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    matsurikaxtoru

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    matsurikaxtoru

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    カクイザが自分達に似た猫とぬいぐるみを拾うお話、マイキーが遊びに来たり喧嘩したりします。

    #カクイザ
    cukiza
    #横浜失楽園3
    yokohamaShitsurakuen3

    いざにゃとかくぬい4/イザナとマイキー8月も真ん中になる頃、今日もイザナのお家に人が訪ねてきました。
    それは昔のイザナの髪の毛を黒くしたような、大人びたようにも子供っぽくも見える不思議な感じの人でした。
    「ミィ。」
    「万次郎…」
    遊びに来た!と無邪気にいう万次郎に諦めの表情を見せてイザナは早く入れよと促しました。
    差し出されたたい焼きを平らげると万次郎はいざにゃに興味を示しました、イザナの弟の万次郎!エマはオレの妹とこの前来たエマの兄だという自己紹介をしました。
    血が繋がってないから本当の兄貴じゃねーけどな、というイザナに万次郎は一瞬悲しげな顔をしたのがいざにゃには見えました。
    言われたことを気にせずにパシャパシャと万次郎がいざにゃの写真を何枚も撮っています、そんなに猫が好きだったのかとイザナは考えていましたが。
    「場地に写真送ってる。」
    「そうかよ。」
    いざにゃを見たいという万次郎のダチが来ないといいなとイザナは思っていました。

    その頃、万次郎から送られてくるいざにゃの写真に場地はすぐに反応をしていました。
    「マイキーのやつ!普段全然連絡しねー癖にこういう時だけはよぉ!」
    「場地、動物好きなんだからいいじゃん、それに猫ならアパート側の草むらで見たぞ、黒いのと三毛のやつ。」
    「なに…?オレは見てねーぞ一虎…」
    「見に行くか、なぁ場地。」
    「…飼いたくなるから、ダメだ…」
    場地に猫を飼いたい気持ちはあっても一虎と一緒にパーちんの手伝いで訳あり物件を渡り歩いている身の上では飼ってやれないと考えています。
    ふーん、と興味が薄そうに部屋を出た一虎ですが、台所からツナ缶をひとつ手に取ってから外に行きました。
    アパートの階段をカンカンと降りながら「パーちん?次はペット飼える部屋がいいんだけど。」と電話をしています。
    「まぁああ言っても場地も飼いたいんだろうな。」
    ツナ缶片手に草むらの手前で屈むと、パカッとツナ缶を開けました。
    これやるからいるなら出てこいよ、場地が会いたがってるんだぞ…と言い切る前にふたつの塊が一虎めがけて飛んできました。
    そのまま後ろに倒れ込んだ一虎の視界には毛足の長い黒猫と三毛猫がいました。
    「お前ら、意外とでかかったんだな。」
    草むらから飛び出してきた二匹の猫は何処か自分達に似ていて、転がった一虎の上で呑気に鳴いています。
    「にゃあ。」「にゃー。」
    「場地ー!猫いたぞー!!」
    早く見にこい!と一虎は続けますが、一虎が場地の名前を発した時点で場地はアパートを飛び出してこちらに向かっていました。
    ひっくり返っている一虎を起こしてやると場地は口を開きました。
    「他人じゃねぇ気がする…」
    「そうだよな…」
    どうするか考えよーぜ一虎、という場地の膝の上に三毛の猫がにゃあと返事をして乗ったので、一虎はオレだ!と三毛を抱え上げました。
    こちらでは万次郎の送った写真から少しの騒動が起きていましたが、万次郎はそんなことも梅雨知らずに場地の携帯に写真を送りつけていました。

    写真を撮られるのに飽きたいざにゃはかくぬいを前足で抱っこして眠ってしまいました、万次郎も写真を送りつけるのに飽きたからか携帯を放りました。
    「見たいとか言い出しても見せてやらねーからな。」
    「えー、ダメ?」
    絶対ダメだ、と釘を刺さないとダメだなとイザナは溜息を吐きました。
    万次郎、お前にはドラケンもエマも真一郎も、東卍のやつらもいるんだからわざわざオレのところに来なくてもいいだろとわざと万次郎を突き放します。
    「ヤダ、イザナがいて欲しい。」
    「偽物の兄貴がそんなに欲しいのかよ。」
    万次郎にこんな言葉を投げつけたい筈じゃないのに、いつまでも血の繋がりがないことがイザナの中で蠢いている。
    「欲しいよ!」
    「お前にはいらねえだろ!」
    お前を必要に思う奴らがみんないるのにオレまで欲しいなんていう、唯我独尊が人の形をしている男。
    殴り合う必要ももうないのに、会えばこうなってしまう。
    どうしてだろうと思いながら拳を振り上げて蹴り上げた脚を交差させた、無敵のマイキーと不死身のイザナと呼ばれた二人の強さは今でも健在だった。
    万次郎は天性の強さで、イザナは後天的に強さを得た。
    そんな二人の元に多くの人が集まり、その先で二人は出会い、死闘を繰り広げた。
    そんな二人を止められるものなどいないと思った瞬間。
    「ミィ!ミィ!」
    殴り合う自分達にいざにゃが飛び込んできました、ハッとした二人は瞬時に拳を下ろして喧嘩を止めました。
    尻尾から落としてしまったかくぬいを手に取っていざにゃに渡すと、ミィといざにゃは鳴いてみせました。
    そうだ、この前の真一郎の誕生日に佐野の家に行って、結局こいつと大喧嘩になった。
    血の繋がりのことがまだ脳の端でチラついてしまう。
    それ以外にも些細なことで殴り合いの喧嘩なんてガキのうちだけで今更することでもないのに、万次郎を見るとどうしてもこうなってしまう。
    お前が憎くて傷付けて空っぽにしてやろうとした、そんなオレを救いたいなんてふざけたことを言った馬鹿な男。
    それからオレが死にかけて、血なんて繋がってないと言ったら万次郎は何も言えなかった。
    兄弟だから救いたい、兄弟じゃないから救えない、そう思っていたのに、オレは生きてしまったから、こいつはそれでもイザナはオレの兄貴だよと泣いた。
    無敵のマイキーが泣くなよとオレも泣いた、何処までも強いこいつは何処までも弱い子供で、何処か自分によく似ていたと気付いた。
    それから紆余曲折、万次郎は家にオレが来ることを望んでいたが、会えば見ての通りの殴り合い、気紛れにオレが万次郎がお互いの家に行くくらいの関係で着地した。

    「あの時、お前がオレに何も言えなかったことに救われた気がする。」
    「えっ。」
    「あの時そんなことないなんて言われていたら、本心でもきっとお前のことを憎んだままだったよ。」
    血が繋がってなくても兄貴だって、兄貴になってくれたら、万次郎が心からそう思ってくれていたとしてもあの時の自分には受け入れられなかった。
    何も返せない万次郎に、ほら救いようないだろという気持ちと、でもお前はオレを救いたいと思うような純粋過ぎる子供だったんだなという理解を得てしまった。
    そんなガキを放っておけない自分の性質にも気付かされた。

    「ミィ。」
    「いざにゃがいるのに喧嘩してごめんな。」
    びっくりしたまま飛び付いてしまったいざにゃですが、喧嘩している二人は何処か楽しそうにも見えていました。
    いざにゃを抱っこした万次郎はそのまま眠ってしまいました、大人になったのにそういうところは赤ん坊のままだとイザナは苦笑いをしています。
    「万次郎のお守りさせて悪いな。」
    「ンミィ…」
    「…オレも寝ようかな。」
    帰ってきた鶴蝶は、いざにゃを挟んで川の字で眠るイザナ達を見て、本当の兄弟みたいだと顔を綻ばせていました。
    鶴蝶が作った遅い昼食でテーブルを囲んで、また喧嘩になりそうになるのを鶴蝶といざにゃが止めたりしているともう夕方になっていました。
    エマとケンチンにあまり長居するなよと釘を刺されていた万次郎はそろそろ帰る、飯美味かったと鶴蝶にお礼を言って玄関の方に歩いて行くと。
    「ほら万次郎、たい焼きクッションやるよ。」
    イザナが合図もなく放り投げたクッションを万次郎は両手でキャッチしました。
    ぎゅっとたい焼きクッションを抱き締めて万次郎はそれを掲げてはしゃいでいます。
    「いいの?もらって。」
    「蘭が2個も買ってきやがったんだ、嵩張るからお前にやる。」
    「ミィ。」
    少し早い誕生日プレゼントだ、先に渡しておくと照れ隠しのような態度にいざにゃは尻尾を振って笑いました。
    「ありがと兄貴、オレの誕生日も喧嘩しような!」
    「お前なぁ。」
    イザナはエマがいうから祝いに行ってやるよ、それでまた喧嘩して、真一郎とエマに嗜められる。
    あったかもしれない子供の頃を今取り返してもいいだろうと、イザナと万次郎は笑いあっていました。
    バブに乗って帰る万次郎をバルコニーから見送ると、たい焼きを括り付けられたバブを見て誕生日に渡した方が良かったかと思いましたが、面白いからまぁいいかといざにゃと部屋に戻りました。

    ただいまという万次郎を出迎えたのはエマでした、案の定喧嘩したことを追及されていますが絆創膏を貼ってあげています。
    「マイキー!またニィと喧嘩したの?あとそれいざにゃのでしょ?」
    「兄貴がくれた!」
    「そりゃ良かったなマイキー。」
    いいだろ、とクマのぬいぐるみで遊んでいる赤ちゃんにも自慢するマイキーを見てドラケンとエマも相変わらずだと笑い合っていました。
    マイキーはたい焼きクッションを置いて上機嫌で赤ちゃんを抱っこしています。
    「あれ、なんか新しい服着てない?」
    「三ツ谷が仕立ててくれたんだよ、息抜きに作ったって。」
    「それ、仕事の間に仕事してるよな。」
    そんな話をしていると真一郎も帰ってきたのでイザナから貰った!とたい焼きクッションを真一郎に自慢すると良かったなと、またイザナと喧嘩してきたなと絆創膏を指さされていました。
    みんなでご飯を食べながら万次郎は考えていました、イザナもここにいたらいいのに。
    そう考えていますが、イザナが決めたことはちゃんと受け止めたいからこうしてたまに会いに行ったり、会いに来てくれたイザナと笑ったり喧嘩したりしています。
    たい焼きクッションをぎゅっとして、幸せだよと呟きました。
    「ねぇイザナ、あの時は何も言えなかったけど、イザナが兄貴になってくれたのすげー嬉しいんだ。」
    カレンダーの20日と30日を指差して、喧嘩もするし、イザナの苦しさも全部無くしてやれないけど、イザナのことが好きだから。
    兄貴になってくれてありがとう、これからの誕生日に何度でも伝えるよと笑う万次郎の瞳から溢れた涙はどんな宝石よりも光り輝いていました。
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