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    えこり

    高銀字書き/エモい文章が書けるようになりたい/息をするようにパロを書く

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    えこり

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    個人的解釈強めな高銀八(硬八)です!
    あまりカプ色は強くないですが、私の中の二人の解釈は今のところこんな感じですという。
    ラブラブな二人も大好きなんですけどね。

    #高銀
    highSilver

    このクソッタレな世界で「銀時ィ」
    「銀八先生、だろ」
     机に向かう高杉の手元には、開いた形跡が殆どない国語の教科書と、真っ白なプリント。椅子にふんぞり返って筆箱を取り出す気すらないような様子に、銀八がため息を吐いた。
    「何のために休日出勤して補習してやってると思ってんだ。さっさと問題解け。そして俺を帰らせろ」
    「別に頼んでねぇよ」
    「クラスから留年する奴が出ると査定に響くんだよ。給料が下がるの」
    「なあ銀八、タバコ吸って良いか」
    「お前なあ人の話聞いてた? あと未成年が煙草吸うんじゃねぇよ」
     相も変わらずマイペースな教え子に、銀八は疲れ切ったような表情をして右手で眉間を揉む。高杉は少し体を前に出し、そんな銀八の顔を下から覗き込んできた。
    「頭痛ぇのか」
    「あーそうだな、誰かのせいでな。高杉くんが真面目にプリントを解いてくれたら、治ると思うんだけど」
    「そうか」
     そう言うと、高杉は案外あっさりとカバンの中から筆箱を取り出す。黒い布製のシンプルなそれの中に、シャープペンシルと消しゴムがそれぞれ一つずつ。殆ど使われた形跡のないそれを机の上に並べると、高杉は教科書を開き、目線をプリントに落とした。
     下線部の発言をした際の、Aの心情に最も近いものを選びなさい。
     「それ」が指しているものを、十字以内で抜き出しなさい。
     カタカナで書かれた(ア)〜(エ)の言葉を、漢字に直しなさい。
     紙面に並んでいるのは、現代文の基本的な問題ばかりだ。高杉は殆ど迷うことなく、空欄を埋めていく。シャープペンシルが紙を擦る音を聞きながら銀八は、勉強はできるんだだから普段から真面目にやりゃ良いのに、と心の中で呟いた。
     高杉の前の席の椅子を引き出してきて、跨ぐようにして座り背もたれに顎を預ける。窓から吹き込んでくる風が初夏の空気を運んできた。

     畳が敷かれた和室の中、机に向かって教本を開く。障子越しに部屋を照らす柔らかな光。皆の間をゆっくりと歩きながら教本を読み上げる穏やかな声が、眠りの世界に誘う歌声のようだった。眠気に耐えきれず机に顔を伏せると、肩を優しく揺すられる。
    「起きてください、 」
     アイツが俺の名前を呼ぶ声は、どんな音をしていたか。
    「おい、銀八」
     低い声が鼓膜を揺らし、ハッと目を開く。
     どうやら知らぬうちに、眠ってしまっていたらしい。
     瞬きをいくつか繰り返してクリアになった視界の中、不機嫌そうに口を曲げる高杉の顔が大写しになった。
    「人にやらせておいて寝るんじゃねぇよ。これじゃ補習じゃなくて自習だ」
    「こうして見張っておかないとてめーがやらないからでしょうが」
    「そうか、人の前で眠るのを見張りって言うのか。知らなかったぜ」
     話題を変えるため、高杉のプリントに目を落とす。
     最後の一問を除いて解答欄は全て埋まっていた。
    「お前、ここは? まだ終わってねーじゃん」
     Bはこの後、どのような行動を取ったと思うか。自由に想像して書きなさい。
     本文に書かれていないことは、分からない。作者の頭の中には続きがあったとしても、それが物語として形作られない限りは、その後のことは読者の想像に委ねられる。
     だからこの問題には、正解はない。何が書かれていてもよほど大枠を外れていなければ丸を付ける、いわばボーナス問題のつもりだった。
     高杉がペンを机の上に置く乾いた音が、静かな教室に響く。
     一つしかない新緑色の瞳がまっすぐこちらを見つめた。
    「銀八、テメェは何故教師になろうと思った」
    「……さあね」
    「何故こんな下らない茶番を続けていられる」
     どこまでも澄んだその瞳は、そこに映った俺を責めているようだ。抜き身の刃を首元に突きつけられるような感覚に、気付かれないように俺はこっそり息をした。
    「茶番なんかじゃねぇよ。……生徒の青春を見守って、立派に社会に送り出す。良い仕事じゃねぇか」
    「フン、本気でそう思ってんなら鳥肌モンだな」
     ガタリと椅子の音を鳴らし、高杉が立ち上がる。
     座ったままの俺の前に立つと、シャツの胸元を掴み上げた。顔が近付き、やがて距離がゼロになる。
     一瞬だけ触れて離れていった唇の感覚が、やけにリアルにこびり付いた。
    「壊してやろうか、テメェの生活全部。教師が生徒に手出したら捕まるんだろ」
     高杉の顔に浮かぶ、挑発的な笑み。
     まるきり悪役のようだと、銀八は無表情の下でそんなことを思った。
    「こんなオッサン相手にするのは止めとけ。折角なんだしさ、同級生の可愛い彼女でも作れよ」
     高杉の表情が歪み、チッと短く舌を打つ。掴んでいたシャツを解放され、銀八は乾いた咳を一つ零した。
     高杉は手早く筆記用具を筆箱に仕舞うと、教科書と共に鞄に突っ込む。
    「卒業までだ。俺の卒業までに、テメェを堕としてやる」
    「ハイハイ、やれるもんならやってみな」
     教室の扉が重たい音を立てて開かれ、靴音が徐々に遠ざかる。
     銀八は一つ溜息を着くと、最後の一問が空白のままのプリントをおもむろに手に取った。
    「……あと一年。そしたら俺とてめぇは他人だ」
     プリントを出席簿に挟み、窓の施錠をしてから教室を後にする。
     無性に煙草が吸いたくなり、屋上へと足を向けた。
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