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    genko_gorilla

    雑伊中心に練習用の書き散らしなどを投下する予定です。
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    genko_gorilla

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    フロの女に都合のいいおすけべが書けんかと思ったもの。
    フさんの性欲がゴリゴリだったらいいなあ〜
    ※と言いつつぬるめですが、一応R18とさせてください。しっかりめのおすけべにリメイクするかも。

    #フクロナ
    falseDandelion
    #R18

    The Caged 勤務先からドアトゥドアで徒歩10秒。
     天職である編集の仕事に素早く取り掛かれることと、誰にも踏み入れられない理想の環境を構築できること。二つの条件を満たす現在の住居に、フクマは満足していた。
    「ただいま帰りました、ロナルドさん」
     一日働いたのち帰宅し、玄関を開けて、にこやかに一声かける。ここ最近のフクマのルーティンだ。
     すぐさま軽い足音がして、深海のような暗闇の向こうから、トレードマークの退治人姿をしたロナルドが顔を出した。
    「お帰りなさい、フクマさん」
    「はい。いつもお出迎えありがとうございます」
     穏やかに微笑むとロナルドは、人形のような白皙をほころばせた。


    The Caged





     帰宅直後の愛の営みは、かっきり毎晩行われた。
    「ああっ、ああ、フクマさん……ッ」
     一糸まとわぬ姿で甘えたように男を請うるロナルドは、この世の何よりも美しい。きっと惜しみなく与えられる快感を貪欲に飲み込んで、日々生まれ変わっているのだとフクマは思う。
    「こら。気持ちいい時は言葉にして伝えると、昨晩お約束したばかりでしょう」
    「はいッ、フクマさん、気持ちいい、気持ちいいです……っ」
     大きな目いっぱいに清らかな涙を浮かべて、陶然とロナルドは繰り返す。フクマが満足の笑みを漏らすだけで、腕の中のロナルドは熱い息を吐いた。
     ベッドはない。それどころか、何もない。家具も電化製品も食べ物も、昼夜の区別もない。あるのは濁った、世にも異質な空間だけ。混沌とした亜空間の中で、ロナルド一人だけが美しく、確かに存在していて、永遠だった。

     フクマだけを見つめる青い瞳。
     フクマだけに愛を囁く薄い唇。
     フクマだけに全てを捧げるしなやかな肢体。

     従順で愛おしい、籠の中の鳥。

     フクマは笑った。あまりにも、世界の全てが思い通りだった。
     日中は大好きな仕事をして、家に帰ればフクマを愛しフクマが愛するロナルドがいる。恐いほどの幸せとはこういうことかと、フクマは得心した。ロナルドの冷たい頬に唇を落としてから、彼を抱きしめる腕に強く力を込めて、何度目かわからない快楽の渦に身を投げ出す。飽きることなく、ロナルドはフクマの求めに全力で応えた。何でも、何度でも——。



    「おはようございます、フクマさん」
     目を開けると、混沌とした亜空間の中で、光り輝くようにロナルドが微笑んでいた。
    「おはようございます、ロナルドさん。今日もいい朝ですね」
     身支度をしながら、脳内で今日のスケジュールを確認する。心躍る業務の時間だ。愛しいロナルドと離れるのは身を切られるように辛いが、仕事には代えられない。せめてもの慰みに手をつないで亜空間を抜け出す。と、フローリングの廊下に足を踏み入れたロナルドが、大きくぐらりと傾いた。しかしそれも一瞬で、次の瞬間にはもう笑顔に戻っている。
    「今日もお仕事頑張ってくださいね、フクマさん」
     毎朝欠かさないお出かけ前の挨拶にも問題はない。だが、このままでいいのか? うっすらと聞こえた自分の声を振り払いたくて、フクマはわざと乱暴な音を立てて靴を履いた。これでいいに、決まっている。
    「では、行ってまいりますね、ロナルドさん。留守を頼みましたよ」
     がぢゃ、ばた、り。
     鈍い音がして、無機質な笑みを浮かべたロナルドは、軋む扉の向こうに消えた。


     10秒後、フクマの姿はいつも通り自席にあった。デスク周りのねこグッズを軽く掃除し、水行など毎朝のルーティンをテキパキとこなしてから、スマホを取り出す。今の時間であれば、彼は仕事を終えて事務所に戻っているだろう。
     はずむ心を無表情の仮面の下に隠して、フクマは慣れた手つきでスマホを操作した。
    「お久しぶりです。オータム書店の、フクマです。打ち合わせからお時間たちましたが、進捗はいかがでしょうか?」
    『オピャーーーーーフフフフフクマさん、やべっ、もう打ち合わせから二週間 締め切りまで1週間 あっ原稿、原稿はですねっ、もうすンごいできてたんですけど、つい今しがたドラ公がパソコン壊しちゃってフンヌッッッ!』
    『ギャアアやめろ血迷うなゴリルドくん、固形物の角は痛いんだって何度言えばスナァ』
     汗みずくになって、真っ赤な顔で言い訳をしているだろうロナルドを想像するだけで、フクマの唇は勝手に笑みを形作った。

     やはり、いい。生きている彼は、格別に佳い。

    「ちゃんと進んでいるのですね、安心しました。ではまた、締め切りの日に新横浜まで伺いますので」
     くすりと笑ってスマホを切る。いつの間にか、世話好きな先輩社員が背後に立っていた。
    「おーコワ。なんやフクマ、そないニタニタ笑って。あれか、愛しのロナルド君か」
    「おはようございます。いえ、いつも通り原稿が楽しみなだけですよ。それに、愛しだなんて畏れ多い……。私はただの、担当編集ですから」
    「はいはい、わーかってるって。でも、気をつけた方がええで? 正直、最近お前がロナルド君を見る目は怖いっちゅーか、不健全っちゅうか……。なあ、もしロナルド君に編集者以上の思いを抱えてるんなら、玉砕覚悟で伝えてみろや。当たって砕けるのが恋ってもんやで! ——っておい待てや、スルーは、この笑顔をスルーはあかんて」
     バチコンとウインクを飛ばすクワバラを横目に、フクマは荷物をまとめて社を出た。いい天気だ。青い空を見上げていたら、足が自然と新横浜へと向かってしまっていた。
    本当は何件か作家のところを回るつもりだったが、別に今日でなくてもいいかもしれない。誰に向けるでもなく言い訳している自分が珍しくて、フクマは人知れず首を傾げた。
     
     まあいい。それらしい口実ならなんとでも捻り出せる。
     まずは久しぶりに会うロナルドの体温を、しかとこの体に刻み付けよう。

     自ら作り上げた甘美な嘘に、心まで囚われてしまう前に。







    END-------------------------------------------------------------------
    亜空間に夢を見過ぎですかそうですか。
    ありがとうございました!(リメイクするかも) 

    2023.5.16

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    genko_gorilla

    MAIKING雑伊で現パロ(作家と編集)。
    長文や会話練習、体力づくりを目的に、毎週更新→ある程度まとまったら整えて支部にアップを予定しています。毎金曜目安。秋までに書ききりたい。ファイト自分。

    ・支部にアップする際に大幅加筆・修正の可能性があります
    ・誤字脱字因果関係の齟齬もその段階で直しますので見逃してください
    ・週刊漫画誌のネーム連載とか許せない方には向いてないです
    ・これは雑伊なのか?
    タイトル未定(作家と編集)★8/22追記 Pixivにて完成版を掲載しました!★
    みなさんからのリアクション(絵文字)を消すのが忍びないので、
    こちらのポイピク版はこのまま残させてもらいます〜




     編集長に声をかけられたのは、あるうららかな春の昼下がりだった。
    「善法寺、お前そろそろ担当つくか」
     薄汚れた社内の廊下。切れかかった蛍光灯が、ぢりぢりと小さな音を立てている。企画書のコピーとゲラの束を抱え、会議室に走っていた伊作は、すれ違い様の唐突な申し出につんのめりそうになった。
    「担当……ですか?」
    「うん。文芸編集部に入ったからには、やっぱり作家の一人や二人担当してなんぼだろ。お前、今月で二年目に入ったよな?」
    「はい」
    「じゃ、そろそろいいだろ。いい加減雑用だけで給料もらうにも飽きた頃だろうし」
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