熱帯夜 暑さで微睡みに引き上げられた。
寝ぼけ眼をどうにか開きつつ、枕元に置いていたスマホで確認した時間は正午。
まだまだ起きるべき刻ではない、けれど、このままでは──そう、離れて眠りに入ったはずの恋人が、いつの間にやらまるで幼児にとってのお気に入りの縫いぐるみの如く自分を強く強く抱いて寝息を立てているこの状況では──素直に今一度眠るわけにはいかない。
半覚醒の意識、手探りで触れたリモコンはエアコンのもの。
躊躇いなく限界まで設定温度を下げた。
連続する電子音と、それに連なって大きくなった本体の風音に、安堵して、半分ほど開いていた瞼を、もう一度伏せよう、と、したところで──
「すぐ、離れる、から」
聞こえたのは、途切れ途切れの、覚束なく、それでいて甘ったるい、愛おしい、こえ。
聞いて、思わず小さく笑ってから恋人の身を抱き返した。
涼風と、それから、それに反する温かさに持っていかれそうになる、心地よい微睡に片足を突っ込みながら。
「いやだ、よ」
離れるなんて、そんな悲しい言葉を口にしないで。
「離すもんかよ」
朧げな意識。ちゃんと、言えていたかな、分からない、けれど──
続きの眠りに落ちるほんの直前、身体に回されていた腕に、ぎゅうっと力が込められたのは、しっかりと覚えている。