ファンタジーパラレルなロビぐだ♂第4話時は放たれた矢の如し。どれ程波乱に満ちた月日であろうと、逆に特筆すべき出来事のない穏やかな数時間であろうと、過ぎ去ってしまえば瞬きの間と変わらない。
流浪の狩人だった男が連れ合いを得てから、気付けば数年が経とうとしていた。
大陸の西側、国と国の境を跨いで広がる大森林。針葉樹が多く茂り鬱蒼とした樹海に、寄り添うようにして佇む集落がある。近辺には他に人里が無い。生きるため住民は身を寄せ合って、ささやかな畑を耕し足らない分は森の恵みに頼った。村の規模に見合った慎ましい暮らしぶり。都の華やかな喧騒も潮騒響く港町の活気とも縁遠い、絵に描いたような田舎の寒村。
その一角にある農家で娘は産まれた。
「はぁ……」
鬱蒼と茂り空を隠す暗緑色の梢。木の根や小石で隆起した足元。湿った落ち葉や下草を踏みつけながら、森を行く娘は溜息を吐いた。革の短靴に包まれた足取りも気分を表して重い。頭上から降ってくる葉擦れの音がやけに耳障りで、村娘は麦藁色の眉をしかめた。
6266