いつか恋を描く日 生徒たちで賑わうキャンパスの中を泳ぐ様に次の講義のため別棟へ向かう玄武は不意に手を引かれた。後ろを振り返ると赤毛を逆立てた見知らぬ生徒が輝く瞳で自分を見ている。
何の用だ、と問うより先に引かれた手をギュッと痛いくらいに強く握られた。
「お願いだ!ヌードモデルになってくれ!」
この広いキャンパス全体に聞こえそうな程のよく通る大きな声でとんでもない頼み事をされた玄武は恥ずかしさに我を忘れ彼を殴って逃げ出した。
ずっと綺麗な人だと思っていた。
垂れ目がちの灰色の瞳は真っ直ぐに前を向いており、長い手足は細くて白くて、それでいて筋肉が均等についている。
本棚から本を取り出す所作も無駄がなく、彼に選んでもらえる本が羨ましいと思った。
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