あなたの飛ぶ姿「追い詰めたぜ……可愛いお嬢さん?」
ぐへへ……と嗤う汚らしい山賊たちに周りを取り囲まれる。後ろは崖になっており、下は川が激しく流れている。落ちたらひとたまりもないだろう。しかし私はただ静かに、山賊たちを見つめていた。
「おとなしく降参すれば命だけは助けてやる……ただし、その場合、お前は俺たちの『玩具』になってもらうからな」
山賊の目は私を上から下までいやらしく、舐める様に見て、舌なめずりをする。もう勝ったと思い込んでいるのだろう。
「ふふ……」
私は山賊たちのその様子に我慢できず、口の端を上げた。だって、これは笑うしかないだろう?
「テランス」
私が小さく呟くと、上から、風を切る音が耳に届いた。
「……? ぐ、がぁ……っ」
「な、なんだ っぎゃああっ」
山賊たちの身体が次々と上から槍で突き刺されていく。汚らしい返り血を浴びて、私はぐい、と手の甲で顔についた血を拭う。
もうその場にいた山賊たちは倒れ、息をしていなかった。最後にとどめを刺した槍を引き抜き、テランスは血を払った。私は恋人の雄姿に惚れこみ、崖から離れ、テランスに近づく。
「久しぶりにお前が飛ぶのを見た。腕は落ちていないな」
「武器を剣に変えましても、槍の訓練は日々しておりましたから」
言葉は冷静だったが、テランスの瞳は怒りに燃えていた。私がテランスに攻撃のタイミングを伝えていたとはいえ、少し焦らせすぎたか。
「……あなたを侮辱する言葉が吐かれるのを、ただじっと聞いて待たされる私の身にもなってください……っ」
そう言ってテランスは私の手首をぐいっと掴んで引き寄せ、抱きしめてくれる。
「あなたは私の大事な人……っ、誰にも奪わせはしない……っ」
戦闘の興奮がまだ残っているのだろう、苦しそうにテランスは呟くと強引に私の顎を上げさせ、唇を強く吸ってくる。私は彼に身体を閉じ込められて身動きがとれない。その情熱さが心地良く、私も同じように唇を吸う。
「悪かったテランス……悪かった……」
私はテランスの背中をぽんぽんと優しく叩く。久しぶりにテランスの『ジャンプ』が見たいと思い、ちょうど良いところに敵が現れて、調子に乗ってしまったのがいけなかった。テランスを落ち着かせようと、私は何度も優しく、唇を啄んだ。それでも足りなかったらしく、そのまま地面へと押し倒されてしまった。はぁはぁと呼吸を荒くして、テランスが強引に私の服を脱がしていく。いじわるをしてしまった申し訳なさと、私を求めてくれる興奮が身体を包み、私はこのままテランスに身を任せた……。