シュークリームは爆発物ですカランコロンと【夜風】のドアベルが鳴る。
続く靴音と共に店内へ顔を出したのは——
「こんばんは…です」
「あぁリカオさん、丁度いいところに。
試食用に作ったシュークリームなんですが
おひとついかがですか?」
「…!俺でいいのか?」
「ええ、お菓子に関してはやっぱり
リカオさんに食べていただくのが
いちばんなので!」
ウララギに勧められるままひとつ手に取る。
見た目以上の、ずっしりした重さが
内容物の量を物語っていた。
たっぷり詰まったクリームに心躍らせながら、
リカオは粉糖で薄化粧した生地に齧り付いた。
その直後。
ぶべびょ、となんとも情け無い音を立てて
シュークリームが爆発した。
ボテボテと皿へ落ちていくカスタードクリーム。
硬直するリカオとウララギ。
咄嗟に顔を背けて笑いを隠すクースカ。
一周回って真顔のジャロップ。
【夜風】を満たす沈黙を破ったのは、
リカオの笑い声だった。