何気なく覗いた、窓の外。吹き抜けになっている小さな中庭の片隅に、見慣れたコート姿を見かけた。
日陰になった芝生の上で、丸くなってうたた寝をしている。執務室ではよく寝ているところを見かけるが、外で無防備に寝ているのは珍しい。エリジウムはすぐ近くにあった出入り口から中庭へと進路を変えると、忍び足で男に近づき、真上からその顔を覗き込んだ。
隣まで来てもまるで起きる様子もなく、細い肩が呼吸に合わせてゆっくりと上下している。手足はぎゅっと縮こまり、眉間には薄く皺を寄せていた。丸くなった背中は、まるで戦闘中に己を守っている時のように固く凝っている。夢見があまり良くないのか、心なしか顔色も悪く思えて、エリジウムは眉を顰めるとポケットから端末を取り出し、表示された時計に目を移した。
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