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    ryu_maru55

    @ryu_maru55

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    ryu_maru55

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    性癖を詰め込もうとして失敗したので没。isg愛されです。多分。

    #腐ルーロック
    rotatedLubeLock
    #未完
    unfinished

    全部最近巷で流行っているマルチバースやら並行世界やらという単語。
    サッカー馬鹿の集う青い監獄にはサッカー以外を趣味とする者はそう多くない空間で、それでもそれなりの認知はされているだろう映画。
    海外から発信され日本でも絶大な人気を誇るその映画は"マルチバース"や"並行世界"なるものを題材に更に壮大で無限な可能性を秘めた作品となり尚も勢いを伸ばしている。
    これらが流行る前であれば現在目の前で起こっている事態を把握するには大分長い時間が必要となりそうだが、今を生きる男子高校生の状況適応能力は見事なものだった。
     
    「これが並行世界にいる潔たちか・・・」
    「・・・そうみたい?」
     
    数刻前までドイツ棟で練習をしていた潔と同じ顔を持つ人間がチームメイトの前にずらりと四人肩を並べて立っていた。
     
    ************
     
    休憩となり潔がトイレに向かうと消えていった扉からこれまた潔が入ってきた。しかも見慣れぬ服を着て、だ。
    チャイナという言葉を連想させる服を着た潔はキョロキョロと観光客の様に物珍しそうな顔で視線を彷徨わせながら目の前に居るチームメイトに気付くと笑いながら手を振り、「やぁ、ここはどこかな?気付いたらここに居たんだけど」と一定の距離を取って表情とは相反する感情をこちらに向けていた。
    暫く皆が混乱の渦に陥って入るところで再度扉が開く。これまた同じく物珍しそうな顔をして入ってきたその人物も潔と同じ顔をしていることから、更に混乱の色は濃くなるばかりだ。

    チャイナ服の潔は先ほどまでいたところから瞬時に後退し、入ってきたばかりの潔に警戒心を露わにした。その警戒心を向けられた当人は私服で着るにはあまりにも派手な服を身に纏っていた。
    生地や色はシンプルにも関わらず、それを覆うように着けられた装飾品は青い監獄の隅々を照らすライトに反射してキラキラと輝く。手にはマイク。整えられた髪型。どうみてもアイドルの風貌だ。
    「え、あの人って特殊メイク?どっきり企画?」などとチャイナ潔(仮)に向かって話しかけているところを見るに、きっとそっちの職業の者だと想像がついた。
     
    「で、君たちはこの状況は分かってるの?分かってないの?ここ何処?どうしてこいつは僕と同じ顔をしているの?」
    「ちょ、ちょっと待って、分からない。俺たちも何が何だか」
    「・・・ふ~ん、嘘ではないみたいだけど、もし嘘なら」
    「ちょっと、お前もここにいきなり連れてこられたの?それにしてもその態度はあんまりだ、この子達だって同じように巻き込まれてるだけの可能性もあるし。可哀そうだろ」
     
    常に笑顔の裏に威圧を背負い話すチャイナ潔とは違い、見た通りキラキラとした雰囲気を纏ったままアイドル潔(仮)は仲裁に入る。
    その後少し言い合いとなったが、こちらが知っている潔と同じく根は優しいのかヒートアップする前に不穏な空気は鳴りを潜めていく。その時、廊下からカン、カン、カン。と一定のリズムでこちらに近づいてくる音が聞こえてきた。
    誰しもが疑問符を浮かべている中、チャイナ潔が皆の前に立ち扉側へ向き合う。シュッと音を立てて開いた先に立っているのはこれまた潔だ。
    すでにトレーニングルームに大集合していた者たちは段々と驚くことはなくなったが、それでも目を見張るばかり。未だ入り口に立っている潔の服は至って普通で、真っ黒のビジネススーツを緩く着こなしていた。手は後ろで組まれ、チャイナ潔同様ににこりと微笑んだ顔は何とも愛らしかった。
     
    「おい、その手の獲物、どうするつもりだよ?」
    「え~!?うっすい気配ばっかだから気付くやついないと思ってた。というか俺と同じ顔だね、お前。罠、なのかな?これは」
    「とりあえずそれを仕舞うか捨てるかしろよ、お前もここに行き成り来て戸惑ってんだろ、気概は加えるつもりはねぇから」
     
    暫しの睨み合いの後、スーツ潔は後ろで組んでいた手を前に持ってくると獲物を袖口へしまった。
    獲物は鋭いナイフだ。そこで後ろで見守っていた者たちは気づく。廊下で木霊していたあの甲高い音がナイフによって生み出されていることに。
    それと共にスーツ潔がどうい者かも察してしまった。行き成り現れた自分たちを警戒して咄嗟に出たナイフではなく、存在にあらかじめ気付いた状態であわよくばそのナイフをこちらに向けようとしていたことに。
    何人かが無意識に腕を摩る。大分下がってしまった部屋の温度に肩をすくめたスーツ潔はそのままチャイナ潔の肩に腕を回すと雑談を始めた。
    何が原因なのかは不明だが、気が合う相手を見つけたスーツ潔は相変わらず表情に無邪気さを携えて普通に話していた。
    温度が上がってくるとさらに扉が開く。もう慣れたものだ。次はなに潔だ?とみんなが視線を向ける。そこにはチュロスを片手にローブを羽織っている恰好の潔が立っていた。いかにもU●Jを満喫中の普通の男子高校生に見える姿にやっと皆が安堵の表情を浮かべるが、「あれ?どちらさまですか?まさかマスターに対する刺客とかじゃないですよね?」と聞きなれない単語を並べたローブ潔が懐からそれらしい杖を取りだしこちらに構えてきた。
    お前もか!という心の声を一致させながら身構える。きっとローブ潔は遠距離攻撃。こちらはどうしても近距離もしくは回避だが、魔法の力なぞ未知数であるし、ゲームやアニメ、漫画の世界であればきっと追尾機能なんてものもあるかもしれない。
    言語による懐柔はきっとアイドル潔の出番だとちらりと見たが、何やらスマホを片手に「まずいな、そろそろスケジュール的には移動しなきゃなのに、大問題になり兼ねない。失踪とかになってたらどうしよう」などと一人悶々としている。
    一歩間違えれば仕事やスケジュールどころではない状況にも屈しない姿は見知った潔と被るところがある。
     
    「おい、どうしたんだよ入口で立って・・・」
     
    正に鶴の一声。ひょこりと後ろから顔を出した正潔。つまり青い監獄で支給されたトレーニングウェアを身に纏った潔がこの空気をぶち抜いて帰ってきたのだ。
    チャイナ、アイドル、謎のスーツ、ローブと来て、まさか我らが潔が神様だったとは恐れ入った。雪宮が言っていたことは本当だったんだ。などと皆が納得している間に。正潔はローブ潔をトレーニングルームへ招き入れた。
     
    「あれ、なんか、あれ???この人たち俺じゃない?え?」
     
    困惑する潔の肩を黒名が優しくひしと抱きしめた。
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