まだ知らない愛を捧げてボクが生きてる間、ボクがボク自身の意思で勝手に死のうとしないこと。
未来機関が提示したボクを自由にする条件、監視と報告のため日向クンはボクのそばにいる。
ルールが適用された日からのボクの日常は、今までに感じたことのない不自由な生活へと変わっていった。
飯は食ったか?風呂入ったよな、何でも一々聞かれる上、寝る前の読書が見つかれば寝るように説教されて、一人きりを満喫することもままならない。"あの"日向クンに、あれこれ世話を焼かれるのは厄介この上ないんだ。さらに言えば"元予備学科"なんて、絶望的だよ!
ーーー初めてだったんだ。そんな風にあれこれ世話を焼かれるのも、気にかけてもらうことも、
ボクみたいな最低で、なんの取り柄もなくて、厄介な才能を持ってるやつなんか放っておけばいいんだ。そんな言葉だって、簡単に受け入れちゃうもんね。キミってやつはさ。
「どうせ俺たち同罪だろ」
なんて言って。なに当たり前のこと言ってんだって顔して。
左右田クン作の義手に慣れるため、慣れない左手でスプーンを掴む。掬ったシリアルを口に含まず、思い出したかのようにボクの文句は始まった。
「ねえ日向クン。キミほど図太い神経持ってる予備学科も珍しいもんだよね。大抵は本科を見た途端睨むか恨むかびびるかのどれかだよ?」
意に介さずといった様子で、キミはあっさりと僕の言葉を受け流す。
「並大抵じゃなくて悪かったな」
ほら、後ろめたさも、依然あった儚さも、自己嫌悪の毛もなく。プログラム内の、あの頃の日向クンなら、自分のことがわからないことも自分に「希望」がないことも恥じて、自分で自分を嫌っていた。
日向クン、僕らはキミの諦めずにまっすぐ進んで、困難に立ち向かって、理解できない奴を理解しようと足掻いたキミに、キミの希望に、ボクが、僕たちが何度救われたかキミは知らないままなんだろうね。まだ、教えてやらないよ。
わかっている、彼に惚れ込んでるのはボクの方だ。
だからボクは、何に苦しむこともなく、屈託なく笑ってくれる日向クンが毎日見れる、今の生活が嫌いじゃない。
だって、キミがこの部屋に来てからの毎日、今日も幸運だとか柄にもなく思うんだ。