大好き♡「好き♡ テランス♡ だ~いすき♡」
「……」
ディオンはそれはもうべたべたと僕にくっつき、離れない。冷蔵庫に飲み物を取りに行くときだったり、キッチンで料理をするときも、ディオンは今日一日中僕をぎゅっと抱きしめて『好き好き♡』と言ってくる。
そんなディオンについ僕は『可愛いなぁ』と思ってしまうと同時に、どうしても戸惑いが心を支配する。
「……ディオン……性格……変わった」
昔……『前世』のディオンはこんな風に僕に愛を囁かなかった。以前は瞳でお互いを見つめ合えば言葉はいらなかった。言葉で伝えるときには『愛している』だとか『そなたと共に生きていきたい』だとか、もっと紳士的だった。
しかし『今世』では語尾には『♡』が付いているなぁとわかるし、目をとろんと蕩けさせて、その奥にはハートが浮かんでいる。性格が変わったとしか思えない。
「テランス……こんな私は嫌か」
「い、嫌とかそういうわけじゃないよ。でもディオンって僕の中では『かっこいい』イメージがあって」
「……可愛い私は嫌か」
ディオンが明らかにしょんぼりとした顔をした。まずい。ディオンが悲しむ顔なんて見たくないのに。
「そんなことない かっこいいディオンも、可愛いディオンも、どんなディオンも僕の宝物だよ」
……あ。つい大声で愛を告げてしまった。ぱあぁとディオンの頬に朱が走り、ますますディオンは僕を抱きしめてきた。
「さすが私の夫♡ 私もテランスのこと、宝物だと思っているぞ♡」
そしてディオンは僕の頬にちゅっとキスをした。
ああ……もうなんでもいいや。『♡』がついているとかどうとか、些細なことだ。
「さあテランス♡ 今度はえっちの時間だ♡」
「ええ だって、昨日の夜あんなにしたのに」
「お願いテランス……♡ お腹、さみしいの……♡ 奥までごりゅごりゅって……突いて?♡」
ああ……ディオン……僕がディオンに弱いことを知ってそういうことを言う……。
「……ディオン……わかってて言ってる 今自分が何を言っているか」
ディオンの目の前にいる僕は狼なんだよ あっという間にディオンのことぺろりと食べちゃうんだよ
「ふふ……♡」
あ。わかってて言ってるな。これは。微笑むディオンが僕の手を取って、寝室へと引っ張っていく。
「テランス」
「……」
突然、ディオンの声音に威厳が宿り、僕は以前の自分に戻ったかのように、身体に緊張が走る。
「今日はずっと、私の傍にいてほしい……共に……この褥で……」
そう呟くとディオンはベッドに仰向けになり、私を引き寄せた。ディオンを押し倒したような姿勢になりながら、僕はディオンの瞳の奥を覗く。
「……ふふっ……」
僕は思わず笑む。何故ならかっこよく台詞を言っても、ディオンの瞳にはハートが浮かんでいたから。感情を隠し切れないディオンが愛おしくて、僕はディオンの唇をそっと甘く啄んだ。