変わらない心を君に「ねぇ、ミスタ。ミスタが好きな季節っていつ?」
シュウはネイルポリッシュに淀む紫に目をやりながらミスタに話しかけた。
「え、季節?」
ミスタは昨年を頭に浮かべる。夏は死ぬほど暑かった。なんてったって40℃を超える気温を観測したのだ。あんな夏はもう勘弁してほしい。冬は?ミスタは寒いのが苦手だった。マイナスまでは行かないものの朝ベットから出るには酷な気温。好きとは思えない。
「んーーーーーーー…」
ミスタは悩んでいた。秋か春か。どちらも活動するには丁度よい気温だ。目立つイベントも特にない。もうどっちも同じなのでは???と思考を巡らす中ふと終着点が見えた。
「オレ春が好き、かも。」
「春?どうして?」
シュウは既に左手の爪を鮮やかに彩らせ右手に取り掛かろうとしていた。
「春はシュウと付き合い始めた時の季節だから」
シュウがイギリスに来てくれて1週間ほどともに過ごしたあの最後の日。オレはシュウの色が咲き乱れる花畑の中で一つの約束とともに気持ちを伝えた。驚きながらも頬を緩め頷いてくれたシュウの顔を今でも鮮明に覚えている。
「んへへ」
「…なんで笑うの」
「僕、愛されてるなって」
目を軽く伏せながら顔をほんのり赤く染めて呟くシュウはまるで桜のようにきれいで
オレは思わずシュウに抱きついた。
「シュウ〜〜〜〜」
「ちょ、ちょっとミスタ!!」
シュウはまだ乾き切ってない両手を横に広げてミスタを受け止める。ミスタはシュウの胸に額を擦り付ける。ふたりには笑顔が咲いていた。
「ねぇ、ミスタ。春になったらまたあの花畑を見に行かない?」
今までもこれからも変わらない心をくれる約束をしたミスタ。次は僕があげる番だ。
ブルーベルの森の中でね。