降誕祭の魔法使い(ノエルくらい、一緒にいられるとおもったんだけど)
「…とうさま…」
窓の外にちらちら舞う雪を見ながら、窓の縁に組んだ腕をのせて涙目のディオンは独りごちた。
3週間前に過ぎたサン・ニコラの日に願った贈り物は、今年も果たされることがないようで悲しくなってくる。
この国でルサージュといえば誰もが知っているような大企業ではあったし、その社を統べる社長その人が自分の唯一の肉親であるのも事実だ。
それ自体はとても誇らしいことなのだけれど、生憎この父親はなかなか家に寄り付かず、たまさか帰って来たところで一言二言言葉を交わせたらいい方だ。
それでいて、仕事上の体面は大切なのか客の訪問があった際には着飾ったディオンを伴って、事も無げに自慢の息子だ、と宣うのだ。
5852