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    mizutarou22

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    オリジン後のテラディオ。怪我で言葉が出ないディオンがテランスに想いを伝える話です。

    #テラディオ

    指先の想い「しばらく声を出さないこと。いいわね?」

     そうタルヤ様が宣言すると、私はディオン様の代わりにしっかりと頷いた。その様子を見てタルヤ様が安心したようにため息を吐く。

    「皇子様、無理しようとするから、あなたが頼りよ。頼むわね」

    「承知しました。ディオン様のお身体の様子を今後も注視していきます」

     私の言葉にタルヤ様は頷き、「今日はこれで終わり。あとはゆっくりしてて」と話し、医務室の隣の部屋に移動してくれた。きっと二人だけにしようというタルヤ様の心遣いだろう。私はタルヤ様に心の中で感謝の言葉を告げた。

     こつん……と小さな音がした。私は振りかえり、ベッドで寝ている最愛の人に話しかける。

    「ディオン様……」

     ディオン様はまだ思うようにいかない手を伸ばし、私の鎧に爪を当てて音を出す。
     こつん。
     小さな音。しかし私にはそれだけで十分だった。

     あの日。ディオン様がバハムートとなって空に浮かぶ不気味な物体に駆けていってからまだ数日。私は必死になってここ、『隠れ家』を見つけ出した。『隠れ家』では既にディオン様が救出されていたが、身体がボロボロの状態だった。私はすぐに自分がディオン様の従者であることを伝え、キエルと共に『隠れ家』にてディオン様の快復を待つことになったのだ。

     ディオン様はしばらく安静にしていなければならず、身体が動かせない状態だった。そして、お声を出そうとすると、身体の内側が痛むらしく、私とのコミュニケーションは先ほどのように軽く身体に触れる、ということをディオン様はしているのだ。

     こつん、こつん。

     ディオン様が私の鎧を爪で叩く。かたい音だが、私にとってはこの音はディオン様が生きている……そう実感させてくれる、希望を持たせてくれる音だった。

    「ディオン様……私はここにいますよ」

     こつん。

     ディオン様はまだうまく顔の筋肉を動かすことが出来ないが、私にはわかった。ディオン様は微笑んでいる……。

    「頑張りましょうディオン様……私はお傍にずっと、います」

     私はディオン様の手をゆっくりと痛みが起こらないように掌で包み込み、そっと口づけをした。

    ◆◇◆◇

    「テランスお兄さん、ディオンお兄さんが何かしたがってるみたい」

    「え?」

     私はディオン様のお身体を布で清めているときに、近くで見ていたキエルが何かに気付いたらしい。私は布を隣の空いているベッドにいったん置き、ディオン様に話しかける。

    「ディオン様、どうしました?」

    「……」

     まだ声が出せないディオン様は、私の掌を指差す。私の手? 私の手がどうかしたのだろうか? そう思っていると、ディオン様が自分の手を開いてみせた。私は意味がわからず、思わずキエルを見つめてしまう。キエルは顎に手を当てて少し考える仕草をした後、呟いた。

    「うーん……ディオンお兄さん、テランスお兄さんの掌が見たいんじゃないかな」

    「掌?」

     私の掌を? 何故? そう思いながらも、私はディオン様に向けて、自分の掌を差し出した。その掌を見つめて、ディオン様は人差し指以外の指を折り、私の掌に指を置いた。そして……。

    「え……」

     掌に置いた指が、ゆっくりと動き出す。その動きはまるで何か文字を書いているようだった。私はその文字を必死に解読しようとする。

    「……!」

    「……? テランスお兄さん……?」

     私は気付かなかった。キエルに心配そうに呼ばれてハッと気が付いたときにはもう涙が一筋頬を流れていた。

    『ありがとう』

     ディオン様が私の掌で書いた文字……そのお言葉だけで私の心は満たされ、胸が愛情で苦しくなった。

    「ええ……ディオン様……私も……あなたに感謝の言葉を……」

    『生きて戻ってきてくださり、ありがとうございます』

     私がそう呟くと、ディオン様は少しずつ治りかけている顔の筋肉を動かし、微笑んでくれた。

    ◆◇◆◇

     あれから一か月経った。『隠れ家』での生活もすっかり慣れ、『隠れ家』に住む人たちとも仲良くやっていけている。キエルもディオン様を診ながら、間の時間に子供たちと楽しそうに遊んだり、タルヤ様に医学の勉強を見てもらったりと充実した日々を送っていた。

     そして今日も、私はディオン様のお身体を清めようと、医務室へと入った。

    「あら、皇子様の恋人さん。今日は良い知らせがあるの」

     部屋に入った途端、タルヤ様から話しかけられた。タルヤ様の表情が明るい。良い知らせ? いったいなんだろう?

    「見ればわかるわ。とにかく、はやく皇子様に会いにいってらっしゃい」

    「? わかりました」

     私はそう声を掛けて隣の部屋へと移る。そこにいたのはベッドに上半身を起き上がらせることが出来ているディオン様の姿があった。

    「ディオン様っ……!」

     ああ……よかった! 少しずつお身体が治ってきている……! 昨日まではずっと寝たきりのままだったのに! 私の喜びの表情を見たのだろう、ディオン様が微笑んで、またすっと人差し指を私に向けて差し出した。私は弾む心を落ち着かせながら掌を出した。ディオン様が私に何か伝えたいのだろう。きっとそれは明るい話題に違いない。

    『ここまでなおることができた うれしい』 

    「そうですね。タルヤ様やキエル……そして『隠れ家』の皆さまのおかげです」

    『おまえもわたしのささえになってくれた ほんとうにありがとう』

    「ディオン様……」

     今日は本当に良い日だ。まだ時間はかかるけれど、ディオン様のお身体は必ず治る。あともう少しだ、とディオン様に伝えようとしたとき、ディオン様が続けて文字を書いた。

    『あいしている』

    「愛している」

    「……え……?」

     今、聞き馴染んだ声が聞こえた。私は掌とディオン様のお顔を交互に見やる。ディオン様はくすくす……と私の反応を楽しむかのように目を細めていた。

    「テランス、愛している」

    「……!」

     心の中に驚きと、喜びの激流が襲った。涙が盛り上がり、私の声が勝手にしゃくりあげる。

    「ディオン様っ……! ディオン様っ……! 愛しています……! 愛していますっ……!」

     私は身を乗り出し、ディオン様の唇にキスをする。何度も何度も。もう止められなかった。

    「ふふっ……テランス。がっつきすぎだ」

    「ディオン様……! 愛しています……!」

    「知っている」

     そして私はまたキスをする。ディオン様は目を閉じ、微笑みながら口づけを受けてくれている。こんなに嬉しいことはない。私は涙を止めることは出来なかった。きっと顔がぐしゃぐしゃになってしまっていることだろう。けれどそれでもかまわなかった。

    「テランスお兄さん、ここにいるの?」

     すると隣の部屋から扉を開けたキエルの声が聞こえてきた。キエルのその声に反応したのはタルヤ様だった。

    「キエル、皇子様の恋人さんならここにはいないわよ。それに、ちょうど良かった。薬草の勉強についてちょっとあなたに伝えるのを忘れてたことがあるの。ちょっと植物園まで付いてきて」

    「? はあい」

     そうキエルが返事をする言葉が聞こえ、タルヤ様と共に医務室を出る音が聞こえた。私とディオン様は一瞬キエルが来たことに驚いてキスを止めてしまったが、二人きりになったとわかり、お互いに笑いあった。こんなに熱いキスを交わしている姿を見られたら、キエルはきっと真っ赤に頬を染めてしまうだろう。大人びているとはいえまだ子供だ。大人のキスを見られるのはお互いにとって恥ずかしい結果になるだろう。あとで気遣ってくれたタルヤ様に感謝の気持ちを伝えなければ。

     そして私たちはもう一度キスをする。唇が離れたあと、私たちは口を開く。

    「愛している、テランス……」

    「ディオン様、愛しています……」

     そこでふと私は思いつき、ディオン様の手を取って、掌に文字を書いていく。ディオン様が私が書いた文字をじっと見つめ、その単語の意味に気付くと、涙を流してくれた。

    「ありがとう……テランス……」

     何度も何度もディオン様が書いてくださった文字を、私も書いていく。それは私たちの、指先で伝え合う、愛の対話だった。
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    mizutarou22

    DONEテラディオの二人がコスタ・デル・ソルへバカンスに行く話です。謎時空な現パロです。FF7リバースをプレイしていたら二人にも行ってほしくて…。リバースのネタバレは無いと思いますが一応注意してください。
    あなたが一番綺麗 遠くからさぁ……と音が聞こえる。その音は私を落ち着かせ、身体が勝手に胎児のように丸くなろうとする。しかし足を丸めようとしたところで、ふと温かい何かに当たった。そこで私は意識が少しずつ覚醒していく。目をふっと開け、視界に映ったのは……。

    「おはようディオン……目、覚めた?」

     目を開いた先にいたのは私の最愛の夫、テランスだった。テランスが微笑みながら私の髪をそっと撫でる。私はその撫でられる気持ちよさにうっとりとして、テランスがしてくれている腕枕に唇を近づけ、キスをする。

    「ああ……波の音で目が覚めてしまったようだ」

    「綺麗な音だね、ディオン」

    「ああ……」

     そう、私たちは今コスタ・デル・ソルというリゾート地へ来ている。温かい……というよりカッと太陽が照り付ける暑い気温で、ここにいる人々は薄着や水着で街中を歩いたりしていた。街も活気があり、皆楽しそうに催し物に参加したり、また様々なお店が軒を連ねており、そのなかでショッピングを楽しむ者もいた。
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