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    白丸.

    最近は小説が多いです。

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    白丸.

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    未完成

    「終わった…」
    最後の授業が終わり、俺は鞄に今日予習する教科書と課題を入れた。毎日、その日の授業が終わると、まっすぐ家に帰り、妹のお迎えをし、そして妹の分の飯を作って課題や自分のことをする。
    周りには友人がいていつも今日はどこに出かけるかの話をしたり、何して遊ぶかの話をする。高校生らしい。
    「これも青春か…」俺はそう考えるしか無かった。

    友人がいなかったから。
    勉強をずっとつづけていると孤立し、挙句の果てには誰からも声をかけられることはなくなった。

    情けなかった。

    でも俺には何にもなかった。妹もいたのだから。母は妹のグレ具合に飽きてしまい、放任してしまった。父はいつも仕事で留守。
    俺以外、妹の世話ができる人間がいない。

    黙々いつもの日常を振り返りため息を着いていると、勢いよくドアを開けて大きな声で「おーい、平山。お前、課題提出せずもう1ヶ月経ってんぞ」と、クラスメートに声をかける男性が現れた。

    梅乃先生だ。英語を教える先生で、人気じゃなくても結構学生からの信頼は厚かった。
    いつも学生と楽しそうに話し、自分の仕事にも責任をしっかり持ち、安定している先生だった。

    俺はそんな梅乃先生に対して、密かに羨望を抱いていた。

    あんな大人になりたい。と思い、苦手な英語も普通に勉強していた。
    最近だと、俺の実力?を認めてくれた…のか知らないが、笑顔で「お前はしっかり勉強しているな、偉いぞ」と褒めてもらえた。

    嗚呼、憧れの先生に褒められるなんて、なんて素晴らしい事なんだ。

    幸せだった。先生はいつも俺には優しい。

    まだ好きとは言えないが、先生と話してる時が楽しい。先生……

    そう考えて先生を凝視していると、梅乃先生は俺に気づき、何やら俺に向けてメッセージを言った。言ったというか、口を動かした。
    俺が首を傾げながら、先生の口元をずっと見てやっと分かった。

    「今日、空いてるか?」

    納得した。しかしよく分からない。どうせ今日は早く授業が終わったから帰っても妹の世話までまだ何時間も時間がある。
    俺が素直にうなづいていると、先生は手招きをした。
    鞄を持ち、急いで先生の元に行く。
    先生が振り向くと、キランと片目の義眼が煌めいた。

    元軍人とは思えない若さだなぁ……

    そう思いながら先生の後ろを着いて行く。
    誰もいない通路を通り、エレベーターを使う。

    「せ、先生…エレベーターは怪我をした学生以外使ったら駄…」そう言いかけると、梅乃先生は「確かに普段はな」と言って、俺に笑いかけた。

    なんか変わってるなこの人…

    降りてきたエレベーターに乗り、先生は4階を押した。

    4階……………
    理科室や視聴覚室がある階だ。なんでだろ

    先生は「それにしても壱村は真面目な生徒だな。先生、真面目な生徒は好きだよ」と言った。ドキッとしてしまった。

    俺じゃないはずだ。先生は真面目な生徒、とそんな濁すような言い方はしない。結構はっきり言うタイプだからだ。

    「そ、そうですか……?」と俺は、調子を整えつつ、いつもの声で答えた。
    先生は笑っていた。

    やっぱり変わってる。

    4階に着き、先生はエレベーターから出て、俺もまた再びついて行く。
    そしてある教室にたどり着いた。

    「学習室…今日は使えないんじゃありませんでしたっけ?」
    俺が先生に聞くと、先生は笑いながら持っていた鍵で教室のドアを開けた。

    冷たくも暑くもない殺風景な部屋…
    先生は「どう?寒くない」と聞いていた。
    俺は「全然寒くないです」と言うと、先生は「まあ壱村、そこに座れ」と言い、俺は言われた通りに指された席に着いた。
    隣に先生が来て、やっと「な、なんですか?先生…どうかされました?」と聞くことができた。

    先生は急に真面目な顔で「壱村、学校は楽しいか?」と聞いてきた。

    (あ、質問に質問で返された……)と感じながらも「あー……あはは…」と答えることしかできなかった。この人、嘘ついてもすぐ見抜くんだよな……

    先生は「まあ、いつもお前のこと見てたけど…あ、ストーカーじゃないよ。授業とかのチラ見程度だからね?まぁー、見てたんだけど、いつも元気がないように見えてさ…」と言ってきた。

    いやよく見てるなこの先生…怖いわ

    「あ、やっぱりそうですか…?笑」と俺は聞いた。頷きつつ、神妙な顔つきで再び、「やっぱりな〜、一定数いるんだよ。学校は別に嫌いでは無いけど、楽しくない人…」と話していた。
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