【第一夜】 こんな夢を見た。
目が覚めると、枕元に江雪兄様と宗三兄様がいた。僕は寝坊をしてしまったのかと、慌てて起きようとしたのだけれど、体が重くて腕さえ持ち上げることができない。そのうち、宗三兄様が小さな声で「お小夜」と僕を呼んだ。僕はいよいよ寝坊したことを叱られると思い、「はい、兄様。小夜はとうに起きております」と答えたかったのだけれど、どうしたわけか声すらも出すことができなかった。
そのうち、部屋が薄暗いことに気がついた。兄様たちも、そういえば肩のあたりまでしかよく見えない。橙色の光がその表情をいっそう深刻そうに見せている。この明かりは恐らく蝋燭だ。僕の近くに燭台があって、その灯が兄様たちを照らしているのだろう。
「お小夜」
もう一度、宗三兄様が僕を呼んだ。少しだけ憂いを帯びたきれいなお顔で僕を見下ろしながら、小さな声でさらにもう一度、僕の名前を呼んだ。
江雪兄様は片手を胸の前まで上げると、静かな声で念仏を唱え始めた。
僕は、ようやく自分の役目が終わっていたのだということを悟った。