これから先も「また皆様に逢えて良かったですね」
「ああ」
そう言って私とテランスは一緒に一つのベッドで眠ろうとする。今日は本当に良い一日だった……。
◆◇◆◇
オリジンでの闘いが終わった後、テランスと共に旅に出てしばらく。私たちはまたあの思い出深い場所……イフリートたちがいる『隠れ家』を訪れようと決めたのだ。なぜならオリジンでの闘いから一年が経ったのだ。私は旅をしながらふとそのことを思い出し、『隠れ家』にいる皆にまた逢いたくなったのだ。あの場所にはたくさんの思い出がある。短い間だったがあそこにいる者たちと親しくなることが出来た。恩師にも再び逢うことが出来た。アルテマとの闘いが終わった後も、ボロボロになった身体を『隠れ家』のなかでリハビリを重ねて、療養した。身体が回復した後に、己の人生を見つめなおし、テランスと共に旅に出たのだ。そして、オリジンでの闘いからもうすぐ一年経つと気づき、皆は元気にしているだろうかと『隠れ家』を訪ねてみたのだ。
『隠れ家』にいた皆は元気そうで、突然の訪問だったが皆喜んでくれて、すぐラウンジで宴となった。オリジンで共に闘ったイフリートもジョシュアも元気そうだった。ハルポクラテス先生も涙を流し、再会を喜んでくれた。エッダの子供も、もう「ママ」と言葉を発せられるようになり、子供の成長の早さには驚かされた。私もその姿に嬉しくなり、エッダの子供をだっこしてみたが、母親じゃないと嫌なのか泣いて暴れ出し、慌ててすぐにエッダに子供を返した。その光景を見ていた皆が楽しそうに笑っていた。もちろんテランスも。キエルも元気そうで、「早く大人になって、お医者さんになりたい」と微笑んでいた。その夢はきっと叶うことだろう。皆、それぞれ新たな人生を歩んでいる。まだヴァリスゼアは完全に平和になったとは言えないが、皆少しずつより良い世界にしようと頑張っている……。
◇◆◇◆
「テランス」
「はい?」
『隠れ家』の皆と別れ、旅を再開した私たちは、夜、街の宿に泊まることにした。窓の外は、月が綺麗に輝いている。
私はテランスの腕の中で、テランスの温もりに包まれながら言葉を紡ぐ。
「あれから一年経ったとはいえ、まだまだ世界は混乱に満ちている。私も己の人生、この先に何が待っているのかわからない。それでも……お前と共に、これからも歩んでいきたい」
そう呟き、私は顔を少し上げてテランスの唇にキスをした。唇が離れるとテランスは目を細めて、囁いてくれる。
「ええ……一緒に見ていきましょう。この世界の未来を」
私はその言葉を聞いて安心する。そしてもっとテランスの身体をぎゅっと抱きしめる。その温かさは私の心を満たしてくれる。
テランス、一緒に、これからも頑張ろう。共に、生きていこう。
私はそう心の中で呟き、テランスに包まれながら目を閉じた。