野良犬ランディの『Bleib(待て)』SS一課から回された指名手配犯を追いかけ、裏通りに追い込んだところまでは良かったが切羽詰まった犯人が振り回したナイフがロイドの頬を掠め、そこから血が流れた。つぅ、と流れる血液と痛苦に歪んだ顔を見たランディの顔から一気に感情が消え失せ、自らが振るったナイフで傷ついた人間を見て呆然とする犯人を石造りの道へ叩きつけ馬乗りになり、キツく握りしめた拳で犯人を殴り始めた。
「ランディ!!止めろ!!やりすぎだ!!俺なら平気だから!」
「っ!?」
ティアを掛けて出血を止めたロイドは急いでランディの後ろから抱き締めるように制止し、ロイドの声を聞き殴る手を止めたランディが振り向く。
ロイドは止められた事にホッとして「少しくらい傷つくのは仕事の範疇だ」と言いながら犯人の上からランディを降ろし、血塗れでグッタリとしている犯人の息をしてるか確認して手錠を掛けて捜査一課へ連絡をして、2人でしばらく待っていると一課の人間達がやってきて、惨状に引き攣りながら犯人を連れて行った
▽▼▽▼
「……」
「あれはやりすぎだ」
無言のままロイドの手当をしていたランディへ声をかけるが無視され、ロイドは溜息をついて目の前の男がする手当が終わるのを待つ。カチャン、と器具を置いたランディが口を開いた
「お前が切られたのを見て勝手に体が動いていた……自分じゃ止められなかった」
「……なら、俺がランディを止めるよ」
深い緑曜石の瞳を濁らせながら話すランディの手にソッと触れたロイドがそう話す
「止める?なんだ、Bleibとか言う気か?」
「Bleib?どんな意味なんだ?」
「Bleibは『待て』って言う意味だよ」
笑って言ったランディは黙ってしまい、ロイドはほんの少しだけ考える
「……オレが『Bleib』って言えばランディは待てるのか?」
「あ?待っててやるよ。ゴシュジンサマの命令だからな」
ランディが自身の首に着けられた黒いチョーカーの装飾を持ち、笑ってロイドへ返事をする。そしてロイドの腕を引っ張り耳元で囁いた
「『闘神』だった俺が絶対に服従するのはこれから先も死後もテメェ1人だけだ。ロイド・バニングス」