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    keram00s_05

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    keram00s_05

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    某テーマパークに来た雨玄♀。ぬいぐるみを買ってあげる☔️さんネタ。

    #雨玄
    yuXuan

    可愛い彼女に持たせたいもの。 マフラーをしていても少し肌寒いがその分空は抜けるように青かった。想楽からは平日だろうと来園者は多いとは口酸っぱく言われていたため覚悟はしていたが、確かに平日でもこんなにも人がいるのかと面食らった。しかし、玄武に言わせれば「空いている方だな。前にテスト休み中に朱雀と一緒に行った時は何をするにも1時間は待ったぜ」とのことだ。
     幼い頃に妹の誕生日にもう一方に行った記憶はあるが、こちらは初めてだ。より海を感じる景色に雨彦は物珍しさからゆっくりと歩いて眺める。そして行き交う人々を見ていると不意にあることに気付き、隣の玄武に尋ねてみた。

    「黒野、皆あれは何を抱えてるんだい?」
    「ああ、あれはここのマスコットキャラクターだな」

     主に女性客がクマやネコなどのぬいぐるみを抱えていたり、カバンにつけているのを見て雨彦は不思議に思ったようだ。

    「マスコット?あそこで踊っているネズミじゃないのかい?」

     そう尋ねる雨彦の指差す先には客船前のステージで踊っている有名な彼がいる。世界一有名なキャラクターを「ネズミ」と言ってしまう所に雨彦らしさを感じつつ、「こっちはこうなんだ」と答えた。

    「そうなのか。お前さんは持ってないのか?」

     そう来るとは思っていなかった玄武は単純に驚いてしまった。

    「え?ああ。それに俺はガラじゃないだろ」

     小さな頃に家族で行ったときに買ってもらったというソレを抱っこしている朱雀はとても可愛らしくて大好きだが玄武は自分も欲しい、ぬいぐるみを持って中をまわりたいとは考えたこともなかった。
     ガラじゃないで片付けたのがいけなかったのか雨彦はぬいぐるみを売っているところを見てみたいと言い出してしまった。
     お土産の店までは把握できていない玄武だったがこの前朱雀と一緒に来た時、朱雀のぬいぐるみ用の服を買いに行った店が近くにあることを思い出しそこに連れて行くことにした。

    「ほう、色んな種類がいるんだな。これは、亀か?やっと海らしいマスコットを見たな」

     可愛らしい外観の店に合わせたようにぬいぐるみが所狭しと並ぶ中を見渡し雨彦は楽しそうだ。片っ端から、これは亀、こいつが一番多いクマ、隣がそのメスか、と玄武に一つ一つ確認し始めた。
     雨彦アニさんはもしかして意外と可愛い物好きなのか?この間も帰省した土産と言って可愛いシカのイラストがプリントされたお菓子をもらったな。
     玄武は雨彦の意外な一面を発見したのではないかと思っている一方で雨彦はあるぬいぐるみを見てピンと来た。

    「黒野、せっかく来たんだ。お前さんにプレゼントがしたい」
    「え?別に良いよ。チケットと車だけで十分だぜ」

     世間の値上げの影響をモロに受け学生の財力では非常に高価になりつつあるチケット代を出してくれただけでもありがたいと言うのに、雨彦は車まで出してくれた。その上にプレゼントをもらうだなんてあまりにも甘え過ぎている。遠慮する玄武だが雨彦は引き下がってくれない。

    「デートなのにチケット代と車を出さない甲斐性無しかどこにいるんだ。それにお前さんこそ今日は俺に合わせて乗り物を控えているだろ」

     逆に指摘されて玄武は言葉に詰まる。確かに朱雀と来た時や事務所の高校生メンバーで来た時はもっと沢山アトラクションに乗って園内を駆け回っていた。それに対して今日はメリーゴーランドなどのゆったりした物を二、三個乗ったくらいだ。

    「だってそれは初めて来たアニさんに合わせるべきだろ」

     お互いがお互いを思いやって一歩も引かなくなることは、二人の中ではよくあることだ。もちろん大人の雨彦はすでにこうなった時の対処法もきちんと身につけている。

    「言い方を変えよう。俺は恋人のお前さんにプレゼントをしたい。彼女に自分との思い出になる物を与えたいのはおかしくないだろ?現に今日、誕生日プレゼントであげたスカートを履いて来てくれる彼女ならなおさらあげたくなる」
    「え?あっ!こ、これはたまたまだ!」

     玄武はコートの前をさっとしめて水色のフレアスカートを見えなくした。本人はあくまでも偶然を主張するが、咲にこのスカートを使ったコーディネートがしたいと相談したことを知っている。

    「だとしても綺麗に着てくれてるんだろ。なら新しい思い出品も大切にしてくれるって思えるもんさ」

     シワも汚れもないことを見抜いている雨彦にはどうやっても敵わないようだ。玄武はプレゼントをありがたく受け取ることにした。

    「さ、誰が良い?俺としてはコイツがお前さんみたいで似合うと思うんだが」
     そう勧めてくる雨彦の右手には淡い紫色のウサギのパペットがはまっている。

    「アニさんは本当に俺にうさぎを勧めるよな」
    「お前さんのこれがどうも連想させるのさ」

     パペットをつけていない方の手で玄武のぴょんと立った2つの逆毛を撫でる。神経は通ってないはずなのにどこかくすぐったい。

    「じゃあ、その子に…」

     まだぬいぐるみを抱くことに気恥ずかしさが残る玄武は手のひらくらいの大きさのぬいぐるみを見つけた。これならボールチェーンが付いていてカバンに付けられそうだ。抱っこして園内を歩くより俄然ハードルが低い。
     雨彦にこれが良いと伝えようとすると、彼は何かを見つけたようで玄武の肩を叩き壁際のレジを見ろと指差した。

    「せっかくだし、レジ後ろのアレにするかい?」

     提案する雨彦の指の延長先には、小学生くらいはありそうな大きさのぬいぐるみが飾られていた。
     あんな大きいのを持っている人なんてそうそういない。少なくとも今日は一人も見ていない。そんな中でもし、買おうものならこの非日常の空気で溢れかえっている園内ですら、珍しいものとして注目の的になるだろう。

    「あんな大きいのはさすがに遠慮する。小さいので十分だ」
    「そうか。よし、コイツだな」

     雨彦は頷くと玄武がたまたま手に持っていた一般的なサイズのぬいぐるみを勝手に受け取りレジへ向かってしまった。


     楽屋に戻って来た想楽は先に撮影を終えた雨彦が幸せそうに口元を緩めスマートフォンを眺めているのを見て、尋ねずにはいられなかった。

    「何見てるのー?」
    「ああ、北村。お疲れさん。これか?この間、黒野と舞浜の遊園地に行った時の写真だ」

     嬉々として答える雨彦に想楽は、聞くんじゃなかった、と早くも後悔した。
    人の惚気話は少量であれば微笑ましいが、この男の惚気話は長いのだ。歳の離れた可愛い盛りの彼女と結ばれて嬉しいのは分かるが、目に入れても痛くないとはこのことかと思うほど彼女を溺愛している。

    「見てくれ」

     そう言ってさっと差し出されたスマートフォンの画面には恥ずかしそうにウサギのぬいぐるみを抱っこしている玄武が写っている。

    「可愛いね。買ってあげたの?」
    「ああ。黒野は恥ずかしがって小さいのにしようとしたみたいだが、俺はどうしても黒野に、この大きさのを抱かせたくてな」

     このオッサンたまに夢を叶えるために強引なんだよねーと嬉々とした雨彦に想楽は心の中で毒吐く。
     すいすいと指が動くたびに一体何枚撮ったのか、写真集でも作るのかと思うくらいに次々と玄武が画面に現れる。ファッションモデルもつとめる彼女そのものはスタイリッシュに決まっているのに、その手には可愛いに全振りしたウサギのぬいぐるみが握られており絶妙なチグハグ感がある。しかし、それは嫌な違和感ではなく見るものを微笑ましく思わせる味のあるミスマッチ感だ。

    「可愛く撮れてるね」

     素直に褒めてしまった想楽がしまったと思う頃にはすでに遅く、雨彦はまだあるぞと意気揚々とスワイプを続けた。


     とある日、母親が玄武と朱雀の女子だけでテーマパークに遊びに行きたいと言い出し日曜日に行くことにした。
     その朝、玄武のアパートまで迎えに行くと、玄武はウサギのぬいぐるみを抱いて現れた。

    「お揃いだな!」

     朱雀は嬉しくなってリュックから家から連れて来た猫のぬいぐるみをすかさず見せた。

    「もしかして、玄武」

     朱雀はこの前、玄武が年上の恋人の雨彦と、かの地でデートをしたことは当然知っている。となればこの前までなかったぬいぐるみはそういうことではないかと朱雀は気分が高揚する。すると案の定玄武はふんわりと頬を色づかせ頷いた。

    「雨彦アニさんからのプレゼントなんだ」

     ぎゅっと抱きしめ直した手はまるで雨彦にするのうに優しく強くぬいぐるみを抱いていた。
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