溺れる者が掴む藁「おねぇさん、これと同じのもう一杯!そ、このワイン。あ、メルルのは…まだ空いてないか」
ポップはかなりのハイペースでグラスを空けている。へろへろにこにこと上機嫌だ。この国では自分たちの年齢でも飲酒可能ということで、ポップは遠慮なく杯を重ねている。いつものようにこの酒場の上で部屋をとっているだろうから、多少は飲み潰れても問題は無いだろう。メルルもいつものようにポップとは別に部屋をとっている。
それに、ポップが飲み潰れてくれるほうがまだいい。ふわふわとした笑顔を浮かべつつ、ポップの目は少しも笑っておらず、目の下の隈は濃い。おそらくまたポップは眠れない夜が続いている。それらにメルルは気づかないふりをする。気づかないふりをしていることに気づかれているのも間違いないが。
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