オセロゲーム① 高校生だった3年間、恋をしていた。相手は高校の教師で担任。思春期真っ只中の、人生の右も左も分からない青二才のマセガキが、手近な大人への憧れを恋と思い込んだだけなのかもしれない。
だが、相手は男でしかも無気力の塊のような教師で。何がいいのかと何度も自分に自問自答した。死んだ魚のような目、覇気のない表情、スリッパをいつも引きずるようにペタペタと音をたて歩いていた。風紀委員の俺からしたら、物申したい事だらけだった。さすがに教師に対して、正面切っては言う事はなかったが。
およそ“憧れ”とは遠いの存在なのに、ほとんど一目惚れだった。
初めて銀八を見たのは入学式の日。ステージの前に一列に並んでいた教師の中で、若いくせに白髪頭で一際目立っていた。校長の長い式辞に、まだ終わらないのかと噛み殺すように欠伸をしていた銀八の頭上を、窓から差し込む陽の光がスポットライトのように照らしていた。銀色の髪が、キラキラと光を反射して、綺麗だなと思ったのを覚えている。
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