Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ryuhi_k

    @ryuhi_k

    (・ω・)

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 44

    ryuhi_k

    ☆quiet follow

    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    陸の前の話。怪我描写有り

    前話「星呑み小話3・前」→https://poipiku.com/315554/4904736.html
    後話「星呑み小話3・後」→https://poipiku.com/315554/5108676.html

    ##火星焼夷
    ##星呑み

    星呑み小話11神というものは生物――特に人間が「そうあれ」と望み、祈ることで名前と形を保っている。人の、身勝手でどうしようもない望みに沿うには、理解がなければ話にならない。戦の、野蛮な血塗れの神である丹星あかほしとて例外ではなく、それが出来ていたからこそ今の今まで消えずにいたのだ。存在も名前もこの国から消え失せた神は幾多もいる。消えずとも、神達は人間が繁栄するほどに力が目減りしていくのを感じていた。だから残った神は消え失せる前に表舞台から降りることとした。今も起きている神は丹星のみであろう。他は恐らく永遠に起きることはない。消えるか眠るか、淀んだ二択の末の酷い結末だ。
    何故前者を選ばなかったのか、丹星は夢のうちで何度も答えを探した。星がなければ今もその答えを見つけることが出来なかっただろう。
    まさか己に、まるで人のような穏やかな時が訪れるとは夢にも見なかったのだから。

    「本日は、お願いがありまして」

    ある日、朽ちた社の戸を叩いてきたあきらは恭しく頭を下げながらそう言った。
    誰を伴うでもなく、単身でやって来た晶に丹星は続きを促す。

    「お住まいを、動かしていただきたいのです」
    『……ふむ?』
    「此処から随分と離れてしまいますが……人里はお嫌いですか?」

    顔を上げた晶が微笑む。

    『盛大に祀ったところで、俺の力は戻らんぞ?』

    星を取り込んだことにより、丹星の力は全盛期並とまではいかないが戻っている。とは言っても、今や焼火やけひ以外には人であろうとなかろうと名前を呼べず聞き取れない曖昧な存在だ。
    更に丹星が司るのは戦と武具だけだ。一昔前までと違い大きな戦もない今、人里に居を構えて祀るものでもないだろう、と丹星は考えている。

    「戦神様がこれ以上力をつけられたら、この国なぞ直ぐに燃え尽きてしまいます。それはご勘弁を。……ですが、やはり折角起きていらっしゃるのですし。勿論、戦神様には焼火がいれば何も問題はないのは承知しております」
    『それでも、と。……お前のことだ、何か見えているのだろうな』

    晶は答えない。
    祈りのためではなく、人のためではなく、己一人の何かのためだけに、晶は神を使おうとしていた。
    恐らく、他のまだ名前の残る神ならば怒りを覚えるのだろう。しかし、丹星にそんな感情は微塵もなかった。

    『お前が待っているものに多少興味はあるが……俺が問うことでもないな。お前には返しきれない恩がある。少なくとも……お前の呼び名が分かるまでは、何だってしよう』
    「……有難きお言葉です、戦神様」

    また晶は恭しく頭を下げ、そして去っていった。




    「――……晶は」

    丹星が寝所の襖を開けると、掠れた声がそう問いかけた。

    『もう帰った。……身体はどうだ?』
    「大丈夫だと、俺は何度も貴殿に訴えたが」

    のろのろと起き上がった焼火が不満げな表情を作る。その身体は――あまり他人に見せるものではない有様になっている。見た目だけの話ならば、大半が着物の下になるので問題はない。だが、今の焼火は歩行等にかなり問題があるような有様だ。通常の人間であれば、治るまでかなりの日数が要する。けれども、丹星の身体が文字通り「混ざっている」為、明日には殆ど繋がり、塞がり、消えてしまう。

    『別にあれがお前を見ても眉も動かさないのは俺も承知しているが……まあ俺以外が見る必要はないだろう?』
    「そういうものだろうか……」

    少しばかり考えるような首を傾けた焼火だったが、まだ頭がうまく働かなかったらしく諦めたように晶の要件を丹星に問うた。
    近い内に引っ越すことになる、恐らくお前には色々動いてもらわねばならない、と告げると目を見開く。

    「それは……また……」
    『ん?』
    「何と言うか……ううん……」

    焼火が丹星から目を逸らす。珍しい動作だ。

    「恐らく……近いのは、不安や恐怖だと、思う」
    『何故?』
    「貴殿が……俺の神では、無くなってしまうような」

    逸らされていた目が合う。
    揺らぐ瞳には、確かにそのような色が見えた。

    『その言葉、そっくり返すぞ』
    「……?」
    『俺とてそういう感情とは無縁ではないということだ。……戦場よりもずっと、お前が俺から離れていく方が恐ろしい。お前を人でいさせてやりたいのに、人に混じらせたくないと思ってしまう。決してお前の心の内を疑うわけではないんだが』

    神である筈の丹星が、晶の頼みに思ったことは只それだけであった。
    人間個人の身勝手に怒りもせず、只々――まるで人間のように、伴侶が変化するかもしれない可能性に怯えた。年月のせいでもなく、星のせいでもなく、ただ焼火だけが丹星の神性を揺らがせ、留めている。

    「……」
    『幻滅したか?』
    「そんなことは、全く」

    それよりも、と焼火は笑う。
    感情が分かりやすい焼火が、丹星は好きだった。

    「貴殿が同じ気持ちであることが、嬉しい」

    淀んだ二択の果ての、他の神から一笑に付すにも値しない状態であろうとも。
    見せかけの肉の醜悪な姿だが、まるで己が人になれたような、そんな心地がするのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🎃🎃❤💖💜
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
    3106

    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    手術的な描写有り・全体的に品はないのでご注意ください。
    墓石の上、二人でダンスを:2切り取ったものを丁寧に繋ぐ。沢山の素材から選りすぐった一番を、まるで最初からそうだったように。自分の身体が自分でなくなくなっていく感覚がするんだと、名前のない死体は言っていたらしい。誰にでもできる手法じゃなく、誰でも受け入れられる事態じゃない。でも俺はできるし、……コイツもまあ、適性があるんだろう。

    「あのさ」

    手を止めることなく、その先へ視線を向ける。俺の下で横たわって、首だけ持ち上げてこちらを見つめる緑の、淀んだ目。瞬きをする必要のないそれは、コイツの身体が生きていない証拠の一つだ。

    「視線がうるさいんだけど。目、閉じて」

    俺の言葉に、眉を顰めつつ目が閉じられる。そのまま首を降ろしたのを確認して、手元に集中する。鎖骨付近から肩にかけて切開し、筋組織を付け足し繋いでいく。欠損を補うわけではなく、ただ足すだけの生者にはやらない行為。やれたとしても……いや、やれる人間なんてこの国でも今は俺しかいない。その手元が気になるのは当然という思いもあるけれど、……普通だったら自分の身体を弄られているところなんて凝視するようなものじゃないだろうに。それ以外でも大体……いや全部コイツの視線はうるさいんだよな。
    2872