龍と鳥 何度目かの生を受けた。パリパリと殻を割り空気に触れた。息を吐くと、ぴぃと鳴いた。今回は鳥か。と、まだ何も見えない目を凝らす。共に生まれた兄弟達はしきりにぴぃぴぃと鳴いて、餌を欲しがっていた。我も母から餌を与えられ、少しずつは大きくなっていったが、いささか他の兄弟より小さかったと思う。
ある日眠っていたところ、巣から蹴落とされた。弱肉強食の世界ではよくあることだ。皆生きることに必死なのである。我だって早く巣立って鍾離様を探しに行きたい思いはあった。しかしまだ我は飛べなかった。巣に帰れなくなった者に待っているのは『死』のみである。
見上げた巣には、相変わらずピィピィ鳴く兄弟の姿があった。彼等が悪い訳ではない。ならば、己の力で生きて行かなければならないと地を歩いた。
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