頭上に広がる綺麗な青空。
それとは正反対に、オレの心は曇り空もいいところだった。
普段は気持ちの良い太陽の光すら、淀みきったオレには刺激が強すぎて眩しい。つらい。
「はぁ~……」
気付けば口から溜息が漏れて、傍らにいるアルロー教官が呆れ気味な声を出す。
「おいおい、朝っぱらから辛気臭ぇな。どうしたよ」
顔を向ければ、訝しそうな眼差しでオレを見つめている教官の姿。
……アルロー教官なら、話してもいいかなぁ……
オレの現状を少なからず把握してくれているのもあるけど、やはり誰かに相談したり、意見を聞きたかったのかも知れない。実際、オレひとりで何日か悩んでいても、事態は全く好転していないのだから。
「じ、実はですね……」
藁にも縋る思いで、オレは教官にぽつりぽつりと語り始めた。
「アラタに避けられてるだぁ?」
「はい……」
沈痛な面持ちのまま、アルロー教官に頷いてみせる。しかし教官は怪訝な様子で、
「おまえの気のせいじゃねぇのか? アラタの奴、だいぶ懐いてただろ」
「気のせいだったらどんなに良かったか……」
はぁ、とまた漏れる溜息。軽く肩を竦める教官。
「……で? 一体いつからなんだよ」
「ええと……この前アルロー教官と飲んで、ひどく酔っ払った次の日からですね……」
数日前の夜、アラタさんに宿舎の側まで送ってもらった、あの時。
何となくだけど……元気がないように見えたから、心配になったんだ。
その懸念が拭えないまま、オレの手を躱して、小走りに去って行ったアラタさん。その翌日から彼の様子が変わり始めた。
──明らかにオレとの接触を、会話を拒んでいる。
狩りの誘いを始め、向こうから声を掛けてくれる事も激減した。おかしいと思いつつもオレには原因がサッパリ分からないから、対処のしようがなくて。ほとほと困り果てていたのだが──
「おい。噂をすれば……だ」
アルロー教官に促された方角を見れば、アラタさんの歩いている姿が目に入った。あの足取りからすると、騎士団指揮所にでも行くのだろうか。
と、そこで。オレ達の視線に気付いたらしく、こちらに顔を向けるアラタさん。
彼はオレとアルロー教官を──いや、正確にはオレを見た途端、表情を強張らせたのが分かった。かと思えば軽く頭を下げ、逃げるように指揮所の階段を登っていく。オレ達はそんなアラタさんの後ろ姿をしばらく黙って見つめていたのだが、やがてアルロー教官が口を開き、
「……確かに妙だな」
「でしょう!?」
しかしアルロー教官は何故かジト目を向けてきて、
「おまえ、酔った勢いでアラタに何かしたんじゃねぇだろうな」
「え」
「あいつが何の理由もなしにあんな態度取るかよ?」
そう。
教官の言うとおり、そこはオレも疑問に思っていた。
基本的にアラタさんは礼儀正しい人だ。それに少し前までのアラタさんなら『おはようございます!』という元気な声と共に駆け寄ってきたり、もしくは笑顔で大きく手を振り返してくれたんだよな。それが今じゃ……
「いやいやいや! ちゃんと記憶はありますし、何よりあの状態じゃアラタさんにどうこうできませんって……」
だけどアルロー教官に言われて、ちょっと不安になってきた。
オレが覚えていないだけで、本当に何かしてしまったのでは……!?
例えば、人気の無いところで彼に迫ったとか……
──いや、ない。
もしそうだとしたら、アラタさんからの拒絶はもっと強い筈だろう。
避けられてるとは言ったが、声を掛ければ一応挨拶は返してくれるし、必要とあらば話だってしてくれる。ただ……それが必要最低限の、とても事務的な会話なだけで。雑談に発展するどころか、オレとの話を早く切り上げたそうな雰囲気すら感じていた。
実際にオレが何かしてしまったなら、それについて謝る事もできるのに。よく分かりませんがすみませんでした! なんて謝り方、不誠実にも程があるし……下手したら逆に怒らせてしまうかも……
こうなったらもう、アラタさんに直接聞いてみようか。そんな結論に至った矢先だった。キュリアにやられた怪我が元で、フィオレーネさんが倒れるという非常事態に陥ったのは。同時にエルガド内も何だか慌ただしくなってきて、アラタさんとゆっくり話をするような余裕も無くなってしまったんだ。
提督やバハリさん、タドリさんと話し合っては真剣な顔で頷き、連日のようにどこかへ出かけていくアラタさん。彼の事は気になるし、好きだという気持ちは今でも変わってないけれど──
一旦オレの悩みもお預けにせざるを得ない。そんな状況だった。
熱にうなされているフィオレーネさんのタオルを、そっと替えて。オレはベッド脇の椅子に腰を下ろす。
つらそうだな、フィオレーネさん……
荒い息を繰り返す彼女を見ていると、薬の材料を集めに奔走しているアラタさんの事をどうしても考えてしまう。今頃、どこでどんなモンスターと戦っているのか。
……あの人も、怪我をしたりしないといいけど。
アラタさんは強いから、余計な心配かも知れない。でも彼が今のフィオレーネさんみたいに苦しんでいる姿を想像すると──
「……っ……」
膝の上で、こぶしを強く握り締める。
なんでオレは彼の隣に居られないんだろう。
大切な人を護る事もできずに、何が騎士だ……!
もどかしい日々がしばらく続いていたが、アラタさんの奮闘により治療薬は完成し、フィオレーネさんも一命を取り留めた。同時にメル・ゼナの居場所が捕捉され、休む間もなく討伐に向かうアラタさんとフィオレーネさん。
オレやエルガドの人達もふたりの事を心配はしたけれど……それ以上にふたりへの信頼が厚く、きっと大丈夫だろうと彼らの背を見送り、そして彼らもオレ達の期待に見事応えて、メル・ゼナを倒して帰ってきたんだ。
王国の悲願だったメル・ゼナの討伐に沸き上がるエルガド。しかしガレアス提督は、まだ何かを気に掛けているようだった。時折、難しい顔をして考え込んでいる提督の様子に、オレも嫌な予感を覚えたのだが──その予感は的中する事となる。
深淵の悪魔、冥淵龍ガイアデルム。
おとぎ話で語られていた存在が、まさか本当にいたなんて。
このガイアデルムとの戦いに直接赴くのは、もはやエルガドでトップクラスの実力者だと誰もが信じて疑わないアラタさん。そしてメル・ゼナの時に続いて、今回の同行者もフィオレーネさんに決まった。
正直言って、オレもアラタさんと一緒に行きたかった。少しでも彼の近くで手助けがしたかったけど……オレの個人的な感情で場を乱す訳にもいかない。オレはオレにできる事を、自分の役割をしっかりこなそう。そんな風に気持ちを切り替えて、大型船に乗り込んだ。船からの援護が、彼への力添えになると信じて。
海上を進む最中、あいつならきっと大丈夫だ、とオレの肩を叩いてくれたアルロー教官。
どうやら思いっきり顔に出ていたようで、ちょっと恥ずかしい。
教官の心遣いに感謝しつつ、はい、と頷き、オレは所定の場所に着く。アラタさんの無事を祈りながら。
* * *
……頭が痛い。
ちょっと飲み過ぎたかなぁ……
鈍い痛みに呻き声を上げながら、ベッドで寝返りを打って。
オレは昨夜の事をボンヤリ思い返していた。
深淵の悪魔──ガイアデルムは、アラタさんとフィオレーネさんの活躍により、無事討伐された。オレも大型船で撃龍槍の射出アシストとかやってたんだけど……指示を出す提督の姿がカッコ良くて、見惚れそうになっていたのはナイショである。オレもいつか提督みたいに『撃龍槍! 装填準備!』なんて言ってみたいなあ……
そして、ガイアデルムの討伐後。アラタさん、フィオレーネさんの両人と凱旋したオレ達は、エルガドの皆に盛大に出迎えられ、そのまま祝賀会へと突入したんだ。そこにはカムラの里の人達もゲストとしてやって来ていて、船を下りるなり彼らに囲まれたアラタさんは、最初こそビックリしていたけれど、とても嬉しそうでもあった。
せっかくの団欒を邪魔しちゃ悪いよな、と遠目にアラタさんをチラチラ見ていたら、ルーチカさんやアルロー教官からしこたま酒を呑まされ、気付けば翌朝──しかも自室のベッドの上、という訳である。記憶は見事に飛んでるけど、何とか自力で戻ってきたようだ。
頭痛を堪えながらひとまず窓を開け、部屋の空気を入れ換える。ふわふわとカーテンを舞い上がらせる風は少しひんやりしていて、起き抜けの身体に心地良かった。
エルガド内でも少し小高い位置に建っているこの宿舎は、窓から辺りの様子が一望できる。
外の空気を吸いながら何気なく視線を巡らせていると、港に停泊している船のひとつが出港準備をしているのが見えた。
あれは……アラタさんの部屋がある船だ。
気付くと同時に、大きく跳ね上がるオレの心臓。
そうだ。
メル・ゼナやガイアデルムの件が片付いた今、エルガドに招致されたアラタさんの役割も終わったという事ではないだろうか。元々それらが彼の滞在理由だった訳だし、問題が全て解決したなら、エルガドから引き上げるというのもあり得なくはないが──
え、でも、昨日の今日で、そんないきなり!? 普通、お別れ会とか何かあるんじゃ!?
いくらなんでも性急すぎる。きっとオレの思い過ごしだ。
……けど、こうして悩んでいる間にも本当に船が出航してしまったら?
彼とギクシャクしたまま、こんなモヤモヤした気持ちだけを抱えたまま、会えなくなってしまったら──
「……っ!」
オレはいつもの鎧を着込むどころか、ほぼ寝起き姿のシャツとズボンのままで部屋を飛び出す。
廊下ですれ違ったルーチカさんが驚いた顔でオレを見て、声を荒げた。
「ジェイ!? 貴方またそんな格好で──」
「すみませぇぇぇぇん!!」
ルーチカさんには悪いが、足を止めている暇はない。一刻も早く、アラタさんのところに行かなくちゃ。
全力ダッシュで船に向かってみれば、船員達がまだ積み荷を運び込んでいる最中だった。間に合った、と慌てて階段を登り、船室の扉を勢いよく開け、叫ぶ。
「アラタさんっ!」
以前なら扉をノックして、入室の許可をとっていたけれど。今はそこまで頭が回らなかった。そして中にいたアラタさんは、目を丸くしてオレを見つめ、
「……ジェイさん?」
ぜいぜいと息を切らせているオレを心配してくれたのか、こちらに少し近付いてくる。オレも室内に足を踏み入れ、扉を閉めた。
「い、一体どうしたんですか? 俺に、何か……?」
相変わらず、どこか怯えたような表情をしているアラタさん。
こうやって彼と二人きりで向き合うのも、何だか久しぶりだなあ……
妙な感慨深さを覚えつつ、一度深呼吸をして息を整える。
どうする?
何から話す?
アラタさんの態度が急変した理由は、勿論聞きたい。でも残された時間は僅かかも知れないし……
……よし、決めた。
「アラタさん、カムラの里に帰るんですか……?」
「え? あ、は、はい……」
小さく頷く彼を見て、やっぱり……と思いつつも落胆してしまう。
一瞬『行かないで下さい!』って泣いて縋り付きそうになったけれど。別れ際はせめて男らしくいこう。頑張れ、オレ。
「オレ、あなたに伝えておきたい事があって」
彼を正面から見据えると、綺麗な空色の瞳が不安げに揺らいでいた。
こんなの一方的で自己中で、アラタさんにとっては迷惑なだけかもしれない。でもオレにとっては必要な事なんだ。だから。
「……好きです」
静かな部屋の中。
オレの告白を聞いて、アラタさんが息を呑むのが分かった。
「アラタさんの事が、好きです。その……男同士で、って引かれるかも知れませんが……オレ、あなたの事が大好きです!」
言った。
とうとう言ってしまった。
アラタさんは驚いた表情のまま黙ってオレを見つめていたが、やがて声を震わせながら、
「……ほ、本当……ですか……?」
信じられない。
そんな心境が表れているような表情で、言葉を続ける。
「ジェイさん、他に好きな人、いたんじゃ……?」
……はい?
今度はオレが固まる番だった。
あまりに予想外の質問を投げかけられてフリーズしてしまったが、慌ててそれを否定する。
「オレは! アラタさん一筋ですっ! アラタさん以外に好きな人なんていませんよ!」
ここまで言っても、アラタさんはまだ混乱している様子だった。
それはまあ、そうだろう。逆の立場だったら、オレだって今のアラタさんみたいになると思う。だけどこの一世一代の告白を、ウソや冗談で片付けられてしまったら堪らない。
「好きです、アラタさん……!」
もう一度オレが繰り返すと、アラタさんはびくりと身を竦ませた。
本気だという事が、分かって欲しくて。
オレは彼の側へ歩み寄り、手の届きそうな距離まで近付くと、腕の中へ抱き寄せる。
嫌がられるかな、抵抗されるかなって思ったけど……不思議とアラタさんはじっとしてくれていた。その安堵感から、ついつい彼の身体を強く抱き締めすぎてしまい、
「……さん、ジェイさんっ……」
くぐもった声を上げ、オレの服を軽く引っ張り始めるアラタさん。
「く、るしい、です」
「あっ! す、すみません!」
謝罪して、慌てて力を緩める。するとアラタさんはホッとしたように息を吐き、
「……あの、えっと……」
落ち着きなく彷徨っている、彼の視線。先程のオレと同じく、何から話そうか迷っている様子だった。
……もしかして、上手く断る口実を探しているのかな。
アラタさんは優しい人だから、なるべくオレが傷付かないで済む方法を考えているのかも……なんて思っていたら、
「俺、カムラには一旦帰りますけど……またエルガドに戻ってきますよ?」
「……え?」
「提督やバハリさんに、まだしばらく協力してほしいって言われてるんです。キュリアの調査を続けたいみたいで……」
少し困ったように笑うアラタさんを前に。
オレは血の気が引いていき、だらだらと脂汗が滲み始めた。
あああああああああああああ。
やってしまった、と大後悔しても後の祭りである。
お前は少し落ち着きを持て、って提督から今まで何度も言われてたのにぃぃぃぃ……!
「すっ、すみませんでした!」
オレはアラタさんから身を離し、ほんの少し後ずさってから、ぱん! と両手を合わせて頭を下げる。
「き、聞かなかった事に……いや、忘れてください! 今のナシで!」
そもそも、もう会えないと思ったからこそ本音をぶっちゃけたのに。それで向こうから振ってくれたら、すっぱり諦められるかなって……
だけど今後もアラタさんがエルガドに滞在するなら、お互い気まずくなるだけだ。次こそ本格的に無視されてしまうかも……
恐る恐るアラタさんの顔を見れば、何故か拗ねたような表情で──いや、実際に頬を少し膨らませながら、ふいっと横を向き、
「やです」
「そんなぁ!?」
返ってきたのは、にべもない答え。
ま、まさかエルガドのみんなに笑い話として言い触らすつもりなんだろうか。それか強請のネタにでも……!?
いや、うちの姉じゃあるまいし。アラタさんに限ってそんな血も涙もない事はしない筈だ。
兎に角ご勘弁を、と土下座も辞さない覚悟でいたら、視線を逸らしたままポツリと呟くアラタさん。
「だって、俺も好きなんです。ジェイさんのこと」
…………
数秒間、たっぷり沈黙してから。
「えっ」
オレの口から出たのは、とても間抜けな声だった。
さっきのアラタさんの言葉を、もう一度頭の中で反芻する。
『俺も好きなんです。ジェイさんのこと』
確かに、そう言っていた。本当ならこんなに嬉しい事はない、が……
まさか過ぎて信じられないというか、逆にアラタさんから担がれているのでは……? という疑いまでもが頭を過る。大喜びした直後に『ウっソで~す!』なんてやられた日にはマジで泣くぞ、オレ。
「……ええと。オレの言った『好き』というのは、友人としてではなく、その……」
正式に恋人としてお付き合いしたいとか、そういうのなんですが。
彼の顔色を窺いながら伝えると、アラタさんは一度頷き、
「俺も……ジェイさんとは男同士だからって、悩んじゃって。それにジェイさんには、他に好きな人がいると思ってたんです。だから迷惑が掛かる前に、諦めようとしてたんです……けど……」
やっぱりダメでした、と苦笑する。
さっきも気になったが、オレに好きな人がいるっていうのは、一体どこから出てきた話なんだろう。
いや、その辺りは後でアラタさんから聞き出すとして。先に確認しておきたいのは──
「それじゃオレ達、両想いだって……事ですか……?」
「……そ、そうみたいです、ね……」
『…………』
お互い顔を見合わせた後。オレ達はそのまま黙り込んでしまった。
オレは勿論、アラタさんも何て言ったらいいのか分からなかったんだろう。
気まずさと恥ずかしさが入り混じった空気の中、オレは口を開き、
「……アラタさん。ギュッてしても、いいでしょうか……?」
すると彼は一瞬キョトンとした表情を浮かべ、
「さっきも、前に密林で泊まった時も、ジェイさんから抱き締めてくれたのに」
今更聞くんですか? と少し可笑しそうに笑った。うっ、かわいい。
「そ、それじゃ失礼して……!」
今度は力加減に注意しながら、アラタさんの身体を抱き締める。
まだ夢を見ているような気分だった。
ほぼ諦めかけていたのに、まさか両想いだったなんて。嬉しい。嬉しすぎる。
腕の中のアラタさんに視線を向けると、こちらを見上げている彼と目が合った。
一瞬、妙な間が訪れて。思わずごくりと喉が鳴る。
……キス、しちゃおうかな。
今ならいけると踏んで、顔を近付けようとしたのだが──
「あ、あのっ」
アラタさんの声に、オレの動きもぴたりと止まる。彼はオレの眼前で照れ臭そうに笑い、
「里で改めて一連の報告をしないといけないので、これから何日かカムラに帰りますけど……エルガドに戻ってきたら、ジェイさんの部屋にお邪魔してもいいですか?」
「オレの部屋に……?」
「はい。話したいこと、いっぱいあるんです。今までのこととか、その、いろいろ」
それはオレも同じだった。
アラタさんに聞きたい事も話したい事も、たくさんある。だから──
「ええ……勿論です!」
いつでもお待ちしてます! と頷けば、アラタさんは嬉しそうに微笑む。
憂いは全て吹き飛んだ。
アラタさんがいない数日間は正直寂しいけれど、その後を思えば乗り切れそうだ。
でもアラタさんがエルガドを出るまで、もうちょっとだけこのままで居たくて。彼の事を少しでも記憶に留めておきたくて。
オレは彼の頬に片手を添え、今度こそ唇を重ね合わせる。
僅かに目を見開くアラタさん。だけどオレがそのままキスを繰り返していると、やがてアラタさんの方からも、オレの首筋に両腕を回し、背伸びをして顔を寄せてきた。
そんな彼の身体を掻き抱きながら。
部屋のドアをノックされるその時が、今から楽しみでならないオレなのだった。