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    nayutanl

    @nayutanl

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    nayutanl

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    本日の新作ですが、もうひとつ書きあがらないので途中までですが置いていきます……!
    夜のうちに最後まで書けるはずなので……どうかまた見に来てください……すみません

    追記>
    できました!(※現在4時52分)
    夜のうちにとか書きましたが朝になってしまい…すみません…
    なんか、ふたりに朝と夜の間の時間を過ごしてほしかった…!歯止めがきかない夜もあってほしい…!色々考えながら書きました。カイアサ尊い。

    ##中央主従

    まだふたりの夜が離れないから このところ、まだ暗いうちに目が覚めたり、寝つきが悪くやっと眠れそうな気配がしてきたころには空が白んできているといったことがある。そういった日は、報告を受けているときや会議の最中、果ては食事中に意識を落としそうになったと、アーサーは久しぶりに過ごす魔法舎で賢者にこぼした。
     昼食後、腹がくちくなって丁度眠くなる時間、たった二人の静かな談話室で揃ってうとうとしだしたときのことである。
    「もしかしたら、睡眠の質がよくないのかもしれないですね」
    「睡眠の質、ですか」
     ソファに沈みそうだった賢者とアーサーは、それぞれ話す体勢、聞く体勢をとり座り直した。声を出したことによって少しばかり目が覚めたような気はするが、瞼はやや重いままだ。抗いながら、二人は互いに向き直る。
    「はい。私が住んでた国では何というか、労働と休息のバランスをとるのがすごく難しくて」
     賢者曰く、夜遅くまで働き、朝は早く起きて時間をかけて仕事に出掛ける民も少なくはなく、その中で重要視されていたのが『睡眠の質』というものらしい。
     仕事の時間や移動の時間を減らすことがほぼ不可能で、眠る時間を増やすという根本的な解決は困難だが、それゆえ人々は限られた時間で効率の良い休息を得るために苦心しているのだそうだ。
     世界が違えば、民の暮らしや悩みはもちろん違う。ずいぶんと過酷な環境に生きていたのだなと思いながら、アーサーは賢者の話に耳を傾ける。
    「あっ、でも目覚めはどうですか? 体が重いとかだるいとか、起き上がれないとかそういったことはありますか?」
    「それはあまり。特に魔法舎に泊まった日は気が休まるからか、安らかです」
    「お城ではたまに……?」
    「……そうですね、たまに」
     どうしても起き上がりたくない朝もあるし、気の持ちようなのか城と魔法舎では目覚めが違う気がする―とは賢者の手前言えず曖昧に濁したが、賢者も賢者であまり気に留めなかったらしく、ただ「なるほど」と頷いて返すだけだった。
    「じゃあ、疲れが溜まり始めてるのかもしれないです。一回思いきって休んで、回復にあてるのもいいんじゃないでしょうか……!」
    「ありがとうございます、賢者様。実は今日から三日、魔法舎で過ごせるよう予定を調整しておいたのです」
    「よかった! 最近本当に忙しそうでしたし、ゆっくり過ごしてくださいね!」
    「はい。お気遣いありがとうございます」
     二人は互いに喜色を表情に浮かべた。三日間というと短いようだが、連続して魔法舎にいられる日を作るのは難しい。今回は大分無理を押し通したのでアーサーは後のことが心配だったが、迎えてくれたみんなが喜んでくれたことや、賢者が寄せてくれる厚意には救われるような気持ちだった。
     
     
     ◆◇◆
     
     
     睡眠の質について、心当たりがないわけではなかった。あの場で言い出すべきことではなかったので黙っていただけで、てきめんな効果を発揮する方法を本当はよく知っている。
     ただ、そう容易く頼ることはできないのが難点だった。
     
     昼間は「片付けるから入っては駄目だ」と追い返された部屋は、やや隙が見えるものの一見片付いている。別に散らかっていようがまったく構わないのだが、カインはこの点に関しては頑なで譲らない。
    「……」
     カインが勧めてくれた本を彼の部屋で読んでいる最中、アーサーはいつ切り出そうか様子を窺っていた。カインはというと、最初は片付けの続きをしていたり良さそうな本を見繕ってくれていたが、いまは彼も別の本を読んでいる。
     時々ページの音が少し大きく聞こえる以外は、静寂。
     だから言い出しにくいのだ。いつ声をかけてもいいはずなのに、言葉が喉の奥に引っ掛かって出てこないようなもどかしさを抱えたまま紙の上の文字を追っているが、そのせいで内容もいまひとつ頭に入ってこない。
     魔法舎に滞在できるのも最初は三日もあると思っていたが、時間が経ってくると三日しかいられないのに―という焦りをうっすらと感じながらアーサーはふと顔を上げる。すると、物書き机で本を読んでいたはずのカインと目が合った。
     ふと見た拍子に目が合うということは、カインはそれよりも前からこちらを見ていたということである。彼は用事があれば話しかけてくる方だから、もしかしたら本を読んでいる最中だからと遠慮していたのかもしれないと思い、アーサーは栞を挟んで本を閉じる。すると、カインも読んでいた本を閉じて机の上に置き立ち上がった。
    「そろそろ遅くなってきたが、大丈夫か?」
     時間のことを気にしてくれていたらしい。言われて時計を見てみれば、寝支度を始める時間を少し過ぎたところだった。城ではやっと一人になれるころだが、今夜はまだ戻る心算はない。カインの問いをもってアーサーは心を決めた。
     久しぶりなので緊張も焦りもあるが、何となく断られない自信もある。不思議な気分だった。
    「……大丈夫だ。でも、今夜はおまえの隣で眠りたい」
    「構わないが、狭いぞ」
    「知っている」
    「暑いだろうし」
    「あたたかい方がすんなり眠れる」
     すべて知っていて言っているのだ。ふたりで寝ることなど想定されていないであろう大きさのベッドで身を寄せあい眠る幸福と安堵は、どんな上等な寝具でさえ与えてはくれない。
     両親やオズからもらったものとも異なる。あたたかくてやわらかいのは共通しているが、それだけではないのをカインは教えてくれた。
    「おまえは嫌か?」
    「嫌じゃない! 嫌なわけないし構わないんだが……賢者様から聞いた。睡眠の質が良くないかもしれないんだって? 久しぶりに魔法舎に来られたんだから、ゆっくり過ごした方がいいんじゃないかと思ってさ」
    「ああ……そのことか。確かに、それはそうかもしれないが、ゆっくり過ごすのがおまえの傍では、いけないだろうか……」
     断られない自信はあったし実際に断られたわけではないが、なにぶん久しぶりなので切り返し方がぎこちなくなってしまう。このままだと、命令でもなければ頼みというのも少し違う、願いというほど仰々しくはない、便宜上要望をどこに着地させてやればいいか分からなくなりそうだ。
     アーサーは、読みかけの本を片手に抱いたままソファから立ちカインを見つめた。視線が緩く絡めば、ふたりはどちらからともなく歩み寄り距離をそっと詰めていった。
    「すまない。困らせたな」
    「いや。こんな風に言ってもらえるなんて、俺は幸せだよ」
    「ありがとう、カイン」
     カインはアーサーの手から本を預かり、自分が読んでいた本とあわせて本棚に戻した。
     一日は短くて、夜はそのうちの更にわずかな時間で、そのうえふたりで過ごすことができる時間は決して充分とは言えない。だから、自由を許されているときくらいは可能な限りそばにいたい。この際、睡眠の質の良し悪しは関係なくふたりで眠りたいのだ。
    「……今日は、寝る以上のことはしないからな」
    「分かった」
     残念だが―とは言わず、アーサーは頷く。これはカインの優しさであり、彼の中の決めごとなのだろうが、あくまで今日は、である。明日のことは分からないし、期待が一切ないとはいえないので、いまはおとなしく納得してみせることにしたのだった。



     
     
     
     ◆◇◆
     
     
     好きなのは、寝入り端と自分の方が早く目覚めたときだ。落ちかけているか浮上しかけているかの違いこそあれ、どちらも意識が曖昧な中を漂う心地よさがある。
     それが、彼の隣なら殊更だ。
     眠る前に、息を詰めるほど近くで囁かれた言葉の余韻がまだ残っているような気のする幸福を、アーサーはやんわりと噛み締めながら傍らに眠るカインの寝顔を見つめる。凛々しいその顔も瞼を下ろせば実年齢よりもあどけなく見えるというのを知ったその日から、心の中で宝物のようにしていた。
     
     明け方は、夜とも朝とも違う暗さと明るさを部屋に湛える。眠れないまま夜が明けていくのをみるのは堪えるが、眠るときは真っ暗だった部屋が目覚めるとうっすら白んだように明るいのは好きだ。目を凝らさなくたって、相手の姿が見えるから。
     アーサーは、傍らに見えたカインの手にそっと自分の手を重ねた。何度見ても触れても自分のそれとの違いを意識してしまう。大きさも形も違う、肌の色も手触りも違う、知っていることだとしても―。
    「そろそろいいか?」
     思うさま手を撫でたり握ったりしていると、急に掠れたカインの声がした。顔をあげれば、眠っていたはずの彼が少し眠たそうにしながら笑みを浮かべている。
    「すまない! 眠っているのをいいことに、こんなことを……」
    「構わないさ。俺もきっと同じようなことをする」
    「そうか?」
    「うん。手を握るし顔や頭を撫でるし……」
     アーサーが慌てて手を離したが、カインはその手を握り返して引き寄せると「あっ」と驚いたアーサーの声を唇でやわらかく封じた。
    「キスもする」
    「……した後でそんなことを言うんだな」
    「一緒に寝る以上のことはしないって言ったのにな。やっぱり歯止めがきかなかった」
    「そんなことはないよ。このとおり何事もない」
     本当に歯止めがきかなかったのなら、ただでは済まないことも知っている。アーサーはひっそりと笑ってカインと握りあったままの手に指を絡めた。あの熱は恋しいけれど、こうして過ごすことも好きなのだ。だんだんと明るくなって朝がふたりを呼ぶまでは、この部屋のなかはふたりだけの世界だと思わせてくれる。ただのアーサーとカインでいられる、そんな気がしていた。
    「キスくらいじゃ何事もないか……」
    「あっ、あれに比べればだ!」
    「分かってる。すまない、少しからかいたかっただけだ」
     ふたりだけのふたりでいられるこの時間と、誰にも言えない幸福を惜しむようにふたりは目配せしあい、もう一度今度は浸るようにキスを交わした。
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    nayutanl

    DONE月花Webオンリー展示
    年長者と強絆のゆるめの話です。
    アーサーの疑問から始まる四人のあれやこれやです。アーサーが外見年齢12~13歳くらいのイメージ。自分が絵で見たい話を書いた形かも。
    公式にない設定が一部ありますが、雰囲気でふんわり読んでください。書いた本人も雰囲気で押し切りました。
    9/9追記:追録書きました(https://poipiku.com/3138344/7470500.html)
    和やかな城 ある日の桜雲街、竜の住まう城の一室で青い目をした天狗の子どもが尋ねた。
     
    「スノウ様、ホワイト様。おふたりは大人なのにどうしてこのようなお姿なのですか?」
     
     この城でそのようなことを尋ねるのはこの子―アーサーだけであろう。スノウとホワイトは一度顔を見合わせてからふたりしてにっこり笑った。
     もう随分長く生きている彼らはこの城の主である。今でこそオズに譲るが強い力をもち、気が遠くなるほど昔からずっと竜族の頂点に君臨している。ここ近年は「早く隠居したい」が口癖で、どうにかオズかフィガロを後継者にしようとしているものの、ふたりにその意志はなく聞き流されてばかりだった。そんなものだから、このところはオズが助けて以来この城にホームステイしているアーサーが後継者になってくれたら……とオズに牽制をかけているが、本気ではないと思われているようである。とはいえ、アーサーが後継者に向いているという直感と竜の住まう城の主が天狗でよいかどうか、そしてアーサーの実家である天狗の一族の事情はそれぞれ別の問題なので、スノウもホワイトも食い下がったり押し付けようとしたりといったことはしない。ただ、隙さえあれば隠居したいと思っているだけで。
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    nayutanl

    DONE紫陽花見ながら話してるホワイトとフィガロの話
    ホワイトから見たスノウとフィガロのこととか、フィガロから見たホワイトのこととか
    ほんの少し生きた心地がしないけど、気のせいかと思うくらいのあったかさはある つもり
    あと、文末に話に関するちょっとしたことが書いてあります。
    ハイドランジアの幽霊師匠と植物園を散策―などといえば聞こえはいいが、実のところは連れ回しの刑である。フィガロは曇り空のもと美しく物憂げな色彩の花を咲かせるハイドランジアに目をやりながらこっそりとため息をついた。
    ホワイトがやってきて「ハイドランジアの花が見頃だから出掛けよう」と誘われたのだが、あまり良い予感がしなかったので一度は断ったのだ。断ったのだが、今回の誘いはこちらに選択権がないものだったらしい。有無を言わさず連れてこられてこのとおりである。

    「そなたら、また喧嘩したじゃろう」
    「喧嘩とはいえませんよ、あんなの」

    少し先をいっていたホワイトが戻ってきて、ごく自然に手を繋いできた。こんなことをしなくても今さら逃走なんてしないのにと思ったが、これは心配性なのではなくて物理的な束縛だ。都合の悪い話をするつもりなのであろうことは断った後の出方で何となく察していたが、切り出されるとやはり身構えてしまう。いいことでも悪いことでも、心に叩き込むようなやり方はホワイトの得意とするところなので、分かっていてもわずかに寒気がした。
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