トリオン体なのでありえないのだが、ツー……と冷や汗が背中に流れていく感覚がする。
なぜ自分がここでこんな状況になっているのかが全くわからないこともだが、それよりもこの後輩たちがこんな笑顔なのに目が笑っていない上に、背景にゴゴゴゴ……と暗雲を背負った状態で仁王立ちして自分を囲んでいるのか……いろいろ怖い。
どうしたのー?といつものように軽く尋ねることも許されない空気に、迅はただただその沈黙と空気に耐えるようにじっと座っているしかなかった。
***
「みんなに見て欲しいものがあるんだ……」
いつも明るい佐鳥が今までにないほどに思い詰めた顔でそう言うので、綾辻󠄀と木虎が顔を見合わせた。あまりにも佐鳥らしくない思い詰めた様子だったので、声を掛けることがためらわれたのだ。二人は隣にいる時枝を見るが、この様子から時枝も佐鳥がどうして自分たちを呼び止めてきたのかは知らないようだ。
嵐山は本部長に呼ばれており不在で、防衛任務の時間も夕方からだった。なので各自、自主練なり用事を済ませようとしていたときに佐鳥が三人を呼び止めてきた。
……思えば今日は朝から佐鳥の様子がいつもと違ってソワソワしたり、落ち込んでいたりしてたな、と時枝は思いながら口を開く。
「どうしたの? なにかあったの?」
「うん……、これ……」
口数少なく佐鳥は自分のスマホを三人に差し出す。そのスマホをのぞき込むと、そこにはどこかのおしゃれなカフェでの様子が写されている。
「え……これ……」
「迅さん……だね」
どこかのおしゃれなカフェで笑っている私服の迅悠一がそこに写されていた。
いや、別に同じボーダーの先輩である迅がカフェでお茶をしているのは全然なにも問題はない。ああ迅さんだね、で終わる。しかし問題はそこではなかった。
「佐鳥先輩……これって」
木虎が眉をひそめつつ佐鳥を見た。
写真では迅の向かい側に誰かが座っている。その誰かが問題だった。
見覚えのない女性が迅の向かい側に座っているのだ。後ろ姿で顔はわからないが、長めの髪の毛を結い上げ綺麗めな洋服を……明らかに気合いの入った様子の迅と同年代くらいの、絶対高校生ではない女性の姿だった。
長めの髪の毛ということで、迅と同じ玉狛支部の小南や宇佐美では?と思いかけたが、さすがにあの二人ではないことはわかる。
相手は迅だ。もしかしたら噂の趣味と言われている暗躍の一環かもしれないと思ったが、迅は私服だし相手の女性のその感じから事前に用意したと思うような外見だ。……どうやってもデートですとしか言いようがない姿だった。
四人の間に沈黙が流れる。
別に迅が、別の部隊で違う支部の……同じボーダーの先輩である迅がどこで誰と会ってデートしていても自分たちには関係のないことだと言われたらそうなのだろうが……、関係ないわけではないのだ。少なくともこの四人の中では全然関係ないわけではない。
迅は、この写真の男は……自分たちの敬愛する隊長、嵐山准の恋人なのだ。
「浮気ですか」
「いや、決めつけるのはまだ早いよ」
「あのさ……昨日の午前中に、午後から急遽オフになったから嵐山さんに聞いちゃったんだよね、午後から迅さんに会うのかって……」
その時、佐鳥は何気ない話題のつもりで話を振ったのだ。後輩の自分たちから見ても嵐山と迅はお互い時間ができれば連絡を取り合って会う時間を作ろうとしていたから、今回もそうなのだろうと思っていた。
「そしたら嵐山さん……今日の午後は迅は予定があるって言ってたからなって。迅さんのことだからきっと昨日の午後は俺たちがオフになるって知ってたと思うんだよね! わかっていても嵐山さんより優先させる用事が……これだったんだよ!」
酷いよねー! って叫びながら佐鳥はもう泣きそうになっている。昨日、迅をこのカフェで見掛けてからずっと思い詰めていたのだろう、一気に感情が爆発したようだ。そんな佐鳥の隣にいた綾辻󠄀がなだめている。
嵐山と迅が付き合い始めたことを改めて二人から言われてはいないが、ずっと嵐山が片思い(明らかに両片思いだったのは周りからは一目瞭然だったのだが)していた頃から見守っていた。そして二人が両思いになって、幸せそうに笑う嵐山を見て本当に良かったと思っていたのだ。
迅に対してはすごい人だと思っているし、大切な先輩ではあるが……つかみどころがない上、胡散臭い部分もあるので……そしてなによりも自分たちの敬愛する隊長を掻っ攫っていったということで複雑な気持ちはあるが、嵐山が選んだ人なのだからと思い認めていた。……認めていたが、だからと言って嵐山を悲しませるのであれば話は別である。
この四人の基準はあくまでも敬愛する隊長が最優先なのだ。
「私、迅さんに聞いてきます!」
我慢できないという感じで部屋を飛び出そうとする木虎の腕を時枝がつかんで止める。
「木虎待って」
「時枝先輩! 止めないでください!」
「止めてないよ。待ってって言ったんだよ」
「え……」
「そうよ、藍ちゃん。藍ちゃんだけじゃなくて私たちも話は聞きたいわ」
「いててててて……綾辻󠄀先輩痛い!」
綾辻󠄀がにっこりと綺麗な笑顔でそう言う横で、綾辻󠄀になだめられて肩をつかまれていた佐鳥がつかまれていた手にググッと力が入って悲鳴をあげた。
すっ、と時枝が自分のスマホを取り出し木虎に見せて笑う。
「木虎は行くことないよ。元凶をここに呼ぼう」
そうして、元凶こと迅悠一が嵐山隊に呼び出されることになったのだった。
***
実際には五分くらいだったのかもしれないが、迅にしてみればもう一時間くらいこの針のむしろのような時間を過ごしている気持ちである。
なぜ自分は嵐山隊の四人に呼び出されて、こんな仁王立ちで囲まれているのか?
どうしてここに嵐山がいないのか……? どうした嵐山、どこに行ったんだ嵐山、おまえの隊の子たちめちゃくちゃ怖いんだけど、どうにかしてよ嵐山!
心の中で何度も隊長である嵐山に助けを求めるが、残念ながら三門のスーパーヒーロー嵐山准は迅を一向に助けにきてはくれない。(余談だが、このとき嵐山は本部長との用事を終わらせた後に根付に呼び止められ、メディア対策室にて根付と話をしながらお茶をしていた)
このまま針のむしろ状態でいるわけにもいかない。迅はなんとか口を開くことにした。
「あ、あのー……なんでおれは呼び出されたんでしょうか……」
「自分の胸に手を当てて聞いてみることですね」
ハッ、とゴミを見るような冷たい目で木虎はそう言い放つ。
あまりの冷たく鋭い言葉と視線の刃に迅の精神がまた一層削られた。中学生女子にここまで冷たくされて迅のライフはゴリゴリと削られていく。
「と、とっきー……」
多分この中で一番迅のライフを削ってこないだろうと思う時枝に、助けを求めるように迅は名前を呼んだ。ここで間違っても綾辻󠄀に助けを求めなかったのは、迅の本能が綾辻󠄀は木虎よりも鋭くエグい刃を向けてくることを知っていたからだろう。
そんな迅にため息をつきながら時枝はすっとタブレットを差し出した。
おずおずと迅はそのタブレットを受け取り見る。
そこには一枚の写真が表示されていた……迅の姿だった。
「へ……おれ? ……あ、ああ。あのときのか」
一瞬いつの写真かわからなかったが、すぐに思い出したようで迅はあのときのかと頷く。
その様子に嵐山隊の四人の温度がまたグッと下がった気がする。
認めた。……認めたということは浮気決定ということか?
「迅さん酷い! 嵐山さんが可哀想すぎる!」
「え? なに? ……え? 嵐山?」
「とぼけないでください! 最低です! 嵐山先輩がいながらこんな……不潔!」
「ええ……なに? なんなの!」
急に佐鳥と木虎に攻め立てられて、迅は訳がわからず目を白黒させている。その姿が……迅が浮気をとぼけているように見えてしまい、ますます火に油を注ぐ形になってしまう。
助けを求めるように時枝と綾辻󠄀を見るが、二人は止めるどころか冷たい目で迅を見ている。
「嵐山先輩が認めた人だから……胡散臭いと思いながらも仕方ないかって自分を納得させていたのに……」
「……え……胡散臭いって思ってたんだ……」
「嵐山先輩を裏切るなんて!」
「嵐山さんのどこが不満だっていうんですか!」
「ちょっ! なに裏切るって! そんなことしたことないけど!」
「証拠がそこにあるのにまだ認めないっていうんですか!」
「誤解! 誤解だって、待て待って! 話し合おう、話し合えばわかるって」
「完全に言っていることが浮気した人ですね」
「浮気って! なんでそうなるの!」
迅が誤解だと訴えるが、一向に四人は聞く耳を持ってはくれない。むしろ、木虎と佐鳥に攻め立てられ、時枝と綾辻󠄀も止めるどころか木虎と佐鳥の援護射撃まで始めており完全に迅にとってアウェイ中のアウェイ、孤立無援絶体絶命の状況だった。
「どうしたんだ? 廊下まで声が聞こえてるぞ」
そのとき、隊室のドアが開き嵐山が入ってくる。
「嵐山ああああ!」
「嵐山さん!」
現れた嵐山を見て迅と佐鳥が同時に叫んだ。
嵐山はその二人の剣幕に驚きつつ、迅を四人が囲んで詰め寄っている構図に一体なにがあったのかと首を傾げる。
迅が泣きそうな顔で嵐山に駆け寄ってその後ろに隠れた。
迅にとっては一筋の光明、唯一の救い、地獄に垂らされた蜘蛛の糸だ。
「あ! 嵐山さんの後ろに行くなんてずるい!」
「落ち着け、賢。一体どうしたんだ」
時枝と綾辻󠄀は顔を見合わせ、頷き合う。そして先ほどまで迅に見せていたタブレットを嵐山へ差し出した。
「これは……」
四人は息を飲んで嵐山の様子をうかがう。
本当は嵐山を悲しませることはしたくなかったのだが……こうなってしまったら、隠しておくよりも本当のことを知ってもらったほうがいいだろうと判断したのだ。
四人が迅が浮気しているからさっさと嵐山は別れる決断をしろというような目をしていることに気づき、迅は慌てて嵐山を見る。
「違うからな! これは誤解だからな!」
「……ああ、これ昨日のか?」
動揺することなく納得したように頷く嵐山に、その場の全員が動きを止めた。
「そ、そう! そうそうそうそう! 昨日のやつ!」
首が取れるんじゃないかという勢いで迅が頷き、良かったあああ……と胸をなでおろす。嵐山まで四人のように誤解されていたらどうしようと不安だったらしい。
そんな二人の様子に四人は顔を見合わせる。
「えっと……嵐山さん、それ……迅さんの浮気じゃ」
「浮気? ……え、だってこれ、橘高だろ」
「そうそう! 羽矢さん!」
「え? ……王子隊オペの?」
「ああ、その橘高だな」
王子隊オペレーターの橘高羽矢は嵐山や迅と同学年の女性で、嵐山たち同学年は仲が良いのはボーダーの中でも知られている。だが、同じオペレーターの綾辻󠄀を始め他の三人も橘高を知っているが、だいぶ写真とは印象が違っている気がする。
「あの日、羽矢さんすっごい気合い入れておしゃれしてきていたから……。おれとお茶した後にすぐ別れたよ」
「ああ、迅は橘高と会ったその後に俺と夕飯一緒に食べていたからな」
「え……浮気した後に嵐山さんと?」
「なんでそうなるの! 浮気していないって! しかも相手は羽矢さんだからないって!」
どこまでも疑ってくる木虎に迅は頭を抱える。
「アハハ、木虎大丈夫だ。ちゃんと橘高から迅を借りるって言われてるし迅が借りられたのだって」
「おっと嵐山」
迅が嵐山の言葉を慌てて止めた。
理由は橘高の趣味に関することなのだが、橘高本人がその趣味を隠しているので(同学年には大なり小なりバレているし、偏見を持つ人間はいないのでみんな知ってるが)うっかり言いかけた嵐山を迅が止める。
「あ、ああ。これは秘密のやつだな。すまないみんな。詳しくは橘高のプライバシーに関わることだから言えないが、とにかく迅が借りられた理由も俺は知ってるし納得しているから心配ないぞ」
そう言う嵐山の言葉に四人は、嵐山さんがそう言うなら……と納得した様子を見せる。(迅がおれが言っても信じなかったのに! と騒いでいたが、完全にスルーされていた)
「あの……勝手に誤解していろいろ騒いでしまってすいませんでした」
そう時枝が言って他の三人も頭を下げる。
「いや、みんな俺を心配してくれていたんだろう。ありがとう」
「嵐山さん…」
嵐山隊が互いに絆を深め合っている様子を、迅は蚊帳の外にいる気持ちで見ていることしかできなかった。
なんだか自分ばかりが貧乏くじを引いた気分ではあるが……まあ誤解も解けたし、嵐山がそれだけ後輩から好かれているのだと思えば、それはそれで良かったなと思うことにする。そう思わないと……自分のあの攻め立てられた時間が報われない……。
「迅、これからみんなでご飯食べにいくけどおまえも一緒に行かないか?」
「…………おれはこれから会議だよ」
……報われない、心の中でもう一度迅はつぶやいたのだった。
***
時は遡り一週間前。
迅と嵐山が本部の食堂で一緒に昼食を取っていると、向こうよりすごい勢いで橘高が駆け寄って来た。いつもは比較的落ち着いているのだが、迅や嵐山の同学年の友人たちは意外と橘高が(趣味の件に関すると)アクティブな動きを見せることを知ってたので、多少の勢いの良さに驚きはしない。
「迅くん! 嵐山くん!」
「やあ橘高」
「今日も元気そうだねー」
ばあん! と二人のテーブルに勢い良く手を付き、橘高は二人を見た。
「お願いがあるの……! この日、迅くんをお借りしたいのよ!」
そう言って見せられた日付が土曜日で、その日に橘高のハマっているキャラクターのグッズの発売日らしい。その中のいわゆるブラインドグッズにどうしても欲しいものがあるので迅の力を借りたいと、瞬きもせずに熱く懇願される。
「あー……この日は午後から嵐山がオフになる可能性が……」
まだ確定ではないが、その日の午後から嵐山がオフになる未来が視えたので予定を入れたくなかったのだが……やんわり断ろうと迅がしていると、橘高は迅から嵐山へターゲットを変えた。そして、熱く迅を借りたい、どうしても欲しいのだと訴える作戦に出る。
「いや、でも迅の予定が……」
「二人とも! 今日……私、誕生日なの!」
「へ、あ……それはおめでとう」
「ありがとう! で、プレゼントは迅くんを数時間お借りしたい、それがいいです!」
「ええー……羽矢さん、それを言われると断りにくいよ」
「断られないために言ってるのよ!」
こうして迅と嵐山からの橘高への誕生日プレゼントとして迅を数時間レンタルすることが決まってしまったのだった。
そして土曜の午後に迅と橘高はグッズが販売される店の入っているビルの前で待ち合わせをする。
そこに現れた橘高は、いつもと雰囲気が違う随分と気合の入ったスタイルだった。
「羽矢さん、随分と綺麗だね」
「どうもありがとう! これから推しをお迎えするのに気合いを入れずどこに入れるの!」
「……そういうもんなの?」
迅も私服だが、決して気合を入れてはいない。気合の入った橘高の隣にいて浮かないかなと思ったが、橘高も周りの……多分同じ目的であろう客もそんなのは全然気にしていないようだ。みんなもう頭の中は推しのキャラクターでいっぱいで迅など気にもしていないのだろう。
そして一時間後、迅は頬杖をついて悩みまくる橘高を眺めることになる。
橘高は推しのキャラクターグッズを手に入れたいので迅の力を借りたいと言っていた。だからてっきり迅の未来視の力を必要としているのだと思い、さっさと当ててやろうと思ったのだが……ブラインドのグッズを前にして橘高は予想外の行動を見せたのだ。
「じゃ、やりますか。えーと……あっちの」
「待って!」
視ようとした迅を橘高が止めた。
「やっぱり迅くんに見つけてもらうのはズルだと思うの! オタクとして正々堂々と推しを手に入れたい!」
「え……じゃあ、おれいらない?」
「でも! でもどうしても欲しいのよおおお!」
「え……えー? ……じゃあどうするの?」
橘高の欲望と理性、その葛藤の結果……迅に選んでもらうのではなく橘高自ら選び、それが本命かどうかを迅の様子を見て橘高が判断し決断するという方法になったらしい。
「よしこれ……。…………迅くんがポーカーフェイスすぎてわからないのよおお! もっと顔に出してよ!」
「えー、だって顔に出したらズルだからダメってさっき怒ったじゃん」
「程々! 程々に顔に出して!」
「難易度高いなー……もう……」
こんなやり取りがかれこれ一時間続いていたのだ。
その後、無事に目的を果たした橘高が満面の笑顔で「ありがとう迅くん! 奢るわ!」と近くのカフェに誘い、二人がお茶をしているところを佐鳥が目撃してしまったのである。
これが今回の事の真相だった。
***
会議が終わり、迅は誰もいない廊下を一人で歩いている。
今日は嵐山隊に囲まれ、浮気を疑われ、結局食事も一緒に行けないで散々だったなと思い返す。
まさか昨日の橘高と出掛けたのを浮気と疑われるとは夢にも思わなかった。
「迅!」
「え、嵐山?」
はあ、とため息をついたときに掛けられた声に迅は慌てて顔を上げる。
「え、おまえ帰ったんじゃないの?」
「いや、食事終わった後に隊室で仕事してた。おまえと一緒に帰ろうと思って」
ニコニコと笑いながら嵐山はそう言う。おれを待っていてくれたんだと思い、迅は内心感動する。
今日は散々だと思ったが、やっぱり真面目に生きていると最後には良いことあるようだ。
二人はそのまま本部の出口に向かい並んで歩き始める。
「今日は散々だったな」
「本当にね……まさか浮気を疑われるとは思ってなかったよ」
「悪かったな。みんな俺のこと心配してくれたんだ」
「わかってるよ」
どちらともなく、二人の手が重なりぎゅっと繋がる。
普段は人前では手を繋いだりはしないが、時間が遅く人気はないためお互い大丈夫だろうと判断した。
「昨日の羽矢さんもさ、推し? 好きなのを手に入れてすごく嬉しそうだったし、嵐山は隊のみんなに愛されてるし。いいことだよ。うん」
自分のことではないのに、嬉しそうにそう言う迅の横顔を眺めながら嵐山は微笑む。そのまま足を止めて迅と繋いでいる手を引っ張った。
引っ張られたまま、迅はバランスを崩して嵐山の方へ寄せられる。
そんな迅の耳元で嵐山は言った。
「おまえは俺に愛されてるから安心しろ」
やっぱり、真面目に生きていると最後には良いことがあるようだ。