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    kmmr_ota

    @kmmr_ota

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    GWT / K暁 / エンディング後の話(書ききれるといいな)

    ##GWT

    チープ・スリル(仮題)- 7 大学の講義を終え、アジトの扉を開いた暁人は、リビングのど真ん中にふよふよと浮く形代に遭遇した。
     暁人はドアノブを握りしめたまま硬直する。シンプルな人型のせいではっきりしないが、こちらを認識して振り向いているようにも見えた。部屋に緊張が走ったところで、まあ、と暁人は思い直して肩の力を抜いた。この東京は暁人が思っているよりもだいぶ愉快なところだったし、そんなこともあるだろう。いったん目の前の不可思議を放置して、暁人は和室を覗き込んだ。
     が、すっかり定位置となったディスプレイの前にエドは見つからず、台所を見ても影も形もない。すれ違いでもしたかなと倉庫の前で首をひねった暁人の背後から、聞き慣れたKKの声が聞こえた。
    「エドならさっき出ていったぞ」
     暁人は振り返り、リビングに変わらず浮いている形代を、そして形代からKKの声がしている事実を確認した。
    「……どうしたの? それ」
    「アイツに聞いてくれ」
     形代もといKKは、みょうに人間くさく肩(だと思う、多分)を丸めた。この見た目だけならもっとかわいらしい声が飛び出してきてもおかしくないなと思いながら、暁人はKKに尋ねた。
    「この間の座敷わらしの件の進展があったって聞いてたんだけど」
    「エドはもう来週分まで人間と喋ったから、今日はもう店じまいだとよ。資料と次の指示はそこのファイルだ」
    「……ありがとう」
     KKが振り返って指差す先には、たしかにファイルがあった。本で構成されたタワーの頂上に据えられたプロジェクターの影になっていて、ひとりではすぐに気づけなかっただろう。KK、お助けキャラみたいだね。暁人はとびだしかけた言葉をぐっと飲み込んで手をのばした。
     パラパラとめくってみると、それは想像通り座敷わらしの事件に関する調査レポートだった。大半は暁人がまとめたものがそのまま採用されていたが、いくつか見慣れない情報もある。KKから聞き取って追加されたのであろう証言と、暁人にはまだピンと来ないなにかの測定記録の数字や表、グラフ。そして、最後のページで暁人は手を止めた。あの家に関係する血縁者のリストだ。
     血縁者をたどってみれば、あの家に住んでからというもの、みんな見事なまでの大往生。ひとりだけ生きている娘の現在の住所は誰もが知る高級住宅街だ。ずいぶんと働き者の座敷わらしだなと暁人は思ったが、それほど幸福に包まれていたのだろう、とも思う。ながく永く時代を越えた黄金の日々が続き、座敷わらしひとりが取り残されていた。
     幸福の歴史をひとつひとつ指でなぞって、やすっぽい紙のざらついた感覚のすきまに、暁人は座敷わらしの過ごした日々を垣間見る。とおい夢想に泳がせた頭は、するすると勝手に記憶の糸をたどっていった。小学校の帰り、麻里と手を繋いで家のドアをあけたときにどこからか飛んでくるおかえりという声。麻里とふたりで訪れた縁日のぼんやりとした提灯のあかり、友人たちと話したくだらない日々の会話であげる笑い声、KKに冷やかされながら食べたいちご大福のじゅわりとした果汁のあまさ。
     刹那にきらめくまぼろしをアルバムの中に挟み込むように、暁人はパタン、と音を立ててファイルを閉じた。となりでファイルをのぞきこむKKにたずねる。
    「話を聞くとしたら、この娘さんのところかな」
    「そうだな、電話でアポ取るか」
    「……ねえ、KK」
     そのままの姿で行くの? 耐えきれず聞こうとすると、KKはきっぱりとした声で暁人の疑問をさえぎった。 
    「調査に行くんならオレは元に戻るぞ」
     まあ、そう言うだろうなと思ったが、暁人のいたずらごころが湧いて出た。ひらひらと浮く形代をぴん、と弾くようにつっついて聞いてみる。
    「このままでもいいんじゃない? またあのハサミは怖いし」
     暁人のかるい声を聞いたKKは、低い声で忠告した。
    「オレの事をマスコット扱いするなら、オマエは何になるのか分かってるんだろうな?」
     数瞬おくれて、暁人は神妙に頷く。
    「やっぱり僕ら、一緒のほうが落ち着くよな」
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    kmmr_ota

    PROGRESSGWT / K暁 / エンディング後の話(書ききれるといいな)
    チープ・スリル(仮題)- 8 さまざまなマレビトと切った張ったの戦いを繰り広げてきた暁人でも、その門前に立ったときにはさすがに尻込みした。両手をいっぱいに広げても三人ぐらいは並べそうだ。高くもモダンなつくりの塀と木々で、屋敷の全容は外から把握できない。
    「どこまで続いてるんだろう」
     からだを乗り出して塀のさきを覗こうとした暁人の右手が、パントマイムみたいにぐい、と引っ張られた。KKの声がぼそりと呟いた。
    「やめとけ、知らんほうがいいこともある」
    「……それもそうだね」
     ひっぱられるままに任せて、暁人はもういちど身体を門の前に据えなおした。駅からここまでの道のりに立ち並ぶ家のなかでも、飛び抜けて立派な豪邸が本日の目的地である。
     あたりまえではあるが、東京に住まう妖怪たちについて、世間は認知していない。最後の関係者である娘にアポを取るにしても、どのように話を持っていくべきかと暁人は悩んだ。が、ええいままよ、と電話を掛けてみれば、あっけないくらいに電話のアポイントは快諾された。暁人が身分を名乗り、事情説明が隣家の主人と座敷わらしにまでおよんだ途端、あっけらかんと言われたのだ。
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