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    ななみ

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    ななみ

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    分裂ディノとぜろぴの話が続いた。設定考えるのが楽しくなっちゃった。まだ何も始まってない。

     ――闇が、自分を包んでいたことを覚えている。
     自分の思考も感情も衝動も、全てが他人のコントロール下にあって自分ではどうにもできなかった。その中にあった自分はそれに対して不快感を持つこともなく、むしろ心地よさすら感じて身を委ねていたのを、はっきりと自分の感覚として今でも鮮明に思い出せるのだ。しかし、今となってはそれはただただ気持ち悪くて仕方がないだけだった。
     自分の行いについて言い訳をするつもりはない。あの男に洗脳を受けていて、すべてはあの男に操られていただけのことだから自分には責任も罪もない、だなんて思いたくない。確かにあれは自分だったのだ。誰に何をされていたって、この手が汚れたことに変わりはない。
    だが、もう一人の自分――『彼』の心は自分とあの男が押し殺していたのだから、実質どころか実際に『彼』には罪はないし、むしろ自分とあの男に振り回された被害者でしかない。それを『彼』は知っているのだろうか。

     なぜか急にハッキリした意識と、実体を得た体。また『彼』の体を乗っ取ったのだろうかとも思ったが、どうにもあの時と体の感覚が違う。たまたま遭遇し、一目見て自分が『彼』ではないと見抜きながらもこちらを思いやった態度を取ってきた『彼』の親友。困惑しながらも彼に従って着いていけば、あっさりと『彼』ともう一人の親友に引き合わされた。驚いた表情の『彼』が元気そうで安心すると同時に、『彼』と親友たちが何故か愛想も悪い自分に友好的な態度を示してくるのが、不思議で怖くて気持ち悪くて――とりあえず研究所に行こう、という道すがら、耐えられなくなって訳も分からず逃げ出した。
     そして雨の中、背中から感じる衝撃にキャパオーバーだった自分は耐えられなかったのだろう、そのまま倒れ込んで意識を失った。あの色はなんていうのだったか。マゼンタ?





     絶対面倒じゃん、と先手を打ったアピールは無駄打ちに終わり、めでたくフェイスも巻き込まれることとなった。倒れた方のディノ(仮)と何があったかの事情聴取をその場で受け、キースがそれをふよふよと移動させるのについていけばブラッドと合流した。ディノ(仮)を見るその目が少し揺れているのに、少し前までの自分なら気付けなかったかもしれなかった。
    そのままブラッドが既に話を通したらしいノヴァの研究室に運び込まれたディノ(仮)は、当然だがあの暗い雨の中で見た時よりも汚れて見えた。ここまでの道中はキースの能力で水滴ひとつ廊下には落とさなかっただろうが、その分のツケが一気に来たのもあるのかもしれない。びしょびしょでどろどろなディノ(仮)が汚れているのはフェイスにも責任があるので、彼の体を拭いて着替えさせるのは手伝ったが、その先の展開の中に果たして自分がいる意味はあるのだろうか。
    お疲れ様、ありがとう、もうちょっと待っててね、とノヴァが淹れてくれたココアを飲むと体の奥が柔らかくほぐれていき、それを感じてからやっと自分は相当冷えていたんだと気が付いた。甘いものが好きなフェイスでもなかなか甘いなと思ったココアは、ぽてぽて歩く姿が可愛らしい小さなレディのお気に入りらしい。
     二度ほどそれに口をつけてから、じと、と四人に目を向けた。

    「――で、何? どういうことなの?」
    「今日俺とジュニアがさ、サブスタンスの回収しただろ?」
    「ああ。あの増殖するっていう? 報告……というか自慢は聞かされたよ」
    「そうそう。結構多かったんだけど、ジュニアが綺麗に撃ち落として回収したんだ。俺も手伝ったけどね」
    「へえ。……サブスタンス、ね」
    「さっすがフェイスくんは頭のいい子だな~」
     フェイスがだいたい察した事を、キースもすぐに分かったようだ。いつものやつ――回収時にその影響を受けた。それだけのことだ。
     

     それから始まったミラクルトリオと博士殿の会議――もとい、事情聴取と考察と相談が終わったのは、それなりに量があったココアを飲み干してカップもすっかり冷え切り、僅かに残った分も完全に固まってしまって二杯目もねだってしまおうかと思った頃だった。その間フェイスがしたことといえば、問われたことに答えて少し状況の整理を手伝っただけだ。まあそのくらいなら、甘くて温かいココア一杯分で十分おつりがくるだろう。

    「――じゃあ、ディノくんはそれでいい?」
    「はい。……今の話全部ひっくるめて本人次第、ということでここはひとつ」
    「うん、おれはそれで構わないよ。といっても、あまり自由にはさせられないけどね。許せる範囲はさっき言った通り――」
    「起きたか」

     ノヴァの言葉を遮ったのはブラッドの声だった。その視線の先を追ってみれば、ディノのジャージに着替えさせられたディノ(仮)がいつの間にか静かに目を開いていた。眩しいのだろう、眉間に皺が寄って目が細められ――それらはすぐに彼自身の腕に隠された。

    「……ここは」
    「おはよう。……気分はどう?」
    「……」
    「あれ? おーい?」
    「聞こえてる」

     もぞ、と被せられた布団の中で寝返りを打った彼の低く唸るような声は不機嫌そうに聞こえた。まあ、顔だったもんな。傷自体はすぐに治療したし治ったとはいっても、さぞ屈辱だった事だろう。流石に謝りたくはあるが、そうすることで神経を逆なでする可能性もあるので、黙っていることにした。

    「良かった。……って大丈夫か? フェイスに顔から行ったって聞いたけど」
    「……痛くはない」
    「そっか。よかった」
    「ごめんね」
    「……ああ」

     一瞬ヒヤリとしたが、どうやら許しは得られたようだ。ディノは息をするように危ない橋を渡ることがあるのが本当に怖い。その細くてよく見えない橋を綺麗に渡るのが本当に上手い人間なのだと改めて感心した。

    「早速だが、ディノ――寝ている方のディノ。お前の身柄はHELIOSで預かることになった」
    「お前はいつも言葉が固いんだってブラッド。あー……そっちのディノ。保護みたいなもんと思ってくれていい」
    「……保護?」

     よいしょ、と聞こえてきそうなほどだるそうに体を起こしたディノ(仮)は、やはりディノとよく似た、というか全く同じ顔だった。その上で、ディノがしそうにない表情をするのだから面白い。起きたことで痛むのか、片手で頭を押さえながら彼はきょろきょろと周囲を見回す。

    「保護の待遇に関してはいろいろ条件があるけどね。そっちのディノくん、自分の状況が分かる?」
    「サブスタンスの力で俺がディノ・アルバーニから分かれて一時的に独立した。この体は――サブスタンスがディノ・アルバーニの体をコピーして再現したものとか、そんなところだろ。……ああ、俺自身の記憶は、たぶんディノと入れ替わりで途切れたんだろうな、そこまでは分かる。イクリプス……あれは、どうなった?」
    「……まだ敵として、対立してる。俺自身はさっぱり足を洗って、今はヒーローやれてるよ」
    「……そうか」

     ディノ同士、にしか通じない電波でも流れているのだろうか、そのやりとりだけでディノ(仮)の空気が少し緩んだ。その時、横から口を挟んだのはキースだ。

    「なあ、まず……そっちのディノ。早速だが、一つ答えてくれ。今のお前に敵対の意思はあるか?」
    「――ある、と言ったら?」
    「先に答えろ」
    「…………ない。今の俺はシリウスによる支配は受けていないし、俺自身はHELIOSに対して恨みや敵意は持っていない」

     降参するように小さく両手を挙げて、静かにはっきりと彼は答えた。
    ない、と言い切った声色には文字数以上の情報量が込められていて、彼の内面をそれだけで知れたような気がした。よし、と満足したキースは自分の仕事が終わったとばかりにブラッドに目を向ける。ぱたん、と手を降ろした彼はそれを観察するように見つめていた。

    「それが聞ければオーケーだ。文句はねえよな?」
    「ああ」
    「もちろん!」
    「うんうん。受け答えがしっかりできてるし、存在もはっきりしてるから大丈夫そうだね。自分の状態に関しても理解が早い――頭の回転が速いのはさすがディノくんだ。それでね? 君が得たその身体、結構ちゃんとした人間のつくりだったんだよね。たぶん、食事をしっかり摂っていれば……1週間は持つかも」
    「1週間……そんなに、か」
    「そんなに、だよ。あのサブスタンス、結構強い力を持っていたみたいでね。といってもディノくんに確保されるときにその力を君を作ることに多く使っちゃったみたいで、もう残り少ないんだけど……まあそれはもう仕方ないとして」
    「そうなんですか!? しくじったな、すみません……」
    「いいよ――とは軽々しくは言いづらいけど、仕方ないものは仕方ないからね。あはは」
    「――話を戻す。その間、もちろん……そっちのディノ、お前を放っておくわけにはいかない。だからその間、キースの言うところの保護をする」
    「……そうか」

     寄り道をしながらもさくさくと進む話の間にフェイスが割り込む隙はない。退屈でカップに口をつけたが、そういえばもうないんだった。残しておくべきだったか――と思ったが、残っていたとしても冷めてしまってあまり美味しくはないだろうことにすぐに思い至った。ふと目を向けたらちょうど博士とぱっちり目が合い、いる? と向けられた微笑みに頷いて返し、ああそうだ、と付け加えた。

    「お願いします。あと……えーと、そっちのディノにも。あの雨、結構冷たかったでしょ」

     片手で示すように親指と目線をディノ(仮)に向ければ、鋭いスカイブルーはフェイスをじっと見つめ返した。

    「えっと……なに? やっぱり怒ってる?」
    「……保護されて俺がしばらくここにいるなら、名前は分けた方がいいだろ。……ゼロ、だったか。あれでいい」

     しん、と五人まとめて黙りこくってしまい、新しいカップを出したノヴァが棚を閉めるぱたん、という音がやけに大きく聞こえた。沈黙を遮ったマシュマロ入れる~?と意図したのだろう博士の緩い声にさっきと同じのでお願いします、とこちらも意図して軽薄な声を返す。そんなフェイスの声で小さな四人の空間は音を取り戻し、それから気を取り直して先程の彼の言葉に異を唱えたのは、おそらく『ゼロ』の名付け親だろうブラッドだ。

    「あれは、……『イクリプスの一個体』に対して仮でつけたコードネームみたいなものだ。ディノ……たちにとって、あまり気分のいいものではないだろう」
    「俺は別に。言葉に困りながらそっちだのあっちだの言われるよりはずっと分かりやすくていい」
    「オレたちが気分のいいモンじゃねえんだよ。落ち着かねえ」
    「名前なんかどうでもいいだろ、ゼロにするか今すぐ適当に決めるかしてくれ。いや、それよりも先に聞くこと――することがあるんじゃないのか……?」

     困惑した彼の声にそうだぞ、と同意したのはディノだ。その一言に目を少しだけ見開いてぐっと口をつぐんだディノ(仮)は酷く緊張した面持ちで同じ顔へ目を向けた。フェイスはその表情を何かに例える術を持ち合わせていないが、彼が期待と不安に揺れている事だけは分かった気がした。
    同じ色に見つめられたディノは、少しだけ真面目な顔をしてからぱっと春の花のように笑って、冷たい彼の手に触れる。わ、つめた、と驚いてから一言。

    「そっちの俺、マシュマロは入れる?」
    「………………入れない」
    「だそうです!」
    「おっけ~」

     元気なディノの声に呑気に答えたノヴァの声に、フェイスも含めた四人がぽかんと口を開いた。キースはともかくブラッドのこんな顔は珍しくてつい笑ってしまう。しかし、ディノも何もわかっていないわけじゃないらしく、今度こそ真面目な顔でディノ(仮)に向き直る。同じふたつの顔は、揃って少し固い。

    「そっちの俺、――ゼロ」
    「おい、ディノ」
    「キース。俺がよくてゼロもいいんだから、いいだろ。……ああいや、悪い。二人には嫌な思いさせるかもだけど……、全部隠すみたいにするのも、違うと思うから」
    「…………そうかよ」
    「……」

     明らかに納得いっていないだろう二人の気持ちを完全に察することはフェイスにはできない。今でこそフェイスもそれなりにディノに懐いてはいるものの、長年友人だった者に突然裏切られたわけでもなければ、死んだと思っていたわけでもない。そもそも直接その時の彼――イクリプスのゼロとは顔を合わせていないのだ。かなりショックだっただろう二人の気持ちは想像するだけして、まあこればっかりは時間をかけて慣れてもらうしかないだろうと一旦切り捨てた。
    なるほど、自分は帰ってもいいだろうと先程まで思っていたが、この場で自分が求められているのはこういう『ゼロ』に対してほぼ他人としての役割だったのかもしれない、と思い至った。

    (……やっぱり面倒だったんじゃん)

    「――アハ。まあ、本人がいいって言ってるんだし、分かりやすくていいんじゃない。みんなネーミングセンス良くなさそうだし。迷走した結果ピザマンとかになるよりずっといいと思うよ?」
    「……言われてみればぱっと別の呼び名が思いつかないのは事実だな。一号二号や分身、……コピー……くらいしか思いつかないし、そう呼びたくもない」
    「……ダメだな。オレも碌なの浮かばねえ……いまさら別に名前を付けるよりはいいか」
    「はい決定! いやあ、名前か。盲点だったな。なんで誰も先に名前の事考えなかったんだろう」
    「いらない会議に時間をかけるなよ……」

     ディノ(仮)――もといゼロはそう呟き、タイミングよく戻ってきたノヴァからココアを受け取った。不慣れなのだろうか、ふう、と一息で冷ましてから探るように口を付けたゼロの姿はかつてそんな悲劇の象徴だったとは思えないほど落ち着いているし、むしろなんだか可愛らしく思えてくる。まるで――そうだ、人間初心者、とでも言えるだろうか。
    フェイスも二杯目のココアを受け取り、先程と同じ甘さに顔を綻ばせた。こんなに使ってしまってジャクリーンの分が減ってしまっていることが心配になったが、まだたくさんあるから大丈夫だよ、と父の顔をしたノヴァに杞憂だったと会釈を返した。
     ほ、と甘さと温かさにゼロの眉間の皺がやっと緩み、それを待っていたかのように再びブラッドが軸となり話を進めることを宣言した。ノヴァがおれがやるとどうしても話が長くなっちゃうからね~と笑ったのに誰も否定もフォローもしなかった。ええ、事実ですので。

    「先程、保護の待遇には条件があると言っただろう。その件だ」
    「ああ」
    「まず、誰にも危害を加えない事。破られ次第危険物と判断され、お前を破壊することになる。――まあ、これは問題ないだろう。
    次に、研究部に協力すること。サブスタンスによって生成された人間――を模倣した肉体は貴重なサンプルらしいからな。もちろん人道的な範囲でだが、実験や検査による研究に協力してもらう。協力を了承すれば、ヒーローの同伴を条件に多少移動の自由が得られる」
    「しなければ?」
    「行動範囲が特定の研究室と、あの部屋のみになる。覚えはあるな?」
    「……ああ、あそこか。了承するなら?」
    「ヒーロー……ルーキーなら二名、それ以外なら一名の同伴時、研修チームの居住階と研究部のある階、そこへの通路の立ち入りを許可する。――研究部に関しては、研究のためにこちらから呼び出す形になるから許可とも少し違うがな。それと、必ずメジャーヒーロー一名以上同伴、を条件にトレーニングルームへの立ち入りも許可できる」
    「……随分と至れり尽くせりだな」
    「逆に言えばそれだけだ。食堂や図書室には行けない」
    「空中庭園にもね。あそこは眺めがいいから連れて行きたかったけど、流石に屋外は問題があるらしくて」

     きっとそれは屋外であることだけが問題ではない。今の話を聞くに、たとえば居住区からバルコニーへ出ることは禁止されていないのだ。禁止と言わない、ということは許可されていると考えていいだろう。
    ならば――慰霊碑。それを彼に見せないことが本当の目的だろうことは、ゼロが目を覚ます前に簡単に彼についての話を聞いただけのフェイスでも理解できた。先程至れり尽くせりとゼロ自身が言っていたが、本人が思っている以上に彼は気を配られている。

    「質問は?」
    「了承した場合、だ。自由行動中、どうしてもヒーローの同伴が得られない場合は? それと俺の移動制限なんてどう管理する。自分で言うのもなんだが、俺は脱走歴があるぞ」
    「検討に前向きで何よりだ」
    「ブラッド、この取り決め作るときノリノリだったぞ」
    「キース」
    「博士~ここタバコ吸ってもいいか?」
    「ダメで~す」

     わざとらしく話題を逸らしたキースに、ブラッドははあ、と長めのため息をついた。なんとか要点をまとめているとはいえ、一番最初の会話からかなり時間が経ったこのタイミングで面倒な話だ、さすがに疲れてキースが茶化したくなる気持ちも少しわかる。ディノから分かれたとはいえ彼にとって初めて聞く単語も多いだろうに、ちゃんと話を聞いているゼロは真面目なのだろう、自分ならもうソレデイイデースと投げているかもしれなかった。

    「まず、不測の事態で突然ヒーローがお前の監視をできなくなった場合は直ちにジャック02が迎えに行くからじっとしていろ。その後はしばらくあの部屋か研究室にいてもらうが――誰かが迎えに行く。そもそもだが、お前に関する研究はルーキー研修の日程と合わせるからそうなることはほぼないと考えていい」
    「……監視、というか警護だなそれ」
    「似たようなものだろう。行動監視についてはそういうシステム――GPSと思ってくれていいが、それがある。ヒーローと連動する機能も付いたものがな」
    「おれが作りました! 自信作です! さすがにシステムを見直しました!」
    「居住区とトレーニングルームへの立ち入り許可は何の意味がある。特にトレーニングルームの意味が分からない」
    「お前はディノだ。きっとすぐに体が動かしたくなるだろう? ここでは多少対人戦をしたって構わない、そのためのメジャーヒーロー同伴だ」
    「はーい、俺の自己申告です!」
    「ストレスが溜まって暴れられるよりはマシだ――という建前だな」
    「居住区は?」
    「……自由がないと何かと面倒だろう、単にいるかと思った。まあ研究の協力に了承せずとも、あの部屋にそれなりの遊び道具でも何でも持ち込んでやることはできるが」
    「お前らのそのおもてなしはいったい何なんだよ……」
    「――で、どうする。ゼロ」
    「いや、トレーニングルームのくだりを聞くに、俺が頷くことを前提に話を進めてるだろ……」

     ご名答だ。ゼロが目を覚ます前の四人の会議は、八割方の内容がゼロが行動することを前提にしていた。確かに今のゼロに危険がないとは言っても甘すぎないか、なんて思っても(絶対に面倒だから)言わなかったけれど、本人はやはり気になるらしい。野生の勘とも言える直感力で物事を進めることが多いディノからこの人格が生まれんたんだな、と思うと妙に面白くなった。
     はあ、とゼロのため息がひとつ。

    「……特に断る理由もない。自由行動に興味があるわけではないが――この体なんかで良いなら好きに調べればいい」

     そうして、ゼロの割と自由な保護が決定したのだった。


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