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    umeno0420

    @umeno0420

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    umeno0420

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    !!!ビリザキが冒頭からセフレに振られるタイプの現パロビリぐだです!!!

    #Fate/GrandOrder
    #ビリぐだ
    self-satisfiedPerson
    #ぐだ子
    stupidChild
    #ビリー・ザ・キッド
    billyTheKid

    夏の魔法ってことにして「ね、ビリー。こうやって会うの、今日でおしまいにしよっか」

    僕はコーヒーを淹れたところだった。夏掛けに変えたばかりだという布団を羽織って、彼女は裸のまま微笑んでいる。頑是ない子供に、言って聞かせるように。

    振られた。文意の咀嚼より先に理解がきた。

    おしまいって、いやそんな決定事項みたいに、
    なんで今。昨日、ぎりぎり今日? だってそんな素振りなかっただろ。数多の疑問の言葉は線毛に絡まり、舌でもつれて、唇に却下された。押し黙った僕は、よほど情けない顔をしていたのだろう。彼女はそんな顔をさせるつもりはなかったと言わんばかりに、ほんの少し慌てた表情で視線を迷わせた。

    「あのね、ビリー。私、あなたを嫌ったわけでも、あなたに傷つけられたわけでもない。ただ、ふたりでは会わない友人に戻りたいっていう提案なの。可能であれば、すぐに。急でごめん。あなたが悪いんじゃ、ないんだけどね」

    文末に逆接に留保された感情が、僕には読み取れない。彼女の声は昨日の夜の通りに優しくて、寝乱れた髪はカーテン越しの日光で柔らかく輝いていた。困惑だけしていれば良かったはずなのに、僕は頭のどこかで手に持ったコーヒーをどうしようか気にしている。心が、彼女から離れている。カラーコンタクトを外した瞳が、ぼけた輪郭で僕を眼差した。呆れるように、憐れむみたいに、心のままに。

    「きっと今なら、帰りたいところへ帰れるんじゃない?」


    #


    煙を吐く。

    「どこだい、そこ」

    独り言はぼやぼやと、僕の肺と朝の空気を汚した。かちん。相槌は自分が鳴らす、古いジッポライターだけ。

    というわけでセフレに振られた僕は、大学の喫煙所で伸びていた。夏の太陽はこんな朝でも充分明るい。もしくは、僕が何でも眩しく感じられるくらいには沈みまくっている。彼女は朝食くらい食べて行けば良いのにと言ったけれど、さすがにそんなことができるほど図太くはなかった。そもそもどんな顔で飯を食えって言うんだよ。確かに空腹ではあるけどさ。

    まっすぐにアパートへ帰らなかったのは、別れ際の一言が引っかかってしまったからだ。帰りたい場所。いかにもメランコリな単語選びだ。だからこそ、彼女のイメージにはそぐわない。あの人はもっと、しなやかにリリカルな性格だったから。

    耳にこびりつく戯言。だから多分、あれはいつか僕が言ったことなのだろう。

    「帰りたい、の、は」

    地表の何もかもを育み殺す日差しが街を炙る。幾万の靴底に削られていくアスファルトは、その身に鬱屈と熱と諦念を溜め込んでいた。酷暑の気配は空気を舐め、生きとし生けるものの明日を揮発させていく。辛うじて喫煙所は日陰だけれど、生垣の常緑樹は端からしなびたようだった。木の葉はしおれ、それらの落とす影の方が明るい。明るい、黒。思わず水場を探したくなるけれど、そんなものは吸殻が身投げしたバケツしかないのだ。手元の煙はくらくらと喉を燻し、自然と息は荒くなった。耳鳴りは水分不足を発端に、砂嵐の音に混じって体内でのみ響く。聞こえないんだ。だって鼓膜は砂に埋まって震えなかったんだから。だから行き倒れたように、僕はベンチで伸びている。

    まるで、荒野にでも、いるようだ。

    荒野。見たこともない、ないのに。なのにこんなに適切な比喩もないと思うのは、荒野、僕の、僕が、それを本当に、知っているから。

    慣れたラッキーストライクの匂いが、ぞりぞりと理性を削いだ。意識は酩酊の近似値まで落下していく。うすら寂しい夜の気配を背後に、視線は遠く、視界は広く、思考は古くなる。自分よりもなお古く、忘却よりも早く、速く、はやく! 僕は進まなくちゃならない。逃げ出さないと、早く、ここから。

    でなけりゃ、追いつかれてしまう。

    21を行きすぎてしまったら、僕は。

    「ビリー?」

    朝焼けの瞳が、僕を呼んだ。

    「どうしたの、こんな早くに」

    顔を上げれば、リツカが喫煙所の入口に立っていた。空から降り注ぐ光と熱をありったけ背負って、なのに逆光に潰されないほどの白々とした月を湛えた瞳。

    彼女が、僕を、見ていた。

    「待っていたんだ」

    それは酩酊に引かれて落ちた言葉だった。意識の埒外から溢れた声で、逆説的に自我が覚醒される。あれ。リツカだ、リツカがいる。ゆるゆるしたカントリーミュージック研究会で同期で、僕とは違う学部の女の子。彼女はいかにも訝しげな顔で、喫煙所の入口からこちらを覗き込んでいた。

    「リツカ? どうしたんだい、こんなところで」
    「それ今私が聞いたでしょ。大丈夫?」
    「……アー。駄目かも?」

    そう嘯いてみたけれど、本当はかなり大丈夫になっていた。潮が引くように、焦燥を煽る迷妄は頭蓋から剥がれていく。剥がれる。最初から自分のものではなかったみたいに、もうあまり上手く思い出せない。荒野、どうして荒野だったのだろう。関わりもないのに。

    僕がへらへらと適当なことを言っていたからだろう。リツカは眉間に皺を寄せ、粗末な喫煙所へ押し入ってくる。その肩には重そうなトートバッグが提げられていた。夏休みなのに。彼女はそのまま僕の前までずんずん歩み寄り、身を屈めてこちらの顔を覗き込む。顔色、瞳孔、爪の先まで見ようとしてくるから、僕は慌てて持っていた煙草を捨てた。そのまま顔を逸らす。

    「熱中症じゃない? とりあえずどこか室内に入ろう。あと飲み物、あ、立てる?」
    「分かった分かった。あいや、君の親切は嬉しい。ありがとう。でも大丈夫、ただの寝不足で」

    振られて、自棄で、睡眠不足なだけ。

    そんなことは言葉にできなかった。リツカは僕にまつわる事実も悪評も聞き飽きているだろうけれど、自分から彼女にそんなことは言えない。言いたくなかった。いつも見るより引結ばれた唇に、僕の様子を見逃さないよう開かれたまろいオレンジに、僕の自堕落な様を聞かせたくないと思ってしまった。

    リツカは慎重に瞬きをした。それからもう一度、僕の顔をじっと観察する。

    「寝不足?」
    「そう。ていうか君は? 僕のこれは自業自得だし、ここに引き止めて君の用事に差し障ったら申し訳ない」

    彼女は低く唸って、ほんのり諦め含ませた顔で笑った。

    「私は暇、ていうか、暇になったところ。語学の講習だったんだけど、先生のお子さんが急に熱出しちゃったんだって。だから何の予定もなくなっちゃった」
    「講習? 夏休みにわざわざ? 君、単位足りなくなるタイプじゃないだろ」
    「おかげさまでね。希望者が受講できる講座があったの。……英会話の」

    感嘆と驚愕とちょっと引いた感じの混ざった息が漏れた。クソ真面目だなこの子。大体、英会話って。言ってくれりゃ僕が教え。

    「え?」
    「いやその、パン屋のバイトも午後からだからちょうど良いかなって! いや今日に限っては時間ができちゃって良くないんだけど」

    僕が言っていない言葉に躓いているうちに、リツカは誤魔化すように何かを捲し立てていた。おかげで思考は掴めないうちに流れていく。だって代わりに考えないといけないことができたから。

    赤い頬を抑える彼女の腕をつついた。だらしなくベンチに腰掛ける僕を、リツカは驚いたように見下ろす。目が合う。どれだけ逆光にあってもその目から光が失われることはない。そうだ。初めて会ったときから、そうだった。僕はこの女の子の瞳がひどく美しく思えて仕方ない。時折僕にはちょっと、眩しすぎるけれど。いつか焼かれて溶けて、落ちていくとしても、視線を合わせずにはいられなかった。

    「ね、彼女。暇なら僕と、出かけない?」

    神話みたいに愚かだろ。愚かに、なっていたみたいだ。

    「え、あ」
    「大学の隣の坂あるだろ? 短い方の。その横道入ったところにある喫茶店がモーニングやってて、同じゼミのやつと一緒に行く予定だったんだ。ほら、待ってたって言ったじゃないか。でもそいつ、寝坊しやがってさあ。1人で行くのもあれだろ? 腹は減ったしこれからどうしようかって、とりあえずこんなところでぼうっとしていたんだよ」

    でまかせがつるつる口から出ていくほど、気分が落ち着いていった。落ち込んだとも言える。まあ、今はどうでも良いことか。詐欺の最中だし。

    モーニング。こんなところ。空腹。少しずつ言葉を積み上げて、僕のことを熱中症だと勘違いした善良な彼女が、この誘いを断りにくくする。ほら見て。このまま朝ご飯も食べずに外にいたら、ビリーはもっと体調を崩すかもって顔になった。とどめとして上目遣いで微笑めば、リツカは気圧されるみたいに小さく頷いた。あーあ、こんなに優しくって大丈夫かな。僕みたいな、悪いやつに騙されちゃうぜ。

    「ま、まあ、暇だし。うん。涼しいところの方が良いし、うん! 行こう!」
    「ありがとう。そうだ、こっちが無理に誘ったんだから奢るよ」
    「いやそれは悪いよ、流石に」
    「そう? じゃあ、モーニングの後にパンケーキに付き合ってくれないかい。美味しいらしいけど、多分甘くて食べきれないから」
    「ビリー、甘いの好きなくせに。でもまあ、一緒に食べたいって言うなら良いよ。付き合ってあげましょう」

    そうして僕らは、連れ立って喫煙所を出ていく。真夏の構内にはやっぱり人影はまばらで、セミすら熱にやられたのかどうにも静かだった。暑くて、明るくて、少し目眩がする。遠い記憶が、僕のものではない荒野と栄光と破滅が後手を引く。だから僕は大袈裟に後ろ足を蹴り上げた。勢いをつけて、リツカの隣に並ぶ。

    「うん。一緒が、良いな」


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    umeno0420

    DONE巌窟王の召喚時からエデが見えているカルデアのぐだが、廃棄孔への螺旋階段でエデと「あんな良い人好きになっちゃうよね〜」と笑い合って失恋する話です。
    恋の話を聞かせてあげる[確認事項]
    ・英霊異聞ドラマCD発表時に書かれたパートと、奏章2以降に書かれたパートから成ります。
    ・あらゆる事実の誤認、捏造が含まれます。
    ・あなたの責任に基づきお読みください。



    ⭐️ ⭐️ ⭐️ ⭐️ ⭐️ ⭐️ ⭐️ 💫









    彼女の話をしよう。
    いつかパリで、善人に仇なすあらゆる悪を打ち滅ぼした復讐者。
    その人を愛でもって救った寵姫の話を。

    私の話もしよう。
    いつか輪廻を瓦解されたマンションで、哄笑と共に立ちはだかったアヴェンジャー。
    その人と世界を救った共犯者の話も。

    恋の話を聞かせてあげる。
    愛の話は、教えてあげない。


    #


    彼女の話をしよう。

    彼女。可憐にして玲瓏な令嬢。その髪は朝焼けと夕焼けの空を抱く。頰は白磁の器みたいで、唇は日差しを照り返す果物に似ている。まとうターバンは新雪、あるいは花びら。満月のようでいながら太陽のような金の装飾品が体のあちこちに降り注ぐ。それは彼女が動くたびに、しゃらんしゃらんと音を立てた。地上のあらゆる美しさを摘みあげて、とびきり上手に仕立てあげた女の子。
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