もうすぐクリスマス 乱凪砂 お仕事の帰り、私たちは街へと買い物に行くことになった。まだクリスマスまで日にちがあるけど、街はすっかりクリスマス気分だ。街の中心には大きなクリスマスツリーがあってライトアップされている。
大きなクリスマスツリーがお店の中から見え、すっかりと浮かれてしまった私はお店を出るとすぐにツリーに向かう。外はもうすっかり冷え込んでいて、思っていたよりも寒い。立ち止まってツリーを見上げていると、手が冷たかったのか無意識に手をさすっていた。
「……手、繋ごうか」
「え?」
「繋ぎたい」
「……外だからダメだよ」
「少しだけ」
そうお願いされたら断れないってことを彼は知っている。少しだけだよと言うと彼の手が伸びてきた。彼の手は温かくて、私の体温も上がることがわかった。
「突然どうしたの? いつもは繋ごうって言わないのに」
「……ただ、繋ぎたかっただけ」
「そっか」
彼も少し浮ついているのかな。そんな呑気なことを考えながら再びツリーを見上げる。今年初めてこんなに素敵なツリーを一緒に見るのが彼だということに感動する。彼は今どんな気持ちなんだろうと気になり横目で盗み見る。
すると彼がすぐに私の視線に気づいて首を傾げる。優しく微笑む彼を見るとなんだかくすぐったい気持ちになり、「何でもないよ」と笑い返す。
隣には彼がいて、目の前にはキラキラと輝く街並み。こんな幸せな日常が長く続けばいいな。そう思っていると自然に笑みが溢れてしまう。
「もうすぐクリスマスだね」
「……うん」
クリスマス一色の街並みを誰もがソワソワしながら歩いている。ツリーの近くに来る人たちは各々写真を撮ってはしゃいでいて、その嬉々とした声が街中を彩っていた。私たちだけが静かにツリーを見上げているみたいだった。
「凪砂くん」
「……どうしたの?」
「綺麗だね」
それだけ言葉を紡いで、彼の温かくて大きな手を強く握り返した。