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    chiyopipipi_2

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    手料理にまつわる研日。リアコモブがちょっと可哀想です。WEBオンリーの展示作品になります。今後他作品とまとめてpixivに収録予定。

    手料理こわい 大人気YouTuberのKODZUKENは料理がそれなりに上手いらしい。そんな、特定の界隈にのみよく知られた知識がSNSで爆発的に広まったのは、本人のとある投稿がバズったことによる波及効果からだった。
     なんの文章も添えられていない、ただの画像ツイート。その写真に映っている料理は、彩り豊かでボリュームのある、いかにも手作り然としたものだった。見ているうちに匂いまで届きそうなその見た目が、腹を空かせた仕事終わり直後の人々の目に止まったその瞬間。驚くべき速度で拡散され、見事何万といういいねを獲得してみせたのだ。
     それからしばらく、KODZUKENは定期的に料理の写真だけをぽつんと投稿するようになった。和食に始まりあまり知られていないような海外のものまで幅広く作られているそれは毎度多くの人の目に留まり、次第に配信のコメントにも料理動画を求める声が増えている。本人は雑談中も何故か徹底して料理のことには触れないため、未だ実現はされていないけれど。
     さて、そんなKODZUKENにはかなりの高頻度でコラボ配信をする友だちが存在する。名前を日向翔陽。バレーボール日本代表であり、非常に配信向きの明るくコミュニケーション能力の高い人間である。そんな彼が来てくれたら、あるいは。もしかするとそういう配信をしようという話になるかもしれない。ファンはわずかな期待を抱きながら開始時間を待っていた。
     配信が始まり、いつものように和やかな雰囲気で始まった雑談配信の最中、ふとコメント欄を目で追った日向は首を傾げながら隣に座る友だちに問いかけた。
    「研磨、なんか最近料理の動画とか出した?」
    「なんで?」
    「コメントで俺とコラボで料理配信してほしい〜って言ってる人が何人かいるから気になって」
     日向は普段あまりSNSを見ていない。それは暇さえあればバレーをしているというのもあるが、スマホを触っている間はたいてい誰かと個人的なやりとりをしているためだ。本当のコミュニケーション強者というやつである。
     つまり、日向は最近のKODZUKEN料理ムーブメントについて何も知らない。疑問に思うのも当然だった。頭の上にハテナを浮かべている日向にコメント欄はこぞって状況を説明しようとし、結果勢いよくたくさんの説明文が流れることとなった。
    「うわ、勢いすご!えっと……ああ!ツイッターに料理の写真載せてるってことか!研磨、料理うまいもんなー」
    「そうかな」
     心なしか恥ずかしそうにKODZUKENが目を逸らす。ファンに何を言われようとどこ吹く風の姿からは想像のつかない、日向登場時限定のレア状態だ。
    「ん?うん、俺は何回か研磨に料理作ってもらってる!」
     にこにこしながら明かされたそれにコメント欄が再びざわついた。これまでツイートされていた料理はどれも律儀に1人分しかなかったからだ。仲の良さからして考えてみれば当然だが、相手はKODZUKEN。基本的にソロでのびのびしている印象がどうも根強いのだ。
    「気になるから研磨のツイッター見てもいい?」
    「うーん………うん、いいよ」
    「やった!」
     一瞬考え込んだのは友人に見られるのが恥ずかしいからなのだろうか、と視聴者が温かな気持ちになった次の瞬間。
    「研磨、俺が作った料理の写真も載せてんだなー」
     空気が凍った。しかし2人はマイペースに会話を続ける。1つのスマホを身を寄せ合って見ている姿は非常に微笑ましいが、それはそれとして。
    「うーん…というか、全部そうだよ」
    「え!?自分のは!?」
    「自分が作った料理の写真載せたって仕方ないし載せてないよ」
     とうとうコメント欄の流れが一瞬止まり、濁流のごとく流れ出した。
    「俺ちゃんと翔陽に許可取ってたよね?」
    「そ、それはそうだけど…コメントしてくれてる人たちみんな知らなかったみたいだぞ!?」
    「そりゃあ何も言ってないし……」
     確かに、自分が作ったとは一度も言っていない。逆に言うと作ってもらったとも言っていないのである。
    「なんで1人分の写真だったか?それはね、翔陽が俺のためにって作ってくれたからだよ」
     珍しいドヤ顔たすかる、なんてコメントはなく、ただ驚きのコメントが流れ続ける生放送は正直異様だった。その日は早々に配信も終わったもののトレンドはこの話題で一色に染まっていた。
     今までKODZUKENが作ったものだと信じて疑っていなかった料理はすべて日本代表作で、自分たちはその自慢をされていただけだったという事実はほとんどのファンにとっては笑い事の範疇だったが一部の人達には大打撃を与えていた。いわゆる、リアコと呼ばれる人たちだ。
     KODZUKENのリアコはこれまで、恋人の気配がない一人ご飯の写真助かる!などと言って丁寧に保存をし、時には同じ料理を作っていたりしていたところ、それが本人が作ったものではなく、更には本人作のものは自分たちの知らないところで振る舞われていたのだ。そして日向のリアコもまた、本人の料理が知らないところで一人のために供されていたということがまったく予想していない角度からの発覚により敗北している。
     あまりにもな展開に当然界隈が少し荒れたわけだが、あれほどのインターネット巧者のKODZUKENがこの程度の炎上を読めないまま投稿していたかと言われると想像しづらいため、あえてこのような行動をしたのではと予測が立てられ次第に鎮火した。
     ちなみに仮説としては2つ。自分の視聴者の一部の行動が目に余ったため、ふるいにかけるために悪者に見られかねないような行動を取ったのではないかというのが1つめ。もう一つは、単純に日向の料理を自慢するついでにライバルを蹴落とそうと時限爆弾的な匂わせをしたのではないかという説だ。配信者としてのKODZUKENを考えると前者の可能性が高いが案外後者の方が理由なのではと言うファンが多いのは、ひとえにKODZUKENの日向に対する態度のせいだろう。
     余談だが、一連の騒動を目にした幼馴染が気になってKODZUKEN個人に伺ってみたところ、やはり日向に近づくライバルを跳ね除けるためだったそうだ。昔からその執着を目にしていた幼馴染はそれ自体には苦笑いで済ませたが、巻き込まれたお前のファンが可哀想だなと肩をすくめた。しかし当の本人はというと、だって俺別にそういう路線で売ってるわけじゃないし…とすげない態度だったそうだ。
     そしてこれ以降、KODZUKENのアカウントには料理の投稿に必ず作者の写真も添えられるようになった。もう隠す必要もないからと、投稿主が自慢のつもりで撮影しているのだろう。仲が良いようで何よりである。
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    chiyopipipi_2

    DONE犬飼先輩思ったより大好きになっちゃった辻ちゃんの話 二宮隊結成前後もろもろ捏造
    もんどうむよう 辻ちゃんだ、と声がして顔をあげた。予想通りの相手に小さく嘆息しながら、こんにちはと頭を下げる。ひらひら手を振り向かいに座った犬飼先輩は、にこりと笑って今日は何か知りたいことはある?と俺に聞いた。

    「隊にもう一人入れる、ですか」
    「ああ。この間の入隊式で入ってきた奴を一人誘った。ポジションは銃手、辻と二人で俺のアシストをしてもらう」
     元東隊の二宮匡貴。射手として抜群のセンスと才能を誇り、現在自分の隊を作るため眼鏡に適う人間を探している。アシストの腕を見込まれ誘われた攻撃手の俺と、射撃の精確さを見て勧誘された鳩原先輩。今のところはまだ3人だ。
     人手不足に喘ぐボーダーから、臨時のオペレーターは宛てがうから代わりにこのメンバーで防衛任務だけでもしてほしい、と頼まれ、正式に隊として発足していないにも関わらず部屋を与えられているという特異な状況に置かれている。俺と鳩原先輩の場数を考え、3人セットで任にあたったほうが良いと判断されたのだろう。鳩原先輩が優しくて助かった。もし他の女の人なら、防衛任務どころではなかったことが想像に難くない。
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