉が似合うって思ったなら間違いないよね」
「ふふ、当たり前でしょ〜? 俺があんたのこと、もっと可愛いお姫様にしてあげるからねぇ」