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    えこり

    高銀字書き/エモい文章が書けるようになりたい/息をするようにパロを書く

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    えこり

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    遅刻猫の日2023

    #高銀
    highSilver

    詳細は省くが俺らの四天王に耳が生えたらしい よく晴れ渡った、気持ちの良い朝。
     いつもの癖で目が覚めた俺は、まだ眠っている仲間の布団の横を通って廊下に顔を出した。今日は出陣もなければ、早朝の当番にも当たっていない。だからもっと眠っていても良かったのだけれど、何となくそれも勿体無いような気がする。
     まだ肌寒い空気にブルリと身を竦め、板張りの廊下を歩く。
     この先には道場と台所がある。運が良ければ攘夷四天王の誰かに出会えないだろうかと、微かな期待もあった。
     この攘夷戦争をずっと生き残ってきた彼らは、もはや生きる伝説のようになっている。
    俺のような一兵卒がおいそれと関われるような人たちではなかったが、拠点などで偶然出くわしたときには、皆気さくに話しかけてくれた。
     だからもし彼らに出会えたら、ラッキーだろうと思っていたのだけれど。
     まさか……まさかこんな事態になっているとは、夢にも思わないだろう。



    「ンナーゥ、ナー」
    「ンニ"ャ、シャー!」
    「ゥア"ーオ」
     ある部屋の前を通り掛かった時、不意に猫の声が聞こえた。
     確かこの部屋は、銀時さんが寝ている筈。まさか本人のいないうちに、猫が紛れ込んでしまったのだろうか。
     もしそうだとしたら、猫を連れ出した方が良いかもしれない。だが、勝手に障子を開けるのは流石に……
     部屋の前で逡巡している俺は、傍から見れば不審者そのものだろう。
     しかし、それを誰かに見咎められる前に、部屋の障子が勢い良く開いた。
    「ン"ナナアー!」
    「フギャー」
     廊下を走っていく白い人を、追いかけていく黒髪の人。
     あっという間に過ぎ去ったその背中をぼーっと見送りながら、俺はボソリと呟いた。
    「……銀時さんと高杉さん、だよな?」
     様子のおかしい二人の様子を、脳が処理することを拒む。
     とりあえず現状を把握する努力は諦め、俺は現実逃避のためにも、米の良い香りがしてきた食堂に向かうことにした。

     結局、現実から目を逸らすことは許されなかったのだけれど。
     食堂に隣接している台所では、桂さんがおにぎりを握っていた。ぬっちゃぬっちゃと音を立てながら。
     それは別に良い。彼が食事当番のときは、多少米の水分が多いことを除けばまともな方だから。
     問題はそこではないのだ。
     彼の頭の上で、ぴょこぴょこと動く二つの耳。
     どう見ても猫の耳が、そこに生えていた。
    「おお、早いな。まだ朝餉まで時間があるから、外でも歩いてきたらどうだ」
    「あ、おはようございます……」
     桂さんが話すのに合わせて、頭上の耳も小さく動く。
     どう見ても付け耳などではないだろう。なのにどうして、本人はこんなに冷静なのか。もしかして、気が付いていないなんてこともあるんだろうか。
     俺はどうしても放っておくことができず、失礼を承知で桂さんに尋ねた。
    「あの……その、頭の上のやつ、どうしたんですか?」
     桂さんは耳をピコン、と動かした後、事もなげに言い放った。
    「ああ、今朝起きたら生えていた。まあ、俺はこの耳だけで特に支障はないが……」
     そうして食堂の奥の方に顔を向けた桂さんの目線を、無意識に追う。
     朝日が差し込んでいる畳の上の一角に、寄り添うようにして眠っている高杉さんと銀時さんの姿があった。
     二人の頭上には、髪色と同じ三角の耳。着物の裾から出ている二本のしっぽが、それぞれ自由に動いていた。やがて白と黒のそれがくるりと絡まる。
    「え、えーと……お二人は……」
    「どうやら思考まで猫に寄ってしまったようでな。先ほどまでニャアニャアと喧嘩をしていたが、疲れたのか今は眠っているぞ」
    「そうですか……」
     それにしても、この仲睦まじさはどういうことだろうか。
     顔を合わせれば喧嘩ばかりしていると思っていた二人が、今はピッタリと体を寄せ合っている。高杉さんがスリスリと銀時さんの胸に頭を擦り付け、銀時さんは眠ったままやや寝苦しそうに眉を寄せていた。
     高杉さんも眠っている筈なのだが、ゴロゴロと喉から低い音が鳴っている。
     桂さんは握り飯を作る作業に戻ってしまったようだったが、切実にこの状態の解説が欲しかった。
     俺が混乱を極めているところで、廊下をドシドシと歩く足音が響いてくる。
     その持ち主は勢い良く部屋に飛び込んでくると、壁をビリビリと揺るがす程の大声を出した。
    「ヅラ〜!起きたら頭にこげなもんが!……ってなんや、おまんもがか」
    「ヅラじゃない、桂だ。そして俺たちだけでもないぞ」
     辰馬さんはそこでやっと、眠っている二人に気が付いたらしい。
     その様子をしゃがんで覗き込むと、彼は顔を綻ばせた。
    「おーおー、可愛うなりよって」
     大きな手が、銀時さんの白い頭に伸びる。
     わしゃわしゃと動かした瞬間、目をカッと開いた銀時さんが、辰馬さんの手を爪で引っ掻いた。
    「アタタタ……全く、わしには懐いてくれんのう」
    「お前もやられたか」
     お前も? と桂さんを見れば、確かにその秀麗な顔には引っ掻き傷が残っていた。
    「アハハハ! 猫になっても相変わらずぜよ」
    「全くだ。放っておけ、きっといつかは元に戻るだろう」
     相変わらず、という言葉が気にはなったが、深く突っ込んではいけないと本能が告げていた。
     また身を寄せて寝息を立てている二人をそっとしておいて、俺はこっそり部屋を出る。
     今は食堂に行かない方が良いと、皆に伝えておいた方が良いだろう。
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