遠慮のない姫と大魔道士-政略結婚回避ルートダイ捜索中。いつもの情報交換の場にて、レオナとポップの会話。
なお、本件は定例会後の私的な会話のために、公的な議事概要は存在せず。
「ところでポップ君に折り入って相談があります」
「あ、おれ、とっとと戻って明日の準備しなきゃ。明日はさぁ魔導図書館の跡地に潜ってさぁ」
「相談があります。お座りください」
「はひ」
「実はあたしに縁談が幾つか」
「帰っていいかな」
「その中に」
「帰りてぇ」
「相手がキミという話が」
「帰りてぇえ!」
「帰したいわよ、あたしだって!!」
「おれがどうしてそんな」
「ポップ君という人はアバンの使徒の一人なんですって」
「らしいな」
「それにキミが賢者だから。賢者の国の王配に相応しいと」
「おれは賢者じゃねぇ。大魔道士だ」
「その通り名は頑張ってゆっくり浸透させてね。ただ、回復と攻撃の両方の呪文を使えるってのは一般的には賢者と呼ばれるの」
「賢者なんて人種、それこそあんたの国にもっといるだろうが」
「あたしと年が近くて実力も名声もあってあの戦いでちゃんとした成果を残して各国の王族にコネがある賢者はキミくらいね」
「確かにおれぐらいだな!あ、おれって庶民なんすけど、身分違いだよな!?」
「この前、ヒュンケルを先生の養子にして身元保証したでしょ」
「継承権ぬきでな」
「そう。あれの狙いはあたしの国で彼を改めて裁きたい声が高まる前の避難的な意味合いだったけど」
「あ」
「そう、同じことをね。身分の低い人が高い人と結婚する前に、別の身分の高い人の養子になるのはよくある話ね」
「聞いたことがありますねおれも」
「あら話が早い」
「なぁ姫さん」
「なぁに大魔道士さん」
「姫さんがこの話をおれにしたってことは、もうこの話を潰したからだよな」
「もちろんよ」
「ダイがもう戻ってこないに違いねえから姫さんとおれをケッコンさせようなんて話をおれが聞いたらブチギレて話をあげてきた高官だか貴族だかを燃やしかねないからある程度の期間も置いているよな」
「一部だけ正解ね、キミが燃やしかねないって部分が。ダイ君が戻ってこないじゃなくて、戻ってくる可能性があるからそういう話があがるのよ」
「なんで」
「彼が竜の騎士の末裔で人間じゃないって話がね、高官の間でなんとなく広まっていて、だから」
「なるほど、なるほど、そういうことか!人間じゃないあいつを王家にいれるぐらいなら庶民のおれのがいいってか!そしてダイ捜索に疲れたおれなら姫さんとの結婚話に流されるかもしれねぇって?よし、わかった。その話をだしたのは誰だ教えやがれ」
「燃やしに行こうとしないの!あたしだって本当は燃やしてほしいけど、それに燃やすなら証拠が残らないようにしてほしいけど、今のキミって後先考えずに突っ込みそうな顔をしてるわよ」
「……」
「はい、落ち着いてね」
「で、時間を置いてその話をおれに聞かせた意図は?」
「知っておいてほしかったから。キミはきっと、ダイ君があたしと一緒に過ごしたいと言えばそうするように力を尽くすでしょうし、それを希望しないならそれが叶うように力を尽くすでしょう」
「当たり前だろ」
「でも、キミはキミがどう思われているかっていう視点が抜けがちだから。その視点が抜けたことでキミの小賢しい策が失敗してダイ君の希望が叶わないのは嫌でしょう?」
「うん、まぁおれの策が小賢しいのはそうだけど、改めて言われるとちっとばっかし腹が立つな」
「でね」
「スルーか」
「さっきのようにキミをパプニカに取り込もうってことを本気で考える輩もいるから、そういうことも踏まえて動いてねってこと」
「えらく信頼してくれてんだな」
「ダイ君が絡んだ時のキミはね」
「おりゃてっきりそういう話にかこつけておれに愛の告白を」
「……」
「ヒャドより冷えるなその視線!いやまぁ気合が入ったわ、今後も逐一情報をよろしく頼まぁ」
「はいはい此方こそよろしくね」
―END―