Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    YUKI

    @anlie00

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 14

    YUKI

    ☆quiet follow

    Twitterに載せてたログ。

     何気なく覗いた、窓の外。吹き抜けになっている小さな中庭の片隅に、見慣れたコート姿を見かけた。
     日陰になった芝生の上で、丸くなってうたた寝をしている。執務室ではよく寝ているところを見かけるが、外で無防備に寝ているのは珍しい。エリジウムはすぐ近くにあった出入り口から中庭へと進路を変えると、忍び足で男に近づき、真上からその顔を覗き込んだ。

     隣まで来てもまるで起きる様子もなく、細い肩が呼吸に合わせてゆっくりと上下している。手足はぎゅっと縮こまり、眉間には薄く皺を寄せていた。丸くなった背中は、まるで戦闘中に己を守っている時のように固く凝っている。夢見があまり良くないのか、心なしか顔色も悪く思えて、エリジウムは眉を顰めるとポケットから端末を取り出し、表示された時計に目を移した。
     現在特に急ぎの用事はなく、次の予定までの時間には余裕がある。ここで揺さぶって起こすのは簡単だが、それでは夢は悪い夢のまま記憶に残るだろう。それは少し可哀想だ。
     起こさないようにそっと隣に腰を下ろすと、そのまま並ぶように横たわる。縮こまった腕で庇うように抱きこんでいる、黒くて丸い頭の下に、伸ばした自分の左腕を差し込んだ。
     そっと腕の上に頭を下ろす。安定が良くなったことに気がついたのか、ソーンズの眉間から皺が消えた。ぐり、とまるで猫のように、寝心地の良い場所を探すように身じろぐと、固く凝っていた手足が弛緩していく。表情が僅かに緩み、そして、再びゆっくりと寝息を零した。
    「…………ジ、ウ……、」
     小さく開いた口元からかすかに溢れた寝言に、声を出さずに笑う。どうやら、彼の夢の中にいる自分も、無事に彼に会えたようだ。
     寝汗で湿っていた髪を梳くと、同じように目を閉じる。吹き抜ける風は涼しく、頭上から降る葉擦れの音は優しく、耳に届く寝息は穏やかに眠気を誘う。

     これは良い夢が見られそうだな、と思う。きっと自分も、夢の中で、笑う彼に逢えるだろうから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works