君が呼ぶ名前いつもどおりにデルムリン島のポップの家にて
「一回ぐらい、ちゃんと父さんに返事すればよかったかなあ」
「なんでぇ急に」
「父さんたちがつけてくれた名前のこと。ディーノって呼ばれたとき、おれちゃんと返事した覚えがないんだ。もしかして返事はしてたかもしれないけど」
「仲良く楽しく会話してた時間なんて殆ど無かったしな。それにしてもなんかあったのか?紋章に違和感でもあるとか?」
「なんにもないから大丈夫だよ。さっきね、じいちゃんに父さんたちがつけてくれた『ディーノ』って名前のことを教えたら喜んでくれて。『大事にするんじゃぞ』って。今は大事に思っているんだけどさ。色々と思い出して」
「そういや親父さん、最期もおまえのことを『ダイ』って言ってたっけ」
「うん。ディーノって呼ばれた時におれのことだとわかんなくて、ちゃんと返事できなかったからだと思う……ダイって名前も良い名前だって言ってくれたけど」
「でも名前を呼んだときに応えてくれりゃ充分だとオレなら思うぜ。どんな名前で呼ぶことになってもあんま関係ねぇかな。呼んでも呼んでも返ってこないのが一番つれぇし」
「そうだねぇポップ」
「そうだろぉダイ」
「そこは本当に本当に賛成だよポップ」
「よし、じゃあオレがディーノって呼んでみてやろうか?」
「で、おまえは『ダイだろうとディーノだろうと、おまえはおまえだ』って言ってくれるんだろ」
「やめろよ、照れるじゃねぇか」
「照れるけど否定はしないんだね」
以上 やっぱりいつもどおりにデルムリン島のポップの家にて