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    mizutarou22

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    mizutarou22

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    テラディオで転生パロ、現パロです。冒頭にディオンが亡くなるシーンがありますので苦手な方は注意してください。何かありましたらこちらまで→https://wavebox.me/wave/3sm05q1byh901yfk/

    #テラディオ

    たくさんの星々よりも 落ちていく……。

     真っ逆さまに落ちていく。下へ、下へと……。耳元で風が轟轟と音を立てて私の身体を過ぎ去っていく。きっとこの高さから落ちたら助からないだろう。

    「……」

    最期に思うのは私がこの手で殺してしまった父の事、そして……。

    「テランス……、そなたを置いていってしまうことを、どうか許してほしい……」

     後のことは残る二人……。オリジンにいるイフリートと、ジョシュアに任せる。どうかこの世界を、変えてほしい……。そして、テランスが、私がいなくなってもどうか、良い人生を今後も歩んでいけるように……。

    「さようなら……、テランス……」

     私は愛する人のことを想いながら、私の人生に、別れを告げた。

    ◆◇◆◇

    「ディオン? ディオン?」

    「……え?」

     突如ぐらぐらと身体が揺さぶられているのを感じ、目をぱちりと開けた。目の前にあったのは心配そうに私を見つめるテランスの姿だった。テランスは眉尻を下げて、私の肩に手を掛けて、身体を揺さぶっていたようだ。そうだ、私は……。ここは……。

     私は夢を見ていたようだ。そうあれは……、『前世』の記憶。ディオンと言う一人の青年が生きた人生の記憶が、私が生まれたときからすでにあった。その『前世』の最期の記憶が久しぶりに夢に出てきた。

    「ディオン……、どうしたの? どうして泣いているの?」

     そう言ってテランスは身を乗り出し、私の目尻にそっとキスを落としてくれる。そこで私は涙を流していたのだと、気づいた。私は昨日のテランスと愛しあった裸のままの状態で、横にいるテランスの胸に顔をうずめる。

    「なんでもない……、少し、『昔』を思い出しただけだ」

    「……」

     テランスは何も言わず、私をぎゅっと抱きしめてくれた。その温かさが心に沁みこんでくるようで心地良い。

     テランスと私は『今世』でも恋人同士だった。子供のとき、家が隣同士で、お互いにすぐ、自分たちが『前世』では恋人同士だったのだとわかった。それからはずっとこうして大人になってからも恋人としてそばにいる。それがずっと嬉しかった。争いの無いこの世界で。愛する者と二人きり。……なんと幸せな日々を送れているのだろう。

    「すまない。朝から感傷的になってしまったな。もう起きるか……」

     私はベッドから上半身を起こそうとしたとき、テランスにそっと腕を握られた。

    「……? テランス?」

    「あ、あの、ディオン……、あの、さ……」

     ……? どうしたのだろう? 何だかテランスが頬を染めて、そわそわとしている。いつもなら一緒に起きて共に朝食を作るのに。そしてテランスは重大発表でも言うかのように私を見つめて口を開いた。

    「あ、あのさ、ディオン、今日プラネタリウムに行かない? もうチケットも取ってあるんだ……」

     テランスに掴まれた腕からテランスの汗が滲むのを感じる。どうしたのだろう? 今日は休みだから、仕事の息抜きに行こうということか。それなら喜んで一緒に行くのに。どうしてそんなに緊張しているのだろう。

    「……? ああ、いいぞ」

    「で、その……、そのあと、夜ご飯、食べにいかない?」 

     どうしたのだろう? テランスは。いつも一緒に出掛けているときは食事をするのに。そんなこといちいち許可を取らなくてもいいのに、本当に今日のテランスは何を考えているのだろう?

    「ああ。もちろんいいぞ? ということは今日は夜まで出かける、ということだな?」

    「そ、そう」

     テランスが小さくよしっと空いている方の手をぎゅっと握りしめ、いわゆる『ガッツポーズ』をとっていた。

    「? テランス? 今日はなにかあるのか?」

     私は首を傾げ、テランスに尋ねる。

    「うん……、今日は、とても大切な日だから……」

     大切な日? 私は顎に手を掛けた。今日という日は何かあっただろうか? よくわからないまま、私とテランスは起き上がり、私はうーんと身体に伸びをする。そして私はベッドの横にあるサイドテーブルに置いてあったスマホを手に取り、スケジュールを開く。今日の予定を確かめるが、今日は普通の、なんでもない休みの日と表示されるだけだった。テランスの言う『大切な日』とは何だろう?

    「ディオン、予約したプラネタリウムは夕方からなんだ。だからその時間に間に合うように出発しようね」

    「わかった……」

     私は、どこかテランスの様子に釈然としないまま、こくんと頷いた。

    ◆◇◆◇

    「む? このシートは……?」

     二人でプラネタリウムに着いて、そろそろ上映時間のため席に着こうと歩き、テランスが予約してくれたというシートを見た途端、足が止まった。

     そのシートはまるでベッドのようで、普通の席とは違い、隣同士で区切りが無い。私とテランス、お互いにいつものベッドで寝るような体勢で大型スクリーンを見ることが出来るシートとなっていた。

    「このようなシートもあるのだな。高かったんじゃないか? 値段」

    「そんなことないよ……ディオンと一緒に楽しみたいし」

     そうテランスは言うと先にシートに座り、まだ立っている私の手を引っ張った。私はその勢いに任せ、シートに沈む。ふわりとしたクッションが私の体重を受け止めてくれる。そしてお互いに寝転んで仰向けになり、まだ何も映していないスクリーンを見つめる。

    「久しぶりだなプラネタリウム。しかも題材が『ファイナルファンタジー』だなんて」

    「絶対にディオンと観たいって決めてたんだ」

     そう、今回観るプラネタリウムの題材は『ファイナルファンタジー』。『前世』の時代にジョシュアが執筆した魔法やクリスタル等があった事が記録されている本が『今世』でも有名な作品となっており、知らないものはいない。私は『前世』ではオリジンでの闘いの後、亡くなったため読むことは叶わなかったが、『今世』では読むことができた。まさかその作品がプラネタリウムの題材になっていたなんて。面白い作品は時が流れても愛されるということか。

     まもなく上映が開始されると館内スタッフがアナウンスする。私はシートにより身を沈め、テランスの温もりを隣で感じながらそのときを待つ。

     そして、辺りは真っ暗になり、プラネタリウムは上映を始めた。スクリーンにはナビゲーターの声が響き、そして……。

    「あ……」

     私は思わず吐息のような小さな声を出してしまった。スクリーン内を飛び回るのは……、召喚獣達だった。私たちが『前世』で見た召喚獣達。そして大きな翼を広げて飛ぶのは……。

     ……バハムート。

     バハムートを含めた召喚獣達がスクリーンに映し出される夜空を飛び回り、観客を一気に『ファイナルファンタジー』の世界へと誘う。『前世』ではこんな風にお互いのことを思いながら飛んだりはしなかった。互いに争い合い、心穏やかに夜空を飛ぶことは無かった。

     しかし、私はふと、『前世』の記憶を思い返していた。心穏やか……そのように飛んだ事が一度あったからだ。

    『わぁ……ディオン、本当にいいの?』

    『もちろん! さあ私の背に乗ってくれ!』

    『うん!』

     そう言って子供の頃の私は皆に内緒で夜、バハムートに変身し、テランスと共にザンブレクの皇都オリフレムとその後ろにそびえ立つマザークリスタル、ドレイクヘッドを高い空から眺めようと夜空を駆けたことを思い出す。ドレイクヘッドが夜でもキラキラと輝き、そのまばゆい光がテランスを映していたことを思い出す。あの頃は顕現による身体への負荷があったことなど知らず、ただまだ友人だったテランスを喜ばせたいと、夜空の散歩へと誘ったのだ。まだ声変わりが始まっていないテランスの高い声が楽しそうに笑い声を響かせているのを聞き、私はさらに喜ばせようと高く舞い上がった。数多の星々、月、メティア……全てが綺麗だった。「また一緒に空を飛ぼうね」と興奮した様子で私の背に乗っているテランスが語り掛けてくれる。私は頷き、テランスと約束をした。

     しかし、その約束が叶うことはなかった。あの後、当たり前だが巨大なバハムートが空を飛んでいると父上に報せが入り、城や街中も騒ぎになってしまった。許可なくバハムートに顕現してはいけない……。私は叱責を受け、その後にバハムートに顕現出来た機会はもう戦場の時だけになってしまった。たった一度だけ、己の立場など何も考えずに、ただ楽しく夜空を飛んだあのひと時だけが愛しい思い出として記憶に残っている。

     ……そう。私はもう飛べない。『今世』ではバハムートになってテランスを背に乗せて飛ぶことは叶わない。それが少し残念に思った。『前世』のときは何も思わなかったが『飛ぶ』という行為は特別なものだったのだと、痛感した。もうテランスを乗せて空へと羽ばたくことは出来ない。私は『今世』では何の力もない。普通の人間だ。民を導くことも、バハムートとして空を駆けることも出来ない。本当に、普通の人間として生まれ変わった。

     そんなことを考えていると、ふと、掌が温かさを感じた。隣を見るとテランスがスクリーンではなく、私を見つめて微笑んでいた。テランスが私の手を握り、指先を絡めてくる。

    「綺麗だね。ディオン……」

     その言葉に私はスクリーンに視線を移し、息を吞んだ。スクリーンに表れたのはかつてのオリフレムの街並みとホワイトウィルム城、そしてドレイクヘッドが映しだされていた。ジョシュアが執筆した『ファイナルファンタジー』では挿絵があり、それにはかつての街並み等が描かれていた。それを参考にしたのだろう、映像では輝くドレイクヘッドをバハムートが光を纏いながら飛んでいる。それと同時にナビゲーターの声がスクリーンに表示された星々の説明をしていく。

    「そうだな……」

     私はかつてこの目で見た景色をテランスと共に、今度はプラネタリウムというかたちで眺めていった。

    ◆◇◆◇

    「もうすっかり暗くなってしまったな……。テランス、どこで夜ご飯を食べるんだ?」

     私たちはプラネタリウムがあるビルを後にし、テランスに尋ねる。しかしテランスからの返事が無い。私は不思議に思い、隣にいるテランスを見た。するとテランスがどこかもじもじとしている。

    「じ、実はもう予約してあって……」

    「予約?」

     プラネタリウムの他にも食事の予約をしていたのか? いつの間に?

    「こ、ここからすぐ近くなんだ。ついてきて」

     そう言ってテランスは私の手を取り、前へと歩き出しはじめる。私は引っ張られるようにテランスのあとをついていく。……やはり今日のテランスの様子、少しおかしくないか? 私は小首をかしげながら歩を進めていった。

    ◆◇◆◇

    「テランス……レストランとはここのことか?」

    「そうだよ。ディオン」

     そのレストランとは都市部のなかで値は張るが美味しいと評判の有名なレストランだった。ビルの最上階にあり、内装が落ち着いていながらも気品に満ちた空間で彩られていた。

    「一度ここへ入ってみたかったのだ。嬉しいぞ。テランス」

    「よかった。ディオン……」

     二人で見つめ合い、思わずふふっと笑みを浮かべる。そしてレストランの入り口でウエイターに席を案内され、席に座る。案内された席は窓が近く、外を見ると都市のネオンの光で煌めいていた。

    「……」

     そのネオンの光が、先ほど鑑賞したプラネタリウムの星々のようで、私は今日見た『前世』の夢の事を思い出していた。子供の頃、テランスと飛んだ夜空。オリジンでの闘いの後落ちていった空。そして、今窓から見ているネオンに輝く空……。同じ空なのに、私は変わってしまった。もう何の力も持っていない私。……私は、テランスに何をしてあげられるのだろう……。『前世』で置いていってしまった最愛の人。きっと苦しめてしまったに違いない。それなのに今の『今世』でもこのように恋人として傍にいてくれる。

    「テランス、今日のプラネタリウム、感動したぞ……。またバハムートに逢わせてくれたこと、感謝している」

    「うん……どうしても、ディオンと観たかったんだ。あのときの……。『前世』のときに見た光景を」

     そうテランスは言うと、テーブルの上に置いていた私の手に、上から手を置いて重ねてくる。

    「……あのね、ディオン。今日プラネタリウムに誘ったのには理由があるんだ」

    「理由?」

     私が尋ねると、テランスは私の顔をじっと見つめてくる。

    「それはね。昔も今も、あなたへの気持ちが変わらないってことを伝えたかったんだ。そして……」

     そう言ってテランスはバッグから何か小さなものを取り出す。それは……。

    「ディオン、覚えてる? 今日、この日は初めて『あの日』空を飛んだ日付と同じなんだ」

    「え……?」

     空を飛んだ日? それはもしかしてテランスと一度きり、己の立場などに何も縛られず、夜空を飛んだあの日が、今日この日だというのか?

     そして、テランスは取り出した小さな小箱を大事そうに両の掌で包む。

    「そして……あなたに恋をした日」

    「……!」

     テランスが小箱をそっと開ける。その小箱は……そう、リングケースだった。その中には……。

    「結婚しよう。ディオン」

     そのケースの中には二人分の、煌めく指輪が入っていた。私はしばらく驚きのあまり呆然としてしまったが、やがて視界が涙でぼやけてしまい、口から勝手に堰を切ったように言葉が溢れ出てくる。

    「そ、そんな……。テランス……私はもう、お前を乗せられる大きなバハムートではないのだぞ」

    「知っているよ」

    「民を導く一国の皇子でもないのだぞ」

    「知っているよ」

    「最期に……お前を置き去りにしたのだぞ……っ」

    「ディオン」

     テランスが私の言葉を遮るように私の手を取った。そして左手の薬指に、ケースから取り出した指輪をそっと、はめていった。

    「あ……」

    「愛しているよ。ディオン。二人でおじいちゃんになるまで、一緒にいよう。今度こそ幸せになろう」

     テランスのその言葉に、私は泣いた。涙が止まらなかった。もう私には何もないと思っていた。バハムートもいない。皇子でもない。最愛の人を置いていってしまった。それでも私の愛するテランスはこうして『今世』でも傍にいてくれると誓ってくれる……。感謝の気持ちが心を満たしていく……。

    「私も……愛している……テランス……私の夫……」

     きっと私の顔は涙でぐしゃぐしゃだろう。それでもいい。私は瞳を閉じて待った。そして唇がふっと熱くなる。テランスが私にキスをしてくれている。指にはリングがはまっている感覚。それだけが全てだった。

     私は瞳を開いた。目に涙を浮かべたテランスの笑顔が目に飛び込んでくる。そして薬指には……指輪がどんな夜空の星々にも負けないくらいに輝いていた。
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    mizutarou22

    DONEテラディオの二人がコスタ・デル・ソルへバカンスに行く話です。謎時空な現パロです。FF7リバースをプレイしていたら二人にも行ってほしくて…。リバースのネタバレは無いと思いますが一応注意してください。
    あなたが一番綺麗 遠くからさぁ……と音が聞こえる。その音は私を落ち着かせ、身体が勝手に胎児のように丸くなろうとする。しかし足を丸めようとしたところで、ふと温かい何かに当たった。そこで私は意識が少しずつ覚醒していく。目をふっと開け、視界に映ったのは……。

    「おはようディオン……目、覚めた?」

     目を開いた先にいたのは私の最愛の夫、テランスだった。テランスが微笑みながら私の髪をそっと撫でる。私はその撫でられる気持ちよさにうっとりとして、テランスがしてくれている腕枕に唇を近づけ、キスをする。

    「ああ……波の音で目が覚めてしまったようだ」

    「綺麗な音だね、ディオン」

    「ああ……」

     そう、私たちは今コスタ・デル・ソルというリゾート地へ来ている。温かい……というよりカッと太陽が照り付ける暑い気温で、ここにいる人々は薄着や水着で街中を歩いたりしていた。街も活気があり、皆楽しそうに催し物に参加したり、また様々なお店が軒を連ねており、そのなかでショッピングを楽しむ者もいた。
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