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    三点リーダ

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    三点リーダ

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    マリオンと第13期の『ヒーロー』たちが対話をする雰囲気小話。

    02 オスカー・ベイル「この企画における交流の場は、あの部屋だと聞いていたんだけど」


     そう冷たく言い放つマリオンがいるのは【HELIOS】内にあるスポーツジム。時間帯によっては鍛錬に励む多くの『ヒーロー』を見ることができるその場所に今いるのは、彼ともう一人――オスカー・ベイルのみだった。
     
     
    「ブラッドさまに非はない。俺が無理を言ったんだ。マリオンとはこの場の方が分かり合える、と」
    「ふん、アイツもオマエには甘いんだな。ボクはあの変態と同じ空間に閉じ込められたというのに」
    「この企画の目的は個々の交流だ。それが行いやすいという理由であれば、場所については不問とする。ただそれだけだ」
    「どうだか」


     ブラッドを追及する話題に僅かに顔を強ばらせるオスカーだったが、ふっと息を吐くと事務的な口調でマリオンの言葉を返す。するとマリオンは「これ以上の会話は不要だ」と言わんばかりに会話を打ち切った。 
     いつもは誰かが器具を動かす音が響く部屋に、静寂が訪れる。
     
     
    「……この場にいると、レスキュー隊の応援要請を受けていた頃を思い出す」


     沈黙を打ち破ったのは、オスカーだった。
     堂々とした声とは裏腹に、その瞳はきょろきょろと所在なさげに揺れている。
     
     
    「プライドがないのか――お前は俺にそう問い質したな」
    「……あぁ。そしてその答えも聞いた。『仲間同士高め合うのは悪いことではないが、プライドに固執して競ったりいがみ合ったりするのは好きじゃない。そんな感情に流されない精神を身につけたい』だったか」
    「覚えていてくれたんだな」
    「っ……偶々だ」

     
     マリオンからの返答を聞いたオスカーが、ふっと口元を緩ませた。そんなオスカーの様子に、今度はマリオンが視線を彷徨わせる。
     

    「お前とは良い意味で高め合える気がする。そう言ったことは覚えているだろうか」
    「……」
    「もう一度、こうして話をしたいと思っていた」


     オスカーが揺れていた瞳をマリオンへと定めた。先程とは違う、意志のある光が彼の瞳を輝かせる。
     
     
    「年齢は違えど、同じメンターという立場同士だ。切磋琢磨していくことが出来る関係性だと考えている」
    「ボクはオマエから学ぶべきことはない」

     オスカーの言葉をにべもなく突っぱねるマリオン。ふいと顔を背けた彼の視線は、オスカーへと向かうことはない。しかしそんな彼のそっけない態度に臆することなく、オスカーは言葉を続けた。

     
    「そうか。なら、どうか俺に付き合ってくれないか」
    「は……?」


     そっぽを向いていたマリオンの視線が、自然とオスカーへと向く。彼の言ったことが未だに理解できていないのだろう。口をぽかんと開いたまま、マリオンはぱちぱちと目をしばたたかせた。

     
    「マリオンのメンティーたちに対する指導は学ぶべき点がある。お前に『甘い』と言われた俺の指導すべてを変えるようなことはしないが、改善すべき点はきちんと改善していきたい」


     完全に虚を突かれてしまったらしいマリオンは、何も口を挟むことなくオスカーの言葉を聞いている。じっとオスカーを見つめるその瞳をどのように捉えたのか、彼は僅かに目線を伏せた。
     
     
    「マリオンに何か一つでも助言が出来る点が俺にもあれば、お互い様ということになるのだろうが……これに関しては俺の経験不足だな。もっとお前に頼られるべき存在となれるように、努力しよう」


     そうオスカーが口にすると、マリオンの口から呆れたような息が漏れる。


    「オマエ、本当にプライドはあるのか」
    「自分としてはあるつもりだ。譲れないものも勿論ある。だが、それと今話していることは関係あるのか?」
    「なっ……」


     オスカーが至極当然に答えたその内容に、マリオンは菫色の瞳を零れんばかりに目を見開いた。そんな彼の反応に、オスカーはきょとんとした表情を浮かべながら首を傾げる。

     
    「すまない、俺は何かおかしいことを言ったようだな。どうやって言葉で伝えれば良いのか――」
    「オマエは、確か24だったな」


     言葉を遮って発されたマリオンの言葉の意図が読み取れないのか、オスカーは目を白黒させた。落ち着きを取り戻したのか、マリオンは普段通りの澄ました表情でオスカーに視線を投げかけている。


    「年齢だ」
    「あぁ、そういうことか。合っている」


     唐突に年齢を聞いてきた彼の言動に戸惑いながらもオスカーは頷く。するとマリオンは何かを考え込むように視線を地面に落とした。そんなマリオンの反応に気づいた様子もないオスカーは同じように視線を落として「そうか」と呟くと、独り言のように言葉を紡ぐ。
     

    「そうなると、俺はマリオンよりも5つ年上になるのか。大人として、何かお前に教えられることがあれば良いのだが」
    「別に、良い」


     マリオンの口から漏れたのは、拒絶の言葉。だが、その声音に嫌悪感は感じられない。
     オスカーが違和感を感じ取った時と、マリオンの口が開いたのは、ほぼ同時だった。
     
     
    「――たった今、嫌というほど教えられたからな」


     およそマリオンから発されたとは思えない言葉に、オスカーが瞠目する。
     彼が声の主へと視線と向けると、そこにはどこか苦々しい表情を浮かべたマリオンがいて。
     オスカーの視線に気がついたのだろう。マリオンは彼を一瞥すると、決意を込めた眼差しでその瞳を貫いた。

     
    「唯一無二のボクは、オマエなんかより大人になってみせるんだからな!」


     びしりと音を立てそうな程に真っ直ぐと、オスカーに人差し指を突きつける。「大人になってみせる」と息巻くマリオンのその姿に、オスカーは再び頬を緩ませる。

     
    「あぁ。期待している」
    「~~っ! だから、ボクを子供扱いするな!」
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