Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    no_________

    @no_________

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    no_________

    ☆quiet follow

    シルディミで犬の話を書こうとしたやつのボツ。マイクランがかわいそうで気に入ってる

    #ボツ
    rejected

    棒で叩かれる犬を見た。あばらの浮いた犬は、その家の何かを狙っていたようだった。頰のこけた女性は金切り声を発しながら棒を振り、犬をもう一度叩いた。犬はキャンと大きく鳴くと、駆け去っていった。後に残された女性はだらりと腕を垂れ下げ、ヨロヨロと犬がいた場所に近寄った。赤く染まったその場所には食い漁られた鶏がいた。女性がその鶏をどうしたのか。馬車は遠ざかり、シルヴァンは目にすることができなかった。馬車の中には重苦しい沈黙が満ちている。頰を腫らした兄は膝の上で拳を握ったまま唇を噛みしめ、父は無表情で窓の外を眺めている。
    「犬ですら棒で叩けばいうことを聞くというのに」
     ポツリと父が呟いた。兄は口角を吊り上げ、父に向かって唾を吐き捨てる。父の手が翻り、流れるように兄の頰を打った。パァンと響く乾いた音に思わずシルヴァンは目を瞑り、耳を塞ぐ。口の中がひどく乾いていた。手のひらの向こうから口汚い兄の罵倒が聞こえる。父の叱責が聞こえる。息を殺し、自分はここにいないと思おうとした。
     兄の手がシルヴァンの手首を引っ掴む。兄は蒼白なシルヴァンを父に向けて突き飛ばした。父の手がシルヴァンを抱き留める。
    「あんたにも、この家にも、こいつがいればいいんだろっ! こいつだけがいれば……っ!」
     怒りで顔を真っ赤にし、瞳を潤ませた兄が怒鳴る。父は答えない。いつもそうだった。兄は舌打ちし、先ほどまでシルヴァンが座っていた場所に腰を下ろす。腕を組み、そっぽを睨んだ。父は自分の隣、先ほどまで兄が座っていた位置にシルヴァンを座らせる。再び訪れた沈黙にシルヴァンはゆっくりと呼吸した。静かすぎるこの場所で、自分の存在がこれ以上大きくならないように。


     日頃の行いゆえ、シルヴァンを揶揄する言葉は枚挙にいとまがない。怠け者、女狂い、色情魔、不真面目、ゴーティエ家の恥などなど、すぐに思い浮かぶものだけでも十は超える。思い当たる節があるため、また、聞き慣れていたため、シルヴァンは今さら傷つきはしなかった。ただ、その日、聞いた言葉は新しい揶揄だったため、いささか記憶に残った。
    「まるで盛りのついた犬だな」
     同じ王国出身の、同じ学級の男の言葉だった。記憶が正しければ西方の貴族で、摂政派だ。北方に住まいを構え、王子派のシルヴァンの家とか交流がない。シルヴァン個人としても付き合いは全くなかった。
    「ねぇ」
     女性の声で現実に立ち返る。シルヴァンの賛美に頰を赤らめていた彼女も、揶揄に興醒めしたらしい。先ほどまでの甘い空気はどこにもなかった。
    「……また今度。いいかな」
    「そうね。次は野暮な男がいない時にして」
    「もちろん」
     片目を瞑り、女性を見送る。その間に揶揄した男もどこかへ去ってしまったらしい。振り返った時にはその姿はどこにもなかった。
     犬、ね。
     嫌いというわけではないが、連想する記憶があり、あまりいい気はしない。犬に罪はないのだが、と日向ぼっこする犬を見やった。修道院で飼われている犬はどれもこれも人懐っこく、のびのびと過ごしている。犬好きの人間に可愛がられているようで、その毛艶は良い。
     草の上で寝そべっていた犬の耳がピクリと動く。首を持ち上げて辺りを窺ったかと思えば、立ち上がった。ワンと大きく吠えると尻尾を大きく振りながら駆け出す。何事かとその様子を見守れば、餌皿らしきものを持った人影が近づいていた。
     級長を示す肩の布や、姿勢のいい歩き方、目に眩しい金色の髪。王国の王子、ディミトリだ。彼は駆け寄る犬に顔を綻ばせ、手のひらを見せた。心得た犬がその場に腰を下ろす。ディミトリは目をパチパチと瞬かせると笑みを深めた。
    「言う前にわかるなんて、お前は賢いな」
     褒め言葉すら理解しているのか、犬がワンと鳴く。ディミトリはますます嬉しそうに笑い、餌皿を地面に置いた。犬は舌を出し、尻尾をブンブンと振ったままディミトリを見上げている。ディミトリも手のひらを犬に向け続けた。
    「よし」
     ディミトリの合図を聞き、犬が食事を始める。その様を彼は目を細めて眺めていた。
    「ワン」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    no_________

    MAIKING紅花のシル←ディミ。実はこれが最初に書いたシルディミ。未完のためほぼ表に出てこないがなんかで投げた気がする。忘れた
    実は二万文字くらいあるが制限に引っ掛かったので一万文字で終わりにしとく
    一一八〇年 冬[#「一一八〇年 冬」は中見出し]

     精神的な疲労を抱えながらディミトリは大広間を抜け出した。踊りも華やかな場も得意でなかった。人気のない野外まで来てようやく一息つく。吐き出した息はうっすらと白くなり、夜の闇に溶けていった。冬なのだ。雪一つ降らない冬景色を奇異に思った。ぼんやりと顔を上げれば満天の星空が広がっている。故郷で見た星と同じ星を探そうとしたものの、あまりにも数が多すぎて見つけられなかった。
    「綺麗なもんですねぇ」
     聞き慣れた声を聞き、不思議なことがあるものだと振り返る。予想通り、幼馴染のシルヴァンが頭の後ろで手を組みながら歩いてきていた。
    「踊りはいいのか?」
     女好きを公言して憚らない彼にはこの上なく楽しい催しだろうに。からかい半分、疑問半分で尋ねれば彼は組んでいた手を解く。
    「殿下に助言をしたらすぐに戻りますよ」
     彼の声は随分と弾んでいた。話が見えず、眉間に皺が寄る。対するシルヴァンは笑顔だ。
    「女神の塔に行くんでしょう?」
    「いや、そういうわけではないが……」
    「またまた〜。分かってますって。誰にも言いませんから安心してください」
     何一つ分かってく 10000

    no_________

    MAIKINGシルディミのボツ。亡霊の話を書こうとしたパート2。今回は生き霊です士官学校には不思議な話が多い。一人でに動く人体模型や、深夜に鳴り響く鐘とか、特定の時間帯にだけ増える階段とか、そういった話に事欠かない。だから、幼い頃の幼馴染みそっくりの『何か』を見かけたとき、その類かとシルヴァンは思ったのだった。
     最初に見かけたのは春の終わりだった。その日は学友と怪談話でひどく盛り上がり、気づけば日はすっかり傾いていた。所用のある学友と別れ、一人、自室に帰ろうとした時だった。駆けていく子供を見つけたのは。
     少女と見まごう容貌も、特徴的な青の装束も、肩口で切りそろえられた眩い金髪も、どれも見覚えがあった。ディミトリ。シルヴァンの幼馴染みであり、ファーガス神聖王国の王子。その幼い頃に、子供はそっくりだった。
     シルヴァンの視線に気づいたのか、子供は振り返ると人差し指を口元に当てニッと笑った。
     見つかった。
     理屈のない感情に襲われて目を逸らす。冷や汗と共にその場を後にした。あんな話を聞いた後だから見間違えたのだ。そう自分に言い聞かせしたが、茜色の世界にポツンと浮かんだ青のことはなかなか頭から離れなかった。
     それでも、季節が過ぎれば鮮烈な感情も色あせ、記憶からも薄 660

    no_________

    MOURNINGシルディミのボツ。翠風のディミトリが死んだ後の話を書こうとした。彷徨うやつ好き辺りは死のにおいで満ちていた。北方の川には死体が浮かび、水を赤く染める。平原の中央では砦と大地が焼けていた。死肉を求めて鳥が上空を旋回する。枝に刺さる兵士の上に舞い降りると、黄色い目をギョロリと動かしてあたりの様子を伺った。
     赤毛の男は疲労を顔に滲ませて戦場を歩いていた。一人では真っ直ぐ立つことも歩くこともできず、彼は槍を杖の代わりとした。折れた右足を地面に下ろすたび、その顔は苦痛に歪む。額に浮かんだ脂汗ごと返り血を拭った。
     ガサガサと茂みを掻き分ける音がした。男は呼吸を止め、半ば反射的に槍を構える。彼から数十歩向こう、木々の合間を駆け抜ける影があった。白髪まじりの壮年の男が金髪の男を抱えていた。壮年の男は悲痛と後悔に呻きながら、北へとひた走る。金髪の男は動かない。背に十数の矢を生やしたまま、腹から剣を突き出したまま、首から斧を下げたまま、だらりと脱力している。壮年の男が足を動かすたびに、その身体から血が溢れて草を濡らした。
     赤毛の男は、彼らの姿が遠くに消えるのを見送った。足はその場に縫い止められ、追いかけることは叶わなかった。
     鳥だけが新たな餌を目指して飛んでいった。


      1668

    no_________

    MOURNINGシルディミで犬の話を書こうとしたやつのボツ。マイクランがかわいそうで気に入ってる棒で叩かれる犬を見た。あばらの浮いた犬は、その家の何かを狙っていたようだった。頰のこけた女性は金切り声を発しながら棒を振り、犬をもう一度叩いた。犬はキャンと大きく鳴くと、駆け去っていった。後に残された女性はだらりと腕を垂れ下げ、ヨロヨロと犬がいた場所に近寄った。赤く染まったその場所には食い漁られた鶏がいた。女性がその鶏をどうしたのか。馬車は遠ざかり、シルヴァンは目にすることができなかった。馬車の中には重苦しい沈黙が満ちている。頰を腫らした兄は膝の上で拳を握ったまま唇を噛みしめ、父は無表情で窓の外を眺めている。
    「犬ですら棒で叩けばいうことを聞くというのに」
     ポツリと父が呟いた。兄は口角を吊り上げ、父に向かって唾を吐き捨てる。父の手が翻り、流れるように兄の頰を打った。パァンと響く乾いた音に思わずシルヴァンは目を瞑り、耳を塞ぐ。口の中がひどく乾いていた。手のひらの向こうから口汚い兄の罵倒が聞こえる。父の叱責が聞こえる。息を殺し、自分はここにいないと思おうとした。
     兄の手がシルヴァンの手首を引っ掴む。兄は蒼白なシルヴァンを父に向けて突き飛ばした。父の手がシルヴァンを抱き留める。
    「あんた 1686

    related works

    no_________

    MOURNINGシルディミで犬の話を書こうとしたやつのボツ。マイクランがかわいそうで気に入ってる棒で叩かれる犬を見た。あばらの浮いた犬は、その家の何かを狙っていたようだった。頰のこけた女性は金切り声を発しながら棒を振り、犬をもう一度叩いた。犬はキャンと大きく鳴くと、駆け去っていった。後に残された女性はだらりと腕を垂れ下げ、ヨロヨロと犬がいた場所に近寄った。赤く染まったその場所には食い漁られた鶏がいた。女性がその鶏をどうしたのか。馬車は遠ざかり、シルヴァンは目にすることができなかった。馬車の中には重苦しい沈黙が満ちている。頰を腫らした兄は膝の上で拳を握ったまま唇を噛みしめ、父は無表情で窓の外を眺めている。
    「犬ですら棒で叩けばいうことを聞くというのに」
     ポツリと父が呟いた。兄は口角を吊り上げ、父に向かって唾を吐き捨てる。父の手が翻り、流れるように兄の頰を打った。パァンと響く乾いた音に思わずシルヴァンは目を瞑り、耳を塞ぐ。口の中がひどく乾いていた。手のひらの向こうから口汚い兄の罵倒が聞こえる。父の叱責が聞こえる。息を殺し、自分はここにいないと思おうとした。
     兄の手がシルヴァンの手首を引っ掴む。兄は蒼白なシルヴァンを父に向けて突き飛ばした。父の手がシルヴァンを抱き留める。
    「あんた 1686

    recommended works