七日間恋話一生に一度、最初で最後の恋をした。
こはくが新たな贄として神を祀る神殿に引き立てられたのは、儀式の数週間前のことだった。
この国の神は民を庇護する代わりに、常に新鮮な若い血を求める強力な荒神である。
よって、生贄は順繰りに領地の村々から選定される。
そうして此度はこはくの村の番が回ってきた、というわけだ。
両親や姉たちはこはくの選定を密かに嘆いたが、こはくは自身が選ばれたことが誇らしかった。
贄の選定を受けた一族は、その後の暮らしを一生国から保証される。
自分の命で家族全員の身代が贖えるなら、この身を捧げても惜しくはない。
そう割り切って、こはくは迎えの神官に連れられ故郷の村を後にした。
輿に乗せられ村から村を経由し、程なくして国の中心である王都へと辿り着くと、往来には贄としてのこはくを一目見ようと大勢の人間が集まっていた。これから神殿入りするこはくを盛大に讃え、歓声を上げる者もいる。
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