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    kmmr_ota

    @kmmr_ota

    いま好きなものを書きます / ジャンル不定の雑食

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    タルタリヤと凡人のスケッチ

    ##原神

    無題 これは凡人の話だ。だからこの挿話の主人公に名前はいらない。ただ彼の社会上の立場から、新兵とだけ表す。
     天災だった。
     きゅおおん。きゅおおおおおおん。
     空降る鯨が鳴いている。
     その声に新兵は目を覚ました。視界はぼやけ、片目は開かない。額が割れているようだ、流れ出る血のせいなら良いのだが。全身を打ち付けた新兵は、なんとか体を起こそうとして、手元にぐにゃりとやわらかい感触を覚えた。彼が手を緩慢に引くと、下敷きにしていたのは同じく新兵の制服を着た男だった。戦いの邪魔にならないようにと、隅に引きずられていた負傷兵たちに、彼は突っ込んでしまったらしい。声をかけようにも相手の意識は飛んでいたし、生きているかも判然としない。それを確かめる気力もない。彼自身も満身創痍であった。
     新兵は、血と油にまみれた焦土から、空を見上げる。
     彼らは地獄と化した地上など知らぬように、かろやかに戦っていた。刃のきらめきと、神の目のかがやきが彼の目に刺さる。思わず手をかざした。
     我々は、我々の死体を積み上げた頂点から手を伸ばしてあえいでいる。彼らは星だ。地上からいくらを積み上げても、天にかかる星に手は届かない。
     だから、快哉の声を上げる鯨を目にして、男は願う。どうか我らの慎ましやかな暮らしを破壊しないでくれ、どうかこちらに来ないでくれ。どうか星よ、俺たちに降り注がないでくれ。
     しかし彼は知っている。たとえ空の鯨がすべてを破壊しても、それでも天に星は輝いている。その輝きを、またいつまでも、ただ見上げる自分がいるのだろう、と。
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    kmmr_ota

    PROGRESSGWT / K暁 / エンディング後の話(書ききれるといいな)
    チープ・スリル(仮題)- 8 さまざまなマレビトと切った張ったの戦いを繰り広げてきた暁人でも、その門前に立ったときにはさすがに尻込みした。両手をいっぱいに広げても三人ぐらいは並べそうだ。高くもモダンなつくりの塀と木々で、屋敷の全容は外から把握できない。
    「どこまで続いてるんだろう」
     からだを乗り出して塀のさきを覗こうとした暁人の右手が、パントマイムみたいにぐい、と引っ張られた。KKの声がぼそりと呟いた。
    「やめとけ、知らんほうがいいこともある」
    「……それもそうだね」
     ひっぱられるままに任せて、暁人はもういちど身体を門の前に据えなおした。駅からここまでの道のりに立ち並ぶ家のなかでも、飛び抜けて立派な豪邸が本日の目的地である。
     あたりまえではあるが、東京に住まう妖怪たちについて、世間は認知していない。最後の関係者である娘にアポを取るにしても、どのように話を持っていくべきかと暁人は悩んだ。が、ええいままよ、と電話を掛けてみれば、あっけないくらいに電話のアポイントは快諾された。暁人が身分を名乗り、事情説明が隣家の主人と座敷わらしにまでおよんだ途端、あっけらかんと言われたのだ。
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