テディベアとオムライス「よし……出来たぞ」
私はフライパンに丸く円となったふわふわの卵を敷いた。その上にチキンライスをそっと乗せていく。あとはデミグラスソースをかければ今日の晩御飯、オムライスの完成だ。
出来たオムライスをお皿に入れ、サラダも盛り付ける。あともう一品、ミネストローネのスープを用意する。これで今日の夜ごはんの準備完成だ。
私はテランスの分と自分の分の食事をテーブルに慎重に運びながらそっと置いていく。テランスからはトークアプリで「今日は仕事が忙しいから先にごはん食べてて」と言われていたが、どうしても二人で一緒に食べたかった。だからもうそろそろテランスが帰りそうな時間に合わせて晩御飯の準備を始めたのだ。
食事の準備も終わり、ぐっと私は腕を天井に向けて伸びをした。ほぅ……と息をついて伸びを解き、リラックスをすると、私はそっと寝室に飾ってある二匹のテディベアを見つめた。
それはまだテランスと私が結婚をする前、何か用事があって会えないときのために、お互い自分の代わりになるようにと、テディベア専門店で買ったものだ。その専門店ではテディベアの身体や目の色を自由にカスタマイズすることが出来、お互いの特徴をそのテディベアに寄せて作ったのだ。
「テランスのばか……、早く帰ってこい……」
私はテランスに似たそのテディベアをそっと持ち上げ、抱きしめる。仕事が忙しいのはわかっている。だけど切ないこの気持ちを抑えることが出来ない。
「テランス……」
私はそのテディベアに、そっと口づけをした。そしてぎゅっと抱きしめる。
「ディオン?」
「え!?」
突然の愛するテランスの声に驚き、玄関口を振り返る。そこにはスーツ姿のテランスが鞄を持ったまま私を見て、赤面をしていた。
「ディオン……、えっと……仕事が早く片付いて……」
「あ、こ、これは……その……」
私が寂しさのあまりテランスの姿に似せたテディベアに口づけしていたところをばっちりテランスに見られてしまい、恥ずかしさのあまり体中がカーっとほてっていくのを感じる。
「ちょっと待ってて」
その様子を見ていたテランスは二人の寝室へと入っていく。そして私の頭を軽く撫でると、テランスは私に似せて作ったテディベアを手に取り、そのまま私の方へ向き直った。
「寂しくさせてごめんね。ディオン……」
そう言うとテランスは私が抱きかかえているテディベアの口に、テランスが持っている私に似たテディベアの口をくっつけ合わせる。
「あ……」
私は「ずるい」と思った。この二匹だけが愛しあってるなんて、ずるい、なんて思ってしまう。私は自分で自分の唇に触れ、それをテランスへ見せつける様に顔を近づけさせる。
「テランス……、私にも……」
ほぅ……と艶やかな吐息が唇から漏れるのが自分でもわかる。テランスは自分を見つめる瞳に獰猛な獣のような雄々しさが表れていくのが見てわかる。
そのあと二人が、せっかく作ったオムライスが冷めてしまうのに、我慢できずにベッドにもつれ合うように倒れ愛し合うのを二匹のテディベアだけが知っていた。