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    江 谷

    過去のあれこれを供養してます。

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    江 谷

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    百合感情のない接触。
    ◆お題は『bookworm』(http://cherrydrop.nobody.jp/)さまより、【10のキスの仕方】をお借りしました。

    2,前髪かきあげ(ユミクリ)「なあ。あんたそれ、前髪切った方がいいって」

     ばさばさとホコリを立てて適当な掃除をしていたユミルが、ふと動きを止めて、ほうきの柄に手とあごを乗せて言った。
     視線の先にはクリスタがいる。

    「………………」
    「いやいやいや、お前に言ってんだよ」
    「……私?」

     クリスタが机を拭くのをやめて振り向いた。長めの前髪が鼻筋から右目にかかっている。

    「なあ、それ邪魔じゃない? 髪の毛。前とかちゃんと見えてないだろ? つかさ、そんなんで戦えんの?」
    「……前はちゃんと見えてる。戦う時は括ってる。そもそも、あなたに口うるさく言われるような事じゃないでしょ」

     クリスタが雑巾を握りしめて言い返す。
     クリスタにしてはきつい口調だったが、ユミルはどこ吹く風だ。

    「自分で自分の視界狭くするって、どういう理屈だよ? それとも何か、卑屈な理由でもあるのか?」
    「………………」
    「マジ図星? はっ、ダッセぇ! まさか自分の顔隠してるとか?」
    「もう、うるっさい! 掃除しなよ!」

     クリスタが一方的に会話をやめると、ユミルはやる気のなさを全面に押し出しつつ掃除を再開した。

    「……でもさ、それ本当に少し切った方がいいよ。でなきゃ、色々困るだろ」

     ユミルがなおも食い下がるので、クリスタはついに大声を出した。

    「もうっ、別に困ったことないよ! なんなの一体!?」

     顔を上げると、すぐそこにユミルがいた。ぶつかりそうになって、クリスタはとっさに動きが止まる。

    「私が困るんだよ。こうするのにも……わざわざ髪、かきあげなきゃなんないからさ」

     ユミルはクリスタの前髪を梳くように指を入れて上へ流し、現れた額に唇を寄せた。

    「なっ、なんなの……? 本当なに今の……」

     理解できずに小刻みに震えるクリスタからは、背を向けたユミルの表情は見えなかった。
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